欲する者
『アルバートから離れなさい!』
『次は首を斬り飛ばすよ!』
シルフとウンディーネが、水面のウンディーネに対して威嚇をする。
しかし、俺に密着した水面のウンディーネに対し、攻めあぐねいている状態である。
『ワ・・・。ワタシ・・・。』
狂暴化しているというより、何かを訴えたいようだ。
「どうした?何かあるのか?言ってみると良い。」
『ワタシ・・モ・・・。ソレガ・・・。ソレガホシイ!!』
水面のウンディーネは、大きく口を開けて、俺の首筋を狙ってきた。
俺は、右手にシルフの力を溜め、水面のウンディーネを引きはがす。
吹き飛ばされた水面のウンディーネは、すぐに態勢を立て直し、こちらに向かって叫ぶ。
『ナンデ!ナンデソノドウゾクハヨクテ、ワタシハダメナノ?ズルイ!!』
何の事を言っているのだろうか。
「ちょっと待て、言っている意味が分からない。こっちのウンディーネの何がずるいというのだ?」
『チカラ・・・オマエノチカラヲトリコンデイル!!ワタシモホシイ!!』
なるほど、魔力の事を言っているのか・・。
「分かった。だが聞いてくれ・・・。俺は術者だ。だから、精霊に魔力を与える事が出来る。しかし、さっきみたいに、襲い掛かってはいけない。術者の血を飲めば、精霊は強力な力を得る事が出来るだろう。何しろ、俺たちの血液の中には、高濃度の魔力が含まれているからだ。しかし、術者の血を飲んでしまうと、余りの魔力の濃さに、精霊は確実にくるってしまう。君はまだ生まれたばかりだから大丈夫のようだが、自分の回りの生物を襲って魔力を得ると、いずれは狂える精霊となり、俺たちが討伐しなければいけなくなってしまう。」
いい子だ、ちゃんと俺の言う事を聞いてくれている。
「いいかい?俺は今から、気味に魔力を与える。しかし、君は焦ってはいけない。ただ受け入れるだけだ。良いね?」
『ワカッタ!ハヤク!!』
「焦ってはいけないってば。」
そう言いながら俺は、水面のウンディーネに向けて手を伸ばす。俺が魔力を放出するのを大人しく待ってくれているようだ。
俺はゆっくりと手のひらに力を籠めつつ、目の前の精霊に意識を向けた。
『ワッ・・・ワワッ!!スゴイ・・・コレガマリョク・・。』
初めて酒を飲んだ子供の様に、魔力の味に驚いているようだ。
『ね?良いでしょ?こういう人間とは仲良くするのが、良い精霊になるためには大切な事なの。』
『・・スゴイ・・・スゴイ・・・。』
「これが精霊術師の魔力だ。よくは分からないが、これが良いんだろうな。」
俺は一旦、魔力の放出を止めたが、水面のウンディーネは魔力欲しさに俺に絡みついてきた。
『ネ、ネ、モットチョウダイ?』
「ダメだ。」『駄目よ。』『駄目だよ』
『エ~。ケチ!』
「良く聞いてくれ。いま、俺が君に魔力をあげたのは、君が俺の願いを聞いてくれたからだ。いいかい?ここにいるウンディーネもシルフも、俺の為に色々動いてくれているんだ。だから俺もこの子たちに対価として魔力を提供しているんだ。」
『ジャ、ワタシモイウコトキクカラ、マリョクチョウダイ!!』
『良く聞きなさい!』
「今から君は、精霊界に行くと良い。精霊界に行けば、出来る事が増えるし、俺の呼び出しに応える事も出来る。そうすれば、魔力も与える事が出来るのさ。」
『セイレイカイ?』
『そうよ。私たちが住んでいる場所。それなりに良い所よ?』
『あなたには、精霊の何たるかを学んでもらわないとね?変な事をされると、私たちまで迷惑なのよ。』
『・・・・ワカッタ。セイレイカイ・・イク。』
どうやら、しぶしぶではあるが納得はしてくれたようだ。
納得してくれたので、もう少しだけ魔力を与え、精霊界へ送ることにした。
案内は同族のウンディーネが行ってくれる様だ。ついでに教育も頼むね。
さて、これでこの水場の脅威となりうる精霊は排除で来た。
将来的には、いずれかのウンディーネに滞在してもらい、水場を守ってもらうのが一番なのだが、もう少し先の事になるだろう。
一仕事終えた俺は、カートの場所まで戻ると、さっきまでと同じ状態でヴァールさんが眠っている。
・・・精霊との闘いの気配って、感じなかったんだろうか?一応、一流の冒険者だよな?
仕方がない、今の出来事は、帰りの道中でのんびり話すとするか・・・。
俺はカートの影に座り込むと、少しの間目を閉じた。




