晩飯に向かえ!
「・・・・・という訳で、その宝珠の力が無くなった影響が出始めたのよ。あたしを含め、実力のある人が集まって、一応事なきを得たのだけど、結局はその場しのぎだったわけね。」
「あの!そろそろ友人と待ち合わせの時間が・・・。」
「あら、あたしったら、もうこんな時間なのね。じゃ、今回はここまでね。続きは後でねぇ~。」
そう言うと、ハンナさんは小走りで扉へ向かっていった。
この国の人は、なんて話が好きなんだ。男爵にしろハンナさんにしろ、話し出したら止まらないじゃないか。これは、いくつか、話題を変えるキーワードを用意しておかなければいけないな・・・。
そう考えながら席を立つ。お尻と腰が痛い。どれだけ喋っていたのか・・・。
学院の外へ出ると、辺りはほんのり暗くなり、いたる所で篝火が焚かれはじめている。
訓練所のあいつらの事が少し心配なので、武器屋?に向かう事にした。
武器屋の入り口をくぐると、男爵の声が聞こえてくる。
「よ~し、そっちを持て、ゆっくりだ・・・。」
何かを動かしているのだろうか?何かの準備だろうか?
男爵に肉体労働をさせて俺が何もしないのももやもやするので、手伝いを買って出る事にした。
「お疲れ様です!何か手伝えること・・・・。何してるんですか・・・。」
「ちが!違うんだ!殺していない!!生きてる!!」
そこにはぶっ倒れて動かないサンタスとビルットがいて、辛うじて動けるギニンは自力で這ってこちらへ向かっている。鎧の騎士と男爵で二人を移動させようとしている所だった。
知らない人が見たら、死体を片付けるような、異様な雰囲気を醸し出している。
「まぁ、大体想像がつきますが・・・。」
おそらく、指導をしている内にヒートアップして来て、実践に入ったのだろう。鎧の騎士を召喚し、3対2の闘いになり、3人を足腰経たなくなるまで指導した。のだろう。
「鎧の騎士まで呼び出して・・・。恐ろしい。」
「いや、ほら、指導だから、ちゃんと手抜きしたから!」
あの洞窟内では、3人相手に男爵1人、圧倒的に男爵が有利だったにもかかわらず、今回は更に鎧の騎士も加わったわけだ。
「大丈夫!大丈夫!いま、神官も呼んだから、すぐ来るから!」
訳の分からない言い訳をする男爵に、ジト目を向けてしまう。どうしてこういう強い人に限って、無茶な事をするのだろうか?男爵にしろ、俺の師匠にしろ。多分途中で楽しくなってくるんだろうな。
俺に弟子が出来たら、優しく指導してやろう!
そう心に難く決意をするのであった。
「男爵、失礼します!・・・やはり、こういう事でしたか・・。」
神官服に身を包んだ小柄な男が入ってきた。
「いつものを頼む。」
「はい、かしこまりました。・・・偉大なる神の御手により、この者に癒しの奇跡を与えん。ヒール。」
神官の回復魔法のお陰で、3人は何とか立ち上がるまでに回復できた。
「お・・鬼・・。」
「・・・・悪魔・。」
「・・戦闘狂・・・。」
「・・・さんざんな言われ方だな。」
男爵の言葉に、3人はビクッとして固まる。よほどひどい訓練を受けたのだろう。
心中お察しいたします。
「さて、お前ら、回復したら腹が減ったろ?回復魔法は、新陳代謝を高める効果もあるから。腹も減るんだ。隣で飯を食うぞ!ほら、町のみんなが押しかけてくるから、早くしないと座る場所がなくなるぞ!」
サンタスたちは、自分が歩けることを確認しながら、ゆっくりと外へと歩き出した。ちょっと辛そうだけどね。
「男爵、何をされたんですか?鬼とか悪魔とか言われてましたが。」
「いや~、若いっていいな!!」
男爵はごまかしたつもりなのか、笑いながら外へと駆け出した。「急げよ~」だそうだ。




