森の中の光と影
俺たちは、ブレードウルフと戦いながら(防戦一方だったが)街から森へと移動し、二度目の休憩をとっている。夜の気配が静かに広がり、辺りは鳥が囀る音と虫の音だけが響いている。
「ビルット!こっちに来て火をつけてくれ。」
「それはアルにやってもらってくれ!こっちは今晩飯の準備で手が離せない。」
「はいはい。火を持っていくだけだろ?」
湯を沸かしている鍋の下に枝を差し込み、火が付くのを待っている。乾季の為か乾いた木が多く、火をつける作業はいつもよりは楽に感じる。
「ほらよ。」
「よし、ここに突っ込め。」
「・・・。ふぅー。」
小さな火が次第に大きくなっていく。
「よぉし!さすが俺様だな。」
「ですね!」
「・・・木を集めただけだろ?」
夜に備えて調理とは別の焚火を用意した。
これからの行程もあいまいなため、あまり豪勢な食事はできない。食料は多めに持ってきてはいるが、五人が普通に食事をしたならば、二日で尽きてしまうだろう。狩りもしなければ、移動にも支障が出てしまう。
・・・コンコンコン・・・コンコンコン・・。
乾いた木を叩く音が近づいてくる。コーギが戻ってきた様だ。不要な緊張やトラブルを避けるために、皆に近づく際は、決められた音を出すことにしている。
「戻ったよ。ビルットよろしく~。」
「ほい。大きめの兎だな。」
「この間の罠が役に立ったね。ギニン先生。」
「・・・。」
ギニンは居心地が悪そうに下を向いた。
「他の罠は?」
「ダメだった。一応そのままにしておいたから、朝にもう一度見に行こうか。」
「だな。」
「後さ・・・。」
コーギが俺とビルットに小声で話しかけてきた。
「たぶん、誰かに、見られている様な感じがする。」
「!どの方角だ?」
「分からない。視線だけ感じるんだ。」
「襲ってくるような気配は?」
「いや、監視されているだけの様な・・・敵意は感じない。かも?」
「少し、警戒を強めよう・・。」
そう言って、辺りに気を配りながら、順番に食事をとった。
全員の食事が終わり、見張りの順番を決める事になり、時間をずらしながら常に二人が火の番をすることになった。
最初は俺とビルットが火の番、その後俺とコーギが交代し、ビルットとサンタス、コーギとギニンが入れ替わるようになって、明け方には俺とギニンが最後の見張りとなる。
「なぁ、俺たち、これからどうすんだ?辺境の男爵領へ行って、何か変わるのか?何か見つけられるのか?」
「ビルット、それは何回も話をしただろ?今王国に留まるより、行動するべきだと思う。軍関連の人間が多く収監される理由は、外の世界で何かを見たり知ったりしたからだと思うんだ。でないと、あんな平和な軍で不祥事が多発することも無いはずだ。」
「そうだとは思うけど、でも・・、じゃぁ、一体何を見たというんだ?」
「それは、行ってみないと分からないよ。師匠の部屋にあった羊皮紙に、森の民の事が多く書かれていただろ?男爵と森の民、何かがあるんじゃ・・・・。なんの音だ?」
俺とビルットは微かな音に耳を傾けた。
辺りには虫の音だけが響いている・・・。
「あら、気づいちゃったのかしら?」
「誰だ!」
「動かないでね。騒がないでね。今、あなたに向けて狙いをつけているのだから。」
どこからか、女性、もしくは子供のような声がする。
「何の用だ!」
「ずいぶんな物言いね。あんな気持ち悪い魔力を引き連れて・・。この森に入ってこないでもらえる?」
「気持ちの悪い魔力?何のことだ?」
「黒い影みたいな、小さな魔力があなた達の少し後ろにいたじゃない・・・。」
「!どこに!!」
「もう、潰したから居ないわよ?」
「・・・・。」
「あなた達は何の用で、この森に入ってきたの?ここは【死の森】、普通人間が近寄らない場所よ?」




