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しあわせの国  作者: 狼眼


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アルバートは精霊祭を楽しめない

「なんだ、この小僧は・・・。」


俺は、朝食を済ませて朝風呂に入り、身だしなみを整えた後に、男爵に連れられて町の外に向かった。

あぁ、俺も精霊祭を楽しみたかったな。

男爵に案内されて、昨日俺たちが出てきた洞窟の入り口にて、少しの間雑談をしていた時に、背後から急に声を掛けられた。小僧って・・・。


「あぁ、ガーラ、今回の精霊祭への参加者だ。」

「被害者の間違いではないのか?」

「いやいや、新しい自分に出会う機会を与えられるんだ。いい事しかない。」

「まあ良い。あまりこ奴を不安にさせてもな・・。」

「・・・。もう、十分不安ですよ。」

「そうか!不安か!それはよかったな。」

「おい、デュアル、あまりからかうな。お前の悪い癖だぞ?」

「あ、あの、私はアルバートと申します。失礼ですが、あなたは・・・。」

「あぁ、これは失念していた。失礼。私はガーラ。この男爵の友人だ。」

「アルバート君。彼は、この辺りで最強の精霊使いなんだ。今回の精霊祭の主役でもある。」

「主役は精霊たちだ。そして最強とは少し違う。最も精霊との意思疎通が出来るのが私だ。」


「あ、町のうわさで聞きました。ガーラさんは大精霊を使役できるって・・。」

「使役か・・。有象無象にはそのように見えるのだろう。大精霊に力を借りているだけだ。」

「という事は・・。精霊術師とは、異国の言葉を変換する、翻訳家みたいな人の事を言うのでしょうか?」

「そうだ、どちらかと言えば、外交官の様なものか。」

「呑み込みが早いじゃないか。」


まぁ、適当な事を言っただけですが。・・・でも、そうか、精霊の力を借りる、使役するのとは違うんだな。そもそも精霊術って、術なのか?


「術、厳密にいえば術とはいいがたい。精神力を使う事に間違いはないが、基本、他力だからな。」

「あれ?俺、今喋ってました?」

「いや、君は精神の精霊に特に気に入られているから、分かりやすいな・・・。」


精霊術を身に着けるまでは、変な事を考えるのをやめよう・・・。そう硬く心に誓った。


「おい、小僧、こっちに来い。」


ガーラさんが洞窟の中に入っていった。



洞窟の中は薄暗いが、こちらの出口付近は天部からの光が届いている。


「こっちだ。」


ガーラさんが壁に手を当てると、何の抵抗もなく吸い込まれるように姿が消えた。


「え、幻影?」

「ここは、地の精霊が壁を見せているだけだ。暗い洞窟から少し明るくなると、人間は目に頼りすぎる傾向にある。だから些細な変化に気づけないのだ。」

「そういうもん・・・ですね。」


確かに、俺たちも明かりがある事で、出口へ向けて一直線に歩いていた事を思い出した。


壁をすり抜けてからの道は、光る苔のお陰で、普通に歩くことが出来た。

暫く歩くとガーラさんが突然足を止めた。


「そこに座るのだ。」


暗い部屋の様な場所に岩で出来た段差に腰を掛ける。


「今から、精霊との対話を行う。お前も集中し周囲の変化に気を配れ。」

「あれ、そういえば男爵は?」

「あいつはあれでも領主だ。それなりに忙しい。今回は俺だけだ。」


それからガーラさんは一言も話さなくなった。

俺もガーラさんをまねて、自然な形で座り、目を閉じ、ゆっくりと呼吸をする。



こんなに洞窟の奥なのに、微かな風の流れがある・・・。


洞窟の中って、意外と湿っているな・・。


この匂い。この洞窟に入ったばかりの時は、動物の糞の臭いしか感じなかったが、苔の香りもかすかに感じる・・・。


・・・おれ、何やってんだろ?




「静かに出来んのか・・・。」

「すみません。」

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