解放の儀
「これが、霊装・・・。」
「うむ、まぁ、似合っている。」
ま、似合わないわな。今の俺の装備は、皮の胸当て、セットの脛当て、剣帯(バスタードソードは鉄製なので、サンタスと一緒に置いてきている。)、甲殻虫の手甲。そして新緑のマントといった、チグハグナ装備になっている。
一式をセットで揃えるような余裕は無いしね~。
「よし、今回、其方に手伝ってもらう例として、ミスリルロッドを授けよう。」
「ミスリル!・・・あ、ありがとうございます。」
「これも、あの、槌の民の作品だ。」
「通常のロッドとは、少し形が鋭いですね。」
「それは!!」「それは!!」
「術を使えばロッドとなり~」「「ロッドとなり~」」
「突いて使えば刺突武器~」「「刺突武器~」」
「それは!!」「それは!!」
「「「それは素敵な、し~ご~と~!!」」」
「・・・毎回これなんすか?」
「構うな。構うとつけあがる。」
こっちへ来い、とガーラさんと長老たちと一緒に、階段を上がる。
巨大な木のうろを出て、森へ入ってきた方角とは反対方向に進む。奥へ、奥へ。
「ガーラさん、今、どこへ向かっているのですか?」
「いまは、解放の儀の祭壇へ向かっている。先に向かったメイルーンが準備をしているはずだ。」
暫く歩くと、大きな切り株の様な場所で、メイルーンが手を振っている。
「準備!できてるよ~!」
切り株の上に上がり、メイルーンの近くに行くと、そこには漆黒の塊が置いてあった。
「これは、何ですか?黒い・・・。樹液の様な・・・。」
「これは、瘴気を吸い込んだスライムだ。」
「これが?依然見たやつと全然違う。真っ黒だ。」
「今から、このスライムを解放してやるのだ。」
「解放、とは?」
「精霊の力を使って、瘴気を払うのだ・・。」
「なるほど?」
「お主に新緑のマント、霊装を与えた意味が分かっとらんのか?」
「私が、やる。と?」
「そうだ。お主は、精神の精霊にかなり好かれておる。我ら、森の民との比べてもその親和性はなかなかのもんだ。普段なら、儂が精霊を使うのだが、お主の方が適任じゃろ。」
そう言うと、俺の背中を押した。「ほれ、やってみぃ。」と、しつこいので精神の精霊に語り掛ける。
「闇と精神の精霊よ。・・これ、どうしたらいいのか・・無理じゃね?」
語り掛けながらも、すこし愚痴っぽうなってしまった。
『だいじょうぶだよ』
効いたことのある様な声が聞こえ、黒い霧の様な塊が、黒いスライムを包んでいく。
『これ、どうする?』
「瘴気を、グリフ王国周辺に向けて飛ばし、森の動物に入り込ませるのだ。」
「え、でも、そんな事をしたら、魔獣が、魔獣が発生してしまうんじゃ?」
「そうじゃ、魔獣に宝珠を探させるんじゃ!」
「気をつけろ?お前の心に攻撃性があれば、辺りの人も、まとめて破壊してしまうぞ?」
「・・・今になって言うなよな。」
『ねぇ、これ、どうする?』
「お願いだ。グリフ王国ってわかるかな?あっちの方にある大きめの国なんだけど。あそこの近くの森の動物に、こいつの瘴気をあげてほしいんだ。
『きみがかんがえているばしょだね!わかったよ!』
闇と精神の精霊は、スライムから瘴気を取り出し、狙いを定めている様だ。
「人は、襲わないようにしてね。精霊の宝珠を探したいんだ。」
『わかってるよ。きみがおもうままに!・・・えぃ!」
スライムが吸収していた瘴気は、黒い粒になって、空に舞い上がった。
ある程度舞い上がった所で、空が歪んだように見えた。
「?どうなってんだ?」
俺は、目をこすりながら空を見上げる。
「小僧、おまえ、あれだけ滑り落ちておいて、ここが普通の屋外だとでも思っていたのか?」
「・・・そうでした。・・・あれ、どうなっているんですか?」
「死の森に生えている木の、樹齢が100年を超えている木の根元に精霊石を埋め込んで、外界との境界にしている。地上側は木の精霊と土の精霊に、地下側は風の精霊と光の精霊に、それぞれ守られているのだ。」
「・・・無駄に、すごい技術が使われていますね。」
「そして、瘴気はそれらをすり抜け、外界へと向かうのだ。」
「・・・リンクル・・・無事だと良いが・・・。」
「小僧!惚けておるな!我らも向かうぞ!」
「え、あ、はい!」
俺たちは、瘴気を追いかけて外に向かう。
途中でサンタス、ビルット、ギニンを拾い、空間の端へ向かう。
ガーラさんから手渡された、太めの蔦を握ると、体に巻き付いてきて、上へと運んでくれた。
サンタスが異様に喚き散らしていたが、俺は景色を見る事に心を奪われていた。
「あっ、もうすぐ天井?に着く。」
「目をつぶっておけよ?」
ガーラさんの忠告通り目をつぶると、瞼の向こう側がまばゆい光に包まれた。おそらく、光の精霊の影響だろう。
「目が~!目が~!!」
サンタスは、またも馬鹿みたいに叫んでいる。・・・恥ずかしいので、おいて行っていいですか?




