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しあわせの国  作者: 狼眼
1章 しあわせの国・・グリフ王国・・

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動き出す影

王城の隣には、王城の影のような黒い建物が存在している。

ビー中隊のメイジたちが利用している【魔力の塔】だ。

この魔力の塔は、壁の材質に精霊石が埋め込まれており、魔術や呪術の成功を底上げする機能を有している。そのため、様々な研究が行われており、記憶操作の儀式もここで行われる事が多い。


「メイズ様、術式に必要な素材が到着いたしました。」

「よし、陣の中に置け。」


メイズの指示により魔法陣の中に素材が並べられた。

大きい円形の部屋の中央に書かれている魔法陣。精霊石を中心に、魔晶石を配置し幾何学的な模様を描いている。

その魔法陣を囲むように複数の術者が整列している。


「闇と地の連なりよ・・数多の力の根源よ・・我に使らを見せよ・・。」


メイズの呪文が終わり、暫くの間静寂が辺りを包み込む。

音もなく闇が集い、人の形へと変形し始めた。人との違いは全身が黒い闇で覆われている事、そして拳大の大きさであるという事だ。


「・・・宿り給え。」


闇の生物は、周囲の術者の正面に移動し、術者の顔に取り付き一体化した。

術式が終了すると同時にメイズは倒れ伏した。


「メイズ様!」


メイズの側近が駆け寄ると、メイズを専用の椅子に座らせた。


「お前たち!影を使い街の調査を行え。呪いが解けそうな者、不穏な動きを行っている者。それらを謁見室まで移送せよ。」

「「「はっ!」」」


10人の術者が魔力を消費しつつ、闇の視界を操作する。

術者には闇の生物を通して、外の街や場内を移動している様に見え、音も聞こえている。


「今回、魔獣の襲撃があった地域を優先的に調査せよ。本日中に終えるぞ!」

「「「はっ!」」」

「うむ、ザン、ここは任せた。」

「お任せを。」


メイズは残りの仕事を部下に任せて部屋を出て自室に引き返していった。


「よし、街から順に調査を行う!被害があった西地区、北地区、東地区の調査だ。西に5名、東に5名、散会せよ!」




「よ~し。アルバート君たちは森に入れたねぇ。」


街の塀の上から森を見渡すザスタは、アルバート達を送り出すことに成功した事に安堵した。


「さ~て。門番の支援に回るかねぇ。」


門番は無能ではないが、30匹もの獣を相手にするには分が悪すぎる。負傷こそはしていない様であるが、確実に押されている。

あと少し押されると、ブレードウルフを街に入れてしまうことになる。


「危ないねぇ。」


ザスタはショートボウを構えると素早く射出していく。

側方からの攻撃にブレードウルフが怯み、隙が出来る。


「いまだ!!」

「とりゃ!」


ハルバードを横なぎに振り回し、ブレードウルフを後退させる。ザスタも加わることで、徐々にブレードウルフの数を減らすことが出来た。


「すまない!助かった!!」

「いいよぉ~!」


数体のブレードウルフが森に逃げ帰った所で声を掛け合う。


「災難だったねぇ。怪我はなかった・・かい・・・?」

「どうしました?」

「いやぁ、大丈夫だよぉ、なんでもないよぉ。」


今、視界の隅を通ったのは、あれは、影だねぇ。あと少し遅かったら見つかってたかもねぇ。

ザスタは影の存在を察知して、背筋が凍る思いをした。


アルバート君達は、洞窟に向かうだろうなぁ。きっとそうだろうなぁ。洞窟の危険を伝えてないから、ちょっと危ないんだけどなぁ。

そう思いながらも、影から身を隠すことを優先に歩き出した。

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