楽しい食事
「ビルット、大丈夫か?肩貸そうか?」
「大丈夫、じゃないな。回復魔法をかけてもらったのに、まだあちこち痛い。」
「サンタスは?」
「血が出てないのが、不思議なくらいだ。」
「ギニン、お前は大丈夫・・・そうではないな。」
「思い出させないでくれ。」
俺と3人は、ゆっくりと食堂の扉をくぐった。店の中は、町の人が全員集まったかのような賑わいを見せており、そこかしこで笑い声が上がっている。
俺たちは開いているテーブルに座り、メニューを開く。来たときはメニューを開く暇さえも与えられなかったのに・・・。よっぽど暇だったんだな。
「そういえば、ここの飯の料金は、今日から精霊祭の間、男爵が負担してくれるようだな。」
「「そうか・・・。」」
「ならば!食い倒してやる!!」
「おやじ!肉だ!!酒だ!!」
3人の目がやばい。ここで復習をしようとでも言うかの様に注文を始める。
すぐにエールと干し肉が配られた。肉は時間がかかるのかな?
俺たちはとりあえずエールで乾杯し、一気に飲み干した。
「!」
「おっ!このエール、冷えてるな・・・。美味い。品質もいいのか?」
「もう一杯!お代わりだ!!」
予想外の美味い酒に3人の機嫌がよくなってきた。ま、食事は楽しくした方が体にもいいからな。
すぐに配られたエールで再度乾杯し、干し肉をかじる。
「あらあら、もう始めてるのね・・。ここ、良いかしら?」
「ハンナさん!来てたんですね。」
「さっきぶりね。」
「おい、アル!この女性、だれだ!」
「この人はハンナさんだ、そこの学院でちょっとお世話になって・・。」
「お前!!俺たちが死にかけてる時に!女と一緒にいたのか!?」
「いや、違うって、調べ物が・・・。」
「この野郎!!表に出ろ!!!」
サンタスが俺の胸ぐらを掴んで立ち上がる。ビルットも無言で立ち上がる・・・怖いって。
すると、隣の席のおっさんが急に血相を変えて割り込んできた。
「おいおい!やめろ!お前たちよそ者だな?この町でけんかを始めようだなんて、命知らずめ!」
「?なんだ!あんたにゃ関係ないだろ!!」
「そうだ!引っ込んでろ!」
サンタスもビルットも目が怖い。ギニン・・武器はしまえ。
「馬鹿言うな!この町で喧嘩をしたやつは、男爵に注意されるんだぞ?訓練所で・・・。」
おっさんの一言で、何かを察した俺たちは、ゆっくりと席に着いた。
明らかに俺以外の3人の顔色が悪い。
「分かってくれたか・・・。喧嘩をした本人だけでなく、止めなかった奴等も同罪だからな・・。」
気をつけろよ、と一言残しておっさん、いや、命の恩人は隣の席に戻っていった。
そんなやり取りをハンナさんは笑顔で見つめている。
「楽しそうでいいわね。」
「いま、死にかけたんですが・・・。」
「ふふ、楽しそうよ。いいわね。」
「だろ?こいつら楽しそうだろ?」
「あら、デュアル、来たのね。」
「遅くなったな。おい!酒だ!!」
男爵専属の様な給仕が酒と肉を提供する。俺たちの肉より、注文していない男爵の方が早いのか・・・。まぁ、そうなるよな~。
「よし、じゃ、改めて乾杯だ!」「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「いただきます!男爵!」
「おう、たっぷり食えよ!!」
俺たちの席で行われた乾杯に、食堂全体の客が反応し、全員での乾杯となった。男爵、人気者なんですね。
「で、ハンナさん、男爵とは親しそうですね。名前で呼ぶなんて・・・。」
「そりゃ、そうよ。だって。」
「夫婦だからね。」「夫婦だからな。」
「夫婦って、ハンナさんと男爵?ハンナさん、若すぎませんか?」
俺の言葉にパッと顔を輝かせるハンナさん。
「そう?そんなに若く見える?ん~。この子、私の弟子にしてあげようかしら!」
「よせよせ。お前の指導は常軌を逸しているんだ。ついていけたのはメグ位だろ?」
「「あんたもたいがいだがな!」」
男爵に突っ込みを入れる2人。もう、何かが吹っ切れたのだろう。
まぁ、似たもの夫婦って事だろうか・・・。




