歓迎会
「男爵・・・。この店は一体何なんです?」
「ん?普通の食堂だが?」
「半強制的に飯が運ばれてくるんですが。」
「そりゃそうだろ。今日はこの町の祭り、精霊祭の前夜祭で、お前たちの歓迎会だからな。」
「歓迎会?なぜですか?」
「町に旅人が訪れる。当たり前の事だろうに、なぜ歓迎会などになってしまうのですか?」
俺とビルットは男爵に疑問を投げつけた。サンタスとギニンは、歓迎会という言葉を聞いてから、一心不乱に食事をしている。無茶するなよ?
「まぁ、普通の町はそうだろうな。だが、この町は違う。俺たちは今、半鎖国状態になっているのだ。」
「鎖国?」
「ああ、基本的に外の街や国と交流を行わないという事だ。」
「何故そんな。・・メリットはあるのですか?」
「いや、デメリットが大きすぎる為だ。」
「デメリットですか?」
「あぁ、お前たちは知っているか?20年ほど前の事、小さな闘いがあった。とある王国の冒険者が森の民との間でトラブルを起こしたんだ。たしか、エリックという冒険者だった。」
エリック・・、どこかで聞いたような名前だが、どこにでもいる様な名前だ。
俺もビルットも、とりあえずエールで喉を潤しながら話を聞くことになった。何しろ、話をしている男爵自らが、肉をほおばりながら話続けているため、緊張感も何もあったものではない。
「で、その、エリックという冒険者は何をしたんですか?」
「それがな、知ってか知らずか、森の民が神のごとく崇めている宝珠と、秘法を盗み出したんだ。」
「あぁ、冒険者のタブーですね。争いの種をまきに行っているようなものだ。」
「そうだな、だが、それだけではない。その後、王国は変わってしまったんだ。秘法による国民の支配が始まったんだ・・・。」
「!呪いの事か。あれは森の民の物だったのか・・・。」
「やはり知っていたか。森の民は外界との積極的な交流を断ち、静かに暮らしていた。しかし、森に迷い込んだ者たちは丁寧にもてはやされて、国外の情報などを仕入れたり、物資の交換に役立てていた。そして、森を去るものには秘法を使い、森での記憶を消してから森を出てもらっていた。森の生活を守るためにな。」
「・・でも、闘いにはなってませんよね?森の民との闘いって聞いたことが無いですが・・。」
「確かに、直接的な戦いは行われていない。だが、知っているはずだ。魔獣の大攻勢・・・。あれが唯一で最大の森の民の抵抗なんだ。」
「魔獣の襲来は、森の民が起こしていたのか!」
「まぁ落ち着け。食え、飲め。」
男爵は食う手を止めずに話し続ける。器用な方だ。サンタスは既に酔いが回っているのか、周りの見知らぬおっさん連中と酒を酌み交わしている。ギニンはまじめに話を聞いているというのに。
「まぁ、話は少しややこしくなるから、何となく聞いてくれ。」
男爵の話によると、森の民の秘法は、頻繁に使うものではなく、瘴気を発生させる程の効果は無いらしい。王国はその秘法を宝珠で増幅し、国民全体に定期的な記憶操作を行っているらしいのだ。
その影響で多量の瘴気が発生し、その瘴気はスライムが吸収してしまう。その結果、スライムによる魔獣の生成が出来てしまう。らしい。
「でも、それなら大攻勢にはなりませんよね?あのペースで生成されても、大事にならないような気がしますが。」
「ほぅ、魔獣生成の瞬間を見たのか!珍し体験だったな!確かに、自然発生ではそうはならない。そこに森の民が介入しているのだ。スライムの瘴気を、意図的に開放し、傀儡の媒介としているのだ。」
「なぜ、そんな事を!」
「このまま放っておくと、近いうちに森が死滅するからだ・・。」




