木ノ葉亭
木ノ葉亭。俺はあまり来ることは無いが、街の中でも大きめの宿屋兼酒場だ。
何しろ俺たちは、寝る場所はあるが金はない。この施設には縁がないのだ。しかし、コーギはよく顔を出しているらしい。
木ノ葉亭は、コーギの出身地であるリーフから来た商人が始めた宿屋で、王国に来たばかりの頃はかなりお世話になったらしい。
「こんにちは!おばちゃんいる?」
コーギが木ノ葉亭に入るなりカウンターの人に話しかけた。
「あぁ、コーギちゃんいらっしゃい。オーナーは自室にいるから、奥の席で待ってなよ。」
「ありがとう!あと、回復魔法使える人はいる?」
「えぇっと、今日は三人いたと思うけど、今回の騒動で動けそうなのは一人だけだね。怪我したのかい?」
「うん、メンバーの一人がね。じゃ、その人もよろしく~。」
「はいはい、空いてる席にどうぞ。」
俺たちは奥の窓側にある席に座った。サンタスは座るのも辛そうなので、床に転がしてある。もちろん善意だ。
「なぁ、コーギ、この宿屋には回復魔法が使える人を雇ってるのか?」
「そうじゃなくて、この店は、冒険者関係の人がよく出入りするから、魔法の練習兼、小遣い稼ぎにいつも複数名の見習い神官が来てるの。だからここに真っ先に来たのは正解なのよ。」
「回復魔法か・・。高いんだろ?」
「まさか、見習いよ?」
「サンタスでも払えるか?」
「エール一杯程度の金なら払えるでしょ?」
「ぎり・・ぎり・・だな。」
銅貨3枚程度は持っていたらしい。
「見習いとはいえ、格安だな。」
「ここのおばちゃん、オーナーが、見習い神官には無償で飯を提供しているからね。圧倒的に安いの。」
一方的な情報交換を行っていると、同年代くらいの男が近寄ってきた。
「回復はどなた・・、この方ですね。」
見習い神官はその場に跪き、サンタスの胸辺りに手をあてる。
「偉大なる神の御手により、この者に癒しの奇跡を・・・。ヒール・・・。」
数舜の後にサンタスの体が光に包まれ、傷を負ったであろうか所に吸い込まれるように消えていった。
「痛みはどうですか?」
「かなり良くなったが、まだ痛い。」
「かしこまりました。偉大なる神の御手により、この者に癒しの奇跡を・・・。ヒール。」
「おぉ、ほとんど痛みはなくなった。やるな~あんちゃん!」
「では、銅貨6枚です。」
「え?3枚じゃねーのか?」
「えぇ、一回で3枚です。二回使いましたので6枚です。」
「・・・。ギニン・・・。」
ギニンは申し訳なさそうに首を振る。今回の演習の後、入隊一時金が貰えるはずなので、金は持ってこなかったらしい。ま、外じゃ使わないからね。
「アルバート・・・。」
「そんな目で見るなよ。ほら、3枚。」
「すまん、すぐ返すから、」
「一時金もらってからでいいよ。」
「ああ、だからあと3枚かしてくれ。」
「ギリギリ持ってたんじゃないのか?」
「最初は持ってたんだが、荷物を最小限にするときに、財布を出したままだった。」
情報弱者にしてしまった俺の責任もあるので、サンタスから銅貨を回収し、見習い神官に銀貨を1枚渡し、銅貨を4枚返してもらった。見習い神官は「まいど!」と言って足早に次のけが人に向かっていった。
「やはり、街中でも多くのけが人が出たんだな。」
「そうね、あの感じだと、そこまで大きな被害は無いようだけど。勇者ご一行のおかげかもね。」
ビルットとコーギが話をしていると、木ノ葉亭の扉を開けてリンが入ってくる。
「お待たせ~。」
「家はどうだった?」
「うん、平気だった。今回の規模はそこまで大きくなかったみたい。」
「よかったな。」
「うん!・・・。あっ、サンタス君もう平気なの?」
「おぅ、元々大した怪我じゃなかったし、日ごろの鍛え方が違うぜ!」
「さすがアニキ!」
「銅貨6枚で回復魔法をかけてもらったんだ。」
「そっか~。よかったね。」
リンは、ここに来る前に実家の確認に行っていた。無事で何よりだ。
そしてまた、木ノ葉亭の扉が開き、女性が一人で入ってきた。
「おまたせ~。」
勇者パーティーのルーナだ。




