夜の闇はより深く
「俺、少し出かけてくる。」
そう言って、軽く身支度を始めた。ベルトを着け、マントを羽織る。
「どこ行くんだ?あまり派手に動くなよ?」
ビルットは少し眠たくなってきているようだが、一応俺の事を心配してくれているようだ。
「ちょっと、記憶の件で調べたいことがあってな。」
「気をつけなさいよ?」
「わかった、お前たちも、二人きりになったからって、変なことするなよ?戻ってきた時に変な雰囲気だったら困るからな。」
「さっさといけ!!」
コーギが水袋を投げてきた。ビルットは「ねぇよ」と軽くいなしながら俺に剣を渡してくる。
「お前の曲がった剣、俺がとどめを刺してしまったからな。役に立つかどうかわからないが、持っていけ。俺は寝る。」
「あぁ、すまない。」
二人に軽く別れを告げてから部屋を出た。人が寝静まる時間だというのに、木ノ葉亭では酒を飲むやつや、酔いつぶれて突っ伏している奴など、複数名が思いのままに過ごしている。
絡まれないように距離を置きつつ出口へ。受付で「お出かけで?」と聞かれただけで木ノ葉亭を後にすることが出来た。
目指すは軍の一般宿舎だ。俺たちの予備兵宿舎とは違い、しっかりとした部屋が用意されている。
師匠の部屋には何度か呼ばれたことはあるので、暗くてもさほど支障はない。今は静まり返っているが、誰かに見られても怪しまれないように、あえて堂々と歩く。サンタスだけには会いませんように・・・。
予備兵宿舎の横を通り抜け、一般宿舎へと道を急ぐ。正式に軍隊に所属していない俺が、一般宿舎へ、しかも無断で部屋に入ることは認められていない。見つかれば速攻で地下行きだ。
堂々と、しかし音は最小限に。俺にスカウトや斥候の素質があれば良いのだが、体格的には戦士向きだろう。だからあえて平然と行動するしかないのだ。
所々の部屋から明かりが漏れているが、気を止めている暇はない。明かりを避けつつ歩く、歩く。
「やっと着いた。」
安堵のため息ともに小さな声で言葉が出た。
安心している暇はない。部屋の鍵は簡易的なものだがしっかりとかかっている。
だが俺は、師匠から開け方を伝授してもらっている。記憶の中の師匠が俺に伝える「ここは、こうするんだよ。」窓の冊子の隙間にはまっている細長い棒を、扉の蝶番の下から差し込むと、蝶番は簡単に外れった。俺は、扉をずらすように隙間を作り、部屋の中に体を滑り込ませた。
「相変わらず、汚い部屋だな・・・。」
師匠が数か月の間牢屋の中にいるためか、何かが腐ったような匂いがする。平時の昼間で、正しいルートで部屋に入っているならば「掃除でもしてやるか」と思うのだろうが、今は、見つかれば即拘留される。余裕も時間もないのだ。
「確か、入って右奥の、下から二番目の、レンガの、裏。」
記憶を言葉に出しながら、再確認して行動する。
レンガ・・。ゴミで埋もれてる・・・。
軽く絶望しながらもごみを避けていく。「なんでこんな所に干し肉が・・・。干し肉か?」と、小声で突っ込む。ゴミを避けるだけなので、そこまで時間はかからなかったが、手の匂いは嗅いでみたいとは思わない。
「このレンガを・・・。」
レンガを持って少し力を入れると、確かに動く。
少しずつ力を加え、レンガを引き抜くと、中から羊皮紙が出てきた。これが「情報」だろう。
「まだ、やり取りは続いていたんだ・・・。」
この暗さでは、文字は読めない。俺はすぐに羊皮紙を腰のポーチに入れた。
レンガを戻し、ゴミ・・・はそのままで、部屋を抜け出した。
蝶番を戻し・・・。完璧!
一旦、木ノ葉亭に戻るか・・。




