洞窟の奥の微睡み
「・・・・という事は、男爵はそこまで精霊術に特化しているわけではないのですね。」
「まぁな、こいつからはよく、器用貧乏だって言われるが、そうでは無くてな。俺の希望を突き詰めたら精霊の力が必要だっただけだ。」
「実際どのくらいの力があるのですか?」
「ゴミだ。」
「ひど!ガーラは極端だから気にすんな?・・・そうだな。精霊術としては、精霊力による治癒や治療がもう少しで出来そうな位だな・・・。なんだよ。」
「雑魚。」
「アルバート、友達は選べよ?」
「善処します。」
昨日は途中で男爵がいなくなったので、今日は色々と聞いてみたいと思う。
「器用貧乏って事は、剣士と精霊術師だけじゃないんですよね?」
「まぁな。教会への寄付と神への祈りを欠かさない俺は、見習い神官程度の神の奇跡が使える。」
「それもデックに劣る。もっと精進しろ。」
「他には?」
「あとは、遺跡探索で必要だったから、駆け出しメイジくらいの術は、がんばれば使える。」
「それこそ嫁の足元にも及ばんがな。」
「アルバート。小遣いやるから、一緒にこいつを黙らせないか?」
「ロクな装備を持ってきていないお前が、俺にかなうのか?」
「嫌な奴だ。」
喧嘩するほどに、とは言うが、ガーラさんは男爵の事を「友人」と呼んでいた。
根っこの所では仲がいいのだろう。
さて、昨日の場所にたどり着いた。・・・?昨日よりも臭くない。空気が澄んでいる様にも思える。
「それは、お前が風の精霊と木の精霊に強く働きかけたからだ。」
「?あまりよくわかりませんが。」
「それでいい、今は。」
「さぁ、やろうぜ!」
「よし、今日は俺たちも力を使う。だから、倒れるまで精神力を消耗する必要はないからな。」
「わかりました。」
俺とガーラさん、男爵は、岩で出来たテーブルを囲む様に座り、男爵がテーブルに石を置いた。魔晶石だ。
「この魔晶石は?何をするのですか?」
「精霊が好むんだ。・・・この魔晶石を精霊が取り巻き、変化させた結果が精霊石になる。今日は精霊に自由にしてもらおう。」
「よし、始めよう。」
ガーラさんが目を閉じると、体から緑色に光る湯気の様なものが出てきた。男爵からは白い光が・・・。
俺も目を閉じて、昨日の様に集中してみる。
まだ、変化はない。・・・難しいな。
「小僧、焦るな。自然体だ。」
「はい。」
俺は目をつむり、昨日の様に何も考えない事にした。
爽やかな風・・・緑の香り・・・・水のせせらぎ・・・・。
目を閉じて集中していると、有りもしないものの感触が感じられる・・・。
瞼を閉じてはいるが目の前が少し明るい・・・。
どうなっている?
うっすらと目を開けてみる。・・・そこには・・・。
洞窟の中とは思えない程の明るさであり、辺りには草が生えている。爽やかな風が頬を撫で、小さな小川が近くを流れる・・・。
『!なんだここ・・・。』
近くには男爵とガーラさんが目を閉じて座っている。
『いま、ここは、精霊界に繋がっている。あまり動くなよ?帰れなくなるぞ。』
『脅かすなガーラ。大丈夫だ。ただ、心を高ぶらせるような事はするなよ?精霊界が遠のくからな。』
『はぁ。』
俺たちの周りは、外の世界の様になっているが、光る玉の様な物が漂っている。
あれが精霊?・・・実態はあまり見えない。おぼろげな丸い物体が・・・・。
『これが水の精霊。こっちが木の精霊。おれの近くに多く集まるのがこの2種類だ。』
『俺は、光の精霊。火の精霊が多いかな。』
『小僧は・・・精神の精霊・・水の精霊・・・か。』
人によって好みが変わるのか。
俺は、精神の精霊と水の精霊が多いのか。
『今日は、だぞ?日によって、気分によっても変わる・・・覚えておけ。』
精霊さんって気ままなんですね。




