しばしのご歓談を
「男爵ともなると、こんな若いお姉さんと結婚できるんですね~。」
ビルットが嫌味を込めて絡んでいる。
「誰が若いって?ああ見えても俺と、ウブ!!」
「ああ見えて、なんですって?次に口を塞ぐのは、この肉塊ではなくて、私のファイアボールになるわよ?」
「ググッ。まだ何も言ってないだろ?違うって。こう見えて、俺と3つしか変わらゴゲ!!」
「いい度胸ね。このままここでファイアボールを放って、全て無かった事にしましょうか?あぁ、そうするとこの子たちも無事では済まないわね~。短い人生だったわね・・・。」
「いや!!あの!あれだ!!・・・そうだ!今度、魔晶石でできたネックレスでも買おうか!」
「いらないわよ!高いし、自分で作った方が性能良いし!・・・で、死ぬ準備は整ったのね?」
「・・・・ゴメンナサイ。」
「ふん!最初からそうしなさいな。」
地面に頭をこすりつけて謝る男爵・・。この町の最強が、この瞬間に分かった気がする。
しかし、周りの客たちは、気にするような訳でもない為、恐らく、日常的に行われている行事の様なものなのだろう。
「それよりあんた、魔術に興味はない?教えてあげるわよ?」
「お、俺は、剣士なので、魔術はちょっと・・・。古代語も読めませんので。」
「あら、そぉ?ま、いいわ。魔術は便利なのに・・・。」
「俺の場合、幼馴染が魔術を使えたんですが、難しそうで断念しちゃったんですよね~。」
「へぇ、その子はどんな子なの?」
「花屋の娘なんですが、俺が見ただけでは初級の魔術だけしか使えないようでしたね。水魔法もこう、チョロチョロって感じで・・・。」
俺は魔法の知識が乏しいので、身振り手振りでハンナさんに伝えた。
「水が、そうやって出たのね?」
「ええ、こう構えて、こんな感じで・・・。」
「ふぅん。で、その子はどこにいるの?名前は?」
「今はグリフ王国の街中で花屋の手伝いをしているはずです。」
「・・・グリフ王国・・・厄介なところね・・・。」
「ハンナ、危険な事はするなよ?」
「分かってるわよ。」
男爵がハンナさんに一言伝えたところで魔術に関する話は終わった。
そのあとは、沢山の料理が運ばれてきて、盛大な食事会となった。
暫くすると、男爵が立ち上がり、カウンター付近に設けられた台の上に上り、みんなの注目を集めた。
「みんな、精霊祭の準備、お疲れ様。かなり忙しい事だったと思う。明日からは精霊祭だ。遊びたい奴は遊び、休みたい奴は休み、金儲けしたい奴は商売に精を出せ!・・あまりぼったくるなよ?」
軽い笑いを誘いながらも男爵の挨拶は続く。
「・・・そして今日、みんなの中で会ったことが有るかもしれないが、外からの客が来た!そして、その中には、長年行方不明だったシトロンの娘がいた!」
「おおぉぉ!シトロンの娘か!」
「死んでなかったんだな!!」
「めでてぇじゃねぇか!!」
「そうだな、めでたい!今日は、シトロンの娘を連れてきた者たちの歓迎会も兼ねている!宴はまだまだ始まったばかりだ!みんな盛大に飲め!食え!」
「「「おおぉぉぉ!!」」」
男爵の挨拶が終わると、色々な席の人たちが話しかけに来た。
「外から来たって事は、ゴーレムと戦ったのか?」
「すごいな~。」
「男爵にやられたんだって?ご愁傷様・・・。」
この町の人たちは、根っから明るいのだろう。みんな笑顔で楽しそうだ。
「いい町ですね。」
「だろ?」
「でしょ?」
男爵とハンナさん、男爵夫人がどや顔で答える。
「私もそう思うわ!」
「!コーギ!!」
いつの間にか、俺たちの席の後ろに、コーギと老夫婦が立っていた。




