濃い一日の終わり
「・・・という事は、あの座っていた場所に宝珠があったと・・・。」
「あぁ、そうだ。誰も立ち入らない場所であったのだが、偶然迷い込めた者がおったのだろう。」
「それで、年に一度、精霊祭を行う事で精霊を鎮める事になったのか・・・。」
「・・・それだけではないがな。デュアルの奴が、ただ単に祭りが好きだという事もある。領主として仕事をしながら、冒険者としても仕事をする。その蓄えを祭りで放出するのだ。・・・馬鹿だろ。」
ガーラさんはいつの間にか運ばれてきたエールを飲んでいる。どおりで先程からよく話すわけだ。
「全く、精霊祭の為とはいえ、冒険では無茶ばかりする。フォローする俺の身にもなってほしいものだ。」
「へぇ、どんな無茶な事をするんですか?」
「あいつは、器用貧乏だからな。一通りなんでもできる。低ランクだがな。だから、という訳でもないが、知識は有るんだ。その知識を利用して、古代王国の遺産を漁りに遺跡へ入ったり、希少な植物を採取しに、森の民でも入らない密林の奥へと分け入ったり。先日は、海底の・・・。」
「おう!飲んでるな!!」
「領主様!お疲れ様です。」
「どうした?ガーラが酒を飲むなんて珍しい・・・。」
男爵が晩御飯を食べに食堂へやってきた。男爵は、ガーラさんと話すときも、俺たちと話すときも、同じように接してくれている。裏表がないというか、コミュニケーション力が高いというか。不思議な人だ。
「お前の悪口を言ってたんだ。」
「おまえ、酔うといつもそれだな。アルバート、今日はどぉだった?」
ニヤニヤと俺の魚をつまみながら聞いてくる。
「どうなんですかね。あまり分かんないです。」
「ガーラ、どうだったんだ?」
「・・・洞窟に草が生えた。」
「ほぉ。」
「あの場所に風が吹いて、湿度が変わった。」
ガーラさんは何を言っているのか?既に出来上がっている。まだエールの半分も飲んでないのに。
「やるじゃないか。やはり、お前は精霊に好かれているな。明日からも頼むぞ!」
明日は俺も行く!だそうだ。・・そういえば、俺の事を言っていた様だが、ガーラさんはどうだったんだろう。違う事をしていたのか?俺を見ていてくれたのか?
明日にでも、ガーラさんに聞いてみるか。
食堂で食事をする人たちが少なくなってきた。ビルットはいつの間にか消えていた。
今日の勤務は終わったのだろう。今頃、夜の町を楽しんでいるのだろうか。
俺は、脱力感がすごいので、今日はこのまま男爵家にご厄介になって、明日を迎えるとしよう。
男爵家の風呂は今日もでかい。普通に入っても30人くらいは入れそうだな。
風呂場ではサンタスが寝そべっている。
「おい、こんな所で寝ると、迷惑だぞ!」
「・・・。」
「おい、おいってば!お・・・。気絶している・・・。」
あとでギニンに頼んでおこう。
風呂の暖かさが、体に染みわたる。・・・気持ちいい・・・。
『お湯加減はいかが?』
「え!メイドさん?」
あれ、だれもいない。幻聴が聞こえるほど精神が付かれているのか。早く寝よう。
翌朝、昨日の脱力感が嘘の様に爽やかな目覚めだった。
なぜか、部屋には俺とギニンしかいない。
「なぁ、ギニン。皆はもう出たのか?」
「出たというか、捕まったというか、連れ去られたというか。そんな感じだ。」
「そうか、楽しそうだな。」
「本気か?」
「連れ去る側が。」
「ん、むぅ。楽しそうだ。」
ギニンは今日も町内の見回りだそうだ。昨日無難にこなした事で、今日は一人で巡回する様だ。
俺は、デュアル男爵とガーラさんが一緒についてきてくれる。普通だったら緊張で胃が痛くなるような立場の人たちだが、この人たちの人柄はそうはさせない。
今日は楽しくなりそうだ!
「あぁぁぁ!夢じゃなかった~!」
サンタスっぽい声が外から聞こえた。奴も楽しそうだな!




