助けて師匠
俺たちは、男爵領へ向かうために洞窟を進んできた。一本道で迷うはずもないこの洞窟。その洞窟が急遽エンディングを迎えた。
「おい、入る洞窟間違えたんじゃないか?」
「だろぉ~?俺様をずっと先頭に立たせておかないからこうなるんだ!」
「いや、あの時既に、お前は先頭だったが?」
「アニキは間違っちゃいない!」
「oyoto・・・」
「?何の音だ?」
「manimonoarak・・・」
「壁の向こうから聞こえないか?」
「itonetebus・・・」
「・・・・止まった?」
壁の向こうからの音が止むと、静寂が訪れた。が、次の瞬間、岩が崩れるような音が響き渡る。
「なんだ・・地鳴りか?」
「この音、やばいんじゃない?」
大きな音はするが、洞窟全体が揺れているわけではないようだ。ただ、正面の壁が揺れている。
「壁が・・・。動いている・・・。」
俺は思わず呟き、呆然と成り行きを見守ってしまった。
「やばい!これ、ゴーレムよ!!」
コーギが叫び、やっと我に返った俺だが、頭の中はパニックのままだ。
壁が、ゴーレム?襲ってくる?逃げる?戦う?勝てるのか?
様々な考えが頭を巡りながらも、バスタードソードを構えた。俺と同じように皆も武器を構える。
壁が人間のような形に変形し終えると、ゴーレムの頭上には魔術の光が発生した。
魔術の光のお陰で、ゴーレムの全貌がはっきりと見て取れる。辛うじて人?と言えなくもない、無様な姿をしている。
「これ、襲ってくるよな・・・?」
「知らないわよ!」
岩でできた魔法生物のくせに、腕を回して、自らの挙動範囲を確かめているようだ。
「また岩系かよ!ったく!こっちにはメイジがいないってのに!」
「大丈夫だサンタス、今回は活躍できそうだぞ?囮って知ってるか?」
「ふざけんな!そんな出番はいらねーよ!」
「冗談だ。ロックリザードは岩ではあったが生物だ。硬さとしなやかさでこっちが不利な状況だった。だが今回は、魔法生物だ。硬いだけなら、削れる!」
ゴーレムは、見た目に違わず鈍重な動きで、攻撃をいなす事が出来ないだろう。こういう敵には・・・。
「皆で関節を狙うぞ!あいつの動きは遅い!」
この明るさと、広さがあれば、十分に戦えるはずだ。
「危ない!!」
ゴーレムが拳を振り上げたと思ったら、目の前に岩の塊があった。
どうやら、ゴーレムの基本攻撃は、素早い打ち下ろしの攻撃なのだろう。まぁ、腕を持ち上げて落下させる感じだろうな。
「あいつの拳に注意しろ!真下に入るなよ!」
「了解!」
ビルットが返事をすると同時に、ゴーレムへ切りつけた。キン!という軽い音と共に細かい石片が飛び散る。
「かったいね~。」
右手をプラつかせながらビルットが距離をとった。
「サンタス、やってみて。」
「任せろ!・・どぉりゃぁ~!!」
サンタスはビルットと反対側の膝を狙い、棍棒をぶち当てる。ゴイン!という音と共に、全身から細かい砂ぼこりが飛び散る。
「効いているのか?しっかし、サンタスの攻撃は、目に悪いな。」
「もうちょっと考えて攻撃してくれる?」
「俺は悪くねぇ!!相性が悪いだけだ!」
ここはひとつ、俺も攻撃に参加するか。まだ数度しか使っていないバスタードソード(獲物に当てたことは無い)を目線の高さで構えた。
自然と、師匠から教えられたか前になったが、まだ違和感が払拭しきれていない事への不安はある。
「せっ!」
バスタードソードでの渾身の突きをゴーレムに見舞った、が、狙いが上手く定まらず、太もも辺りをかすめた程度のしょぼい攻撃になってしまった。
「下手糞が!!」
「うるせぇ!まだ新しい武器に慣れてないんだよ!」
ゴズ!と音を立てて、目の前にゴーレムの拳が落下した。慌てて避けながらも次の攻撃に頭を巡らせる。
攻撃の合間を縫って、コーギとビルットは攻撃を仕掛けて、膝を削っていく。ギニンは手にした鋲をゴーレムの膝に打ち込むが、あまり効果は感じられない。サンタスは攻撃するたびに砂ぼこりを上げ、コーギから文句を言われている。
俺の攻撃は、当たらない?剣が上にぶれる。なぜ?
ゴズ!考えている最中にもゴーレムは待ってくれない。今の攻撃で、ビルットが拳を掠らせてしまった様だ。ビルットのショルダーガードが吹き飛んだ。
「ビルット!!」
コーギはビルットを支え、ゴーレムとの距離をとる。
「サンタス!暫く持たせて!!」
「結局、おれが囮役かよ!」
ゴーレムに大きな損傷はない。長引けば、負傷者が増え、最悪全滅する・・・。
不安と焦りと恐怖が場を支配し始めた。




