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しあわせの国  作者: 狼眼
1章 しあわせの国・・グリフ王国・・

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夜明け前

俺は、師匠の部屋を抜け出し、予備兵宿舎の辺りまでたどり着いた。

門前の松明は残り一つ、もうすぐ夜明けだ。しかし、入ったことがない場所、入ってはいけない場所での行動がここまで精神をすり減らすものだとは思わなかった。

俺は一旦、自分の宿舎に戻り、一瞬の休息を得るため路地に入った。


「だれも、いないな・・。」


特に重要な物の無いこの付近で見回りなどが有るはずもなく、だれにも見られることも無く部屋へ侵入した。一部屋に12人が寝泊まりする部屋に8人で広々と使わせてもらっている。国の若者が少ないことが原因らしい。


どうやら、既にサンタスは部屋を出たらしい。奴の荷物はほとんどなくなっている。

俺も長居するつもりはない。自分の寝床の横に置いてある木刀をつかみ、ベルトに差し込む。今は帯剣しているので、右側に差し込む形になった。あとは・・・。部屋の隅に置いてある頭巾を数枚拝借しておこう。掃除や配給業務の際に頭に巻く布だが、数枚無くなった所で誰も気が付かないだろう。だれも管理してないからね。

さて、早く出ないと朝食を作る担当者たちが起き始めるかもしれない。ここで不用意に見つかると、行動を起こしづらくなる。

心の中で「お世話になりました。」と部屋と皆に別れを告げた。


予備兵宿舎を出ると、広場に出て、門とは反対方向に向かいつつ人目を避けて歩く。門には常に人がいるのだが、魔獣襲撃後の警戒態勢もあるため、今はいつもより夜間の人数が多いようだ。

広場わきの林道を足早に通り過ぎると住宅街に出る。もちろんここもスルーだ。

こちら側は襲撃の際にほとんど影響がなかった区画で、普段通りの街並みとなっている。門より右側は壊滅状態で、それこそ建物は崩壊し、多くの人に被害が出ている。

そういえば、と思ったその時、前方で人の気配がする。住宅街だからといって、出歩く人がすべて一般市民だとは限らない。軍関係者も普通に家を持つものもいるからだ。


ここで立ち止まったり、いきなり方向を変えると逆に怪しまれる可能性も高い。まだ薄暗いながらも、顔を見られると厄介な事になりかねないので、俯きながら、眠そうに、目をこすりながら通り過ぎることにした。

大丈夫、手を顔に持って行っているから顔は見えない。

相手も眠いのだろうか、歩みは遅い。これなら行ける!

歩調を崩さないように横を通過した。さすが俺!


「アル?」


不意に声を掛けられ、鼓動が一つ飛んだ。見られた!逃げるか?挨拶をしてかわすか?聞こえなかった振り、それだ!

と思いながらも立ち止まってしまっていた。


「やっぱりアルだ、ごきげんよう!」

「・・・。リンか・・。脅かすなよ~。」


花屋の朝は早いのよ!とよく言っていたが、本当に早いようだ。やっと空が白んできた頃だと言うのに、もう身支度は万全の様だ。


リンにはこの後書置きを残して合流しようと考えていたので、最高のタイミングで出会えたというところだろう。


「脅かしてないよぉ、どうしたの急いで。」


普通に通り過ぎようとしていただけなのだが、急いで見えたのか。やはり俺はスカウトには向いていないようだ。


「ちょっと宿舎まで戻っていたんだ。リンはこの後集合できそうか?木ノ葉亭の昨日の部屋だ。」

「うん、行く予定だよ。」

「わかった。みんなで話をしたいから、朝飯を食ったら来てくれ。」

「わかったよ。もう食べたけどねぇ。」

「早いな!まぁ、落ち着いたら来てくれな。」

「うん、後でね。」


じゃあね!と見送られながら木ノ葉亭に向かう。

木ノ葉亭は、この道を2ブロック進み右手に曲がったあと、更に3ブロック進んだところにある噴水の目の前に建っている。

夜間は噴水を止めているようだが、明け方の街並みを見ることも無く、俺は木ノ葉亭に滑り込んだ。

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