旅程修正
夜が明けると、俺たちは死の森を抜けるように進み、太陽の動きに対し少し左側を進む様に歩いた。
ギニン曰はく、死の森を抜けた辺りで、観察者は俺たちから離れたらしい。
森の民と思える人の気配の消し方もすごいが、ギニンの気配感知能力も恐ろしく鍛えられている様に思える。
森を歩き、獲物を狩り、交代で火の番をする。そうした流れを4回繰り返したころ、大きな崖に突き当たった。おっさんの話では3日で着くはずだったが、大きく迂回したせいで時間がかかってしまった様だ。
ここまでの行程で大きなトラブルはない。しいて言えば黒く染まり切っていないスライムを一匹倒して、燃やしたくらいだろうか・・・。だが、残念な事に、俺の戦果はほぼ無いに等しい。師匠から学んだ突きのテクニックと今装備しているバスタードソードの組み合わせがしっくりと来ないのだ。罠にかからないタイプの大型の獣には、直線的な動きだけではダメージを与えられない。どうしたらよいのか・・・。
成果が出ない焦りからか、もやもやと考えてしまう。
「この崖沿いに左側へ向かうと、洞窟があるのか・・・。」
「ですね。」
サンタスが崖を見上げながら呟く。崖の上の方では、獲物を探しているかの様に巨大な鳥が飛びまわっている。山を越えている最中に出会いたくないタイプの野獣だ。
「ほら、さっさと行くわよ。」
「了解。」
「行くぞサンタス!」
立ち止まるサンタスを横目に歩き出したことで、隊列が入れ替わる。サンタスは置いて行かれた事で、焦って前方まで走って皆を追い越していく。
「隊列を乱すな!」
「お前がな。」
等と言っているうちに洞窟の入り口が見えてくる。思ったよりも近かったので拍子抜けしたが、旅程を修正した事で、まっすぐ入り口に向かって進んでいた様だ。もう少しずれていたら、通り過ぎていたかもしれない。
「松明をつけようか?」
「そうだな。だが、中の様子を見てからにしよう。」
ビルットが松明を準備している内に、中の様子を見てみる事にした。
「なんか臭いな。・・獣の糞の臭いがする。」
「アニキ、足元気を付けてください。この辺、苔が生えています。」
「おぅ、気付いている。・・おいビルット!松明はまだか?」
「待て待て、アル!匂いの中に腐った卵や腐った玉ねぎの臭いは無いか?」
「・・・無いな。松明の火で爆発することは無いだろう。森の民らしき人が進めてくれたルートだ、その辺りの危険はないだろう。」
「了解、じゃあ火をつけるよ!」
火打ち石をぶつける音が数回聞こえると、小枝が燃えるようなパチパチという音が聞こえだした。
「松明はギニンが持ってくれ。先頭を任せた。」
ギニンの索敵能力を活かし、先頭を任せる。並ぶようにサンタスが立ち、ビルットと俺が続き、コーギが殿を務める事となった。接近戦が得意ではないメイジやプリーストがいない為、雑な配置とも言えなくはない。
洞窟の中は意外と広く、人為的に削られている場所も見られる。街の露店くらいなら二つ重ねても十分入る大きさだ。
乾季だというのに、洞窟内の空気は湿っており、獣の糞の臭いを増幅している。正直勘弁してほしい。
「蝙蝠、蜥蜴、鼠、闘いになりそうな獣は居ないわね。」
「俺様としては、大活躍できるような大物がいてくれても良いんだけどな!」
「そのセリフ、ロックリザードを単騎で倒せるようになってから言ってほしいもんだな!」
「あれは!武器の相性が悪かったんだ!俺が弱かった訳ではない!」
「そうね、蛇にも圧勝だったものね。」
「あれは!・・もうやめてくれ。悪かった。」
俺たちの声に驚いて逃げる蝙蝠や鼠に気を配りながらも、順調に奥へ進む。ここまで奥に進むと、苔も生えておらず、足元も悪くない、正面と上だけを警戒すれば良い為、かなりのペースで進めている。
このままだと、洞窟内で一泊することも無いだろう。・・・が。
「行き止まり?」




