精霊祭
結局、精霊祭の前半は、ギニンは2日間の町内巡回。ビルットは食堂でウエイターのお仕事。あ、営業中はずっとね。そして、サンタスは。祭りの出店で腕相撲の催しを3人で回す係。腕相撲で勝つとお小遣いが貰える様で、毎年盛況らしい。がんばれサンタス。
そして俺、アルバートは、なぜか精霊術師になるための修行を行うことになった。
「では、男爵様、明日からよろしくお願いします。」
「あぁ、今日はいろいろあったから、風呂でも入ってゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、男爵家の風呂に入ることになった。
男爵の屋敷は、2階建てで高さは無いものの。かなりの広さがある。というか、色々なものがでかい!
風呂はもちろん、家への入り口、庭、倉庫の様な小屋、鶏舎、農場と言えるような家庭菜園・・・。
やっぱり、領主に成り上がるくらいの人って、常識が通じないんだろうな・・。
「おれ、こんな豪華な風呂、入ったのは初めてだ・・・。」
「おれ、乾季に入ってから、風呂入るの初めてだ・・・。」
「入れよ!」
ビルットがふざけて来るのでしっかりと突っ込んであげる。・・・ふざけているんだよな?
「俺様も将来、冒険で一発当てて、こんな風呂をつくるぞー!」
「さすがあにきー」
ギニンも気持ちがいいのか、いつものキレがない。
「あぁ~。明日からウエイターか・・・。大変そうだな~。」
「そうだな。何しろ飯代が男爵持ちだ。誰も金額を気にして食べないだろう・・・。お前が一番つらいんじゃないか?」
「かも、な。開始時間と終了時間、言われてないし・・。」
「俺はちゃんと聞いたぜ!得意の腕相撲!3人で回しプレイだ!楽勝!!」
「相手が買ったら、その分時間が伸びるんだろ?俺も挑戦しようかな・・・。」
「おらぁ!かかってこいや~!」
「アル、お前は精霊術の修行だろ?男爵夫人が意味ありげに見てたけど。大丈夫なのか?」
「さぁな。俺は精霊に好かれているらしいから、大丈夫だろ。ちょっと楽しみだな。」
明日を楽しみにする者、明日に絶望する者、様々な思いで風呂につかる。
「おい!ギニン!風呂あがったら夜の町を回ってみようぜ!出店も多く出てるんだろ?どうせ半分は出れないなら、今のうちに楽しんでおこうぜ!」
「いいですねアニキ!でも、金は持ってるんですか?」
「ある!銀3は有る!!」
「・・・大人しくしておいた方が良いんじゃないか?」
「遊ぶ!!」
「さすがアニキ!!」
どうやらサンタスとギニンは夜の町へ繰り出す様だ。変な奴に絡まれないように・・・って、この町で変なことをする勇気のある奴は居ないか・・・。
俺とビルットは、風呂から上がると、男爵家のメイドが用意してくれたワインを楽しむ。
この地域では、土地が瘦せている場所があり、ブドウの栽培もおこなわれている様だ。ワインのラベルに【DUAL】と書かれているので、男爵領で作られたワインなのだろう。
うん、結構うまい。色の濃い赤ワインだ。渋みは有るが、それを覆い隠すような深みと甘みがありながらも飲みやすい。
あっという間に2人でボトルを開け、ベッドに仰向けに寝転がる。
「ビルット、コーギが何事もなくてよかったな。」
「あぁ、家族も無事だったし。ほんとによかった。」
「お前らって、どういう仲なんだ?いままで突っ込んで聞けなかったけど・・・。」
「ん~、そうだな。多分、コーギが王国に来た時なんだろうな。田舎から出てきたばかりの様な女の子が、賑やかな商店街で突っ立っていたんだ。気になったんで声を掛けたら、「大事な事を忘れているような・・・」って感じだったから、教会に連れて行ったんだ。そしたら、「ここは、さっき居たところ・・。」って言われたから、教会から追い出されたのかな?って思って、軍の先輩に相談したんだ。そしたら、女性の部隊もあるから、そこで泊めてもらえ、って事になって、なんやかんやで今までちょくちょく話していたんだ。それ以外は特にないよ・・・。」
俺は、てっきりビルットはコーギの事がお気に入りだと思ったんだが・・・。
「なんだ、最初は恋人かとおもったのに・・・。」
「・・・そんなんじゃない。・・・なんか、コーギが軍に居ついたのは・・・俺のせいかなって・・・。あいつは、何も言わなかったけど・・・。俺のせいかなって。」
「・・・ビルット。お前が出会ったときには、既に記憶を消されていたんだろ?でなければ、そんな事になってなかっただろう。お前は・・・コーギを救ったんだよ。変な奴に捕まっていたら、身売りされていたかもしれないしな。お前が救ったんだよ。」
「・・だと・・・いいな。」
俺たちはそのまま眠ることにした。
明日は、精霊祭初日だ!




