鎧の正体
「あぶね!」
鎧の騎士の一振りが手首をかすめた。あと一歩踏み込んでいたら、手首から先がなくなっていただろう。
ビルットは握りが甘かったのか、剣を撃ち落とされ、コーギは剣圧によろめく。
「こいつ!出来る!!」
サンタスが叫ぶが、鎧の騎士は無言で剣を振るう。ロングソードにナイフでは相性が悪い。切り捨てられた棍棒の半分を拾い、騎士から距離をとる。
ビルットは攻撃の隙を見て、剣を拾おうとするが、かがんだ瞬間に騎士の拳で地面へ叩き伏せられる。
「ビルット!」
コーギが一瞬、意識をビルットに向けた。その隙にみぞおちに剣を握った拳がめり込み、そのままギニンに向けて殴り飛ばされる。
「あぶな!ぐべぇ」
ギニンがクッションとなり、岩への直撃は防げたが、二人はそのまま沈黙した。
「んの野郎!!」
サンタスが半分になった棍棒で殴り掛かるが、片手で軽くあしらわれてしまう。
「ギニン!おいギニン!!」
ギニンを呼ぶも、応答はない。
サンタスは棍棒の柄を鎧の騎士に向かって再度投げつけて、けん制するが、鎧の騎士は避ける事もなくサンタスに向けて歩み寄る。
サンタスはビルットが落とした剣を拾うために、鎧の騎士の背面に素早く滑り込んだ。
鎧の騎士の剣技は凄まじいが、足さばきはそこまででもない様で、サンタスに向けてゆっくりと向き直る。
剣を拾い上げたサンタスは、更に背後に回り込み、一撃を狙う。
「くらい、やがれ!!」
上段に大きく振りかぶって剣を叩きつけるが、鎧には傷一つついていない。
驚く間もなく、サンタスの頬に裏拳がめり込んだ。
綺麗に殴り飛ばされたサンタスは、地面を転がりながら気を失った・・・。
鎧騎士の圧倒的強さに、まさに手も足も出ない。残るは足を負傷している俺だけだ。
「くそ!来てみろ!串刺しにしてやる!!」
バスタードソードを構え、鎧の騎士に向けて構える。左足は力が入らないので、今回は玉砕覚悟だ。
「くらえ!」
体のひねりを最大限に活かして突きを放つ!鎧の騎士は避けようとしたが、俺の剣の方が僅かに早かった。金属がこすれる音がして、兜を後方に飛ばした。
踏ん張りがきかないまま、体ごと鎧騎士に突っ込むと、初めて鎧の騎士はよろめいた。
俺は受け身をとれないまま、鎧の騎士と絡まる様に地面へ倒れこんだ。
「な!」
俺は、鎧の騎士をを睨みつけたが、その目線の先には何もない。騎士の頭部がなくなっている。
倒せた!と、一瞬思ったが、鎧の中身も何もない。こいつも魔法生物なのだろうか・・?
剣を杖代わりにして立ち上がると、鎧に向き直る。
鎧は何事もなかった様に頭部を拾い上げ、あるべき場所に置きなおした。
「化け物め!!」
再度剣を構えようとしたが、鎧は今までにないスピードで接近し、俺の腹部へ拳をねじりこんんだ。
「ち、くしょ・・・。」
薄れゆく意識の中、通路の奥から更に何かが出てきた事に絶望を覚えた。
「なんだ、また侵入者か?」
「・・・。」
「ちょうどいい、奥へ運べ。」
「・・・。」
大柄な男が鎧の騎士に命令をしている。騎士は無言で男に従って動く。
大柄な男は、足元まで隠れそうなぼろぼろのマントを纏い、背中には大柄の男の身の丈ほどもある、闇色の長剣を下げている。
「違う!おまえが運ぶのは、このデカいの二人と細いの一人だ。俺はこの地面に埋まってるのと、レディーを運ぼう。」
「・・・。」
大男と鎧が、五人を抱えて洞窟の奥へと消えていった。




