槌の民
俺たちは、巨大な木のうろに入り込み、更に下に降りる階段が見える。
「メイルーンさん、まだ下があるんですね。」
「いえ?あと少しよ?」
階段を降りると、巨大な木をくりぬいた様な大きな部屋があった。
そこには複数名の男女が座っている。
「来たか、ガーラ。」
「は、長老。」
「・・・長老?この若さで?」
「ガーラ、この者は?」
「精神の精霊より祝福を受けている者です。」
「ほぉ、吉報だな。」
「はい、なので、本日で決着をつけようかと。」
「ようやく・・・か。」
俺の話を華麗にスルーしながら、長老と呼ばれる男と、ガーラさんは話を進めた。
長老も、ガーラさんも同じ様な年に見えるが、若くして長老とは、なかなかの実力者なのだろう。
「して、その者の名前は?」
「・・・・こ、小僧です。」
「アルバートです!」
「アルバートか、其方が我々に力を貸してくれるというのだな?」
「・・・そうなんですか?」
「この者であれば、正しく導けるかと・・。」
「そうだのぉ。試してみるか・・・。」
「こぞ・・・アルバート!此方へ来い。」
「・・・はい。」
俺は、ガーラさんの近くへ行き、示された椅子へと腰掛ける。
「先ずは儀式の正装の準備を・・・。」
「槌の兄弟をこちらに」
奥の扉が解き放たれ、3つの影が躍り出てきた。・・・というか、小躍りをしながら、何かの歌を口ずさみながらの登場だ。
「フンフフン!大きな槌を振りかざし~。」
「数多の敵を屠り去る~。」
「鍛える武器も数知れず~。」
「ハハンハン!小さき針も矢の様に~。」
「細かな飾りも繊細に~。」
「機能も優雅も作り出す~。」
「それが!」「それが!」
「「「それが我らの、し~ご~と~!」」」
「・・・もういいか?」
「応、今回は何を作るのだ?」
「こ奴の霊装を作ってもらえんか?」
「・・・う~むぅ。おぬし、好きな色は有るか?」
「そうだな。赤!強そうな赤が良い!」
「うむ!・・・赤はやめておけ。緑にしよう。」
「何故!?」
小躍りで出てきた3人は、槌の民と言われており、森の民と同じく人間に住処を追われた民族らしい。だが、元々放浪の民であるため、これといった感情は持っていないらしい。
「よし、寸法はとった。」
「素材もある。」
「装飾も準備できている。」
「「「よし!作るぞ!」」」
なんだか、3流の演劇でも見ている様な感覚になってしまう。
「ガーラさん、大丈夫なんですか?あんなので。」
「槌の民に装備を作ってもらえるというのは、冒険者にとって憧れの事なんだぞ?」
「普通は作って貰えないんですか?」
「あぁ、デュアルでさえ1年粘ったという話だ。」
「・・・ちょっと、期待できますね。」
「あいつが最初に作ってもらったのは、ミスリルのチェインメイルだった。」
「え、武器マニアっぽいのに?」
「あぁ、武器については、自力で古代遺跡を漁るのだそうだ。」
「はぁ、そうそう出てはこないでしょうに・・・。」
「そうだな、あいつの戦果としては、ローフルブレード・・・位のものか。」
「男爵様ほどの方でも、剣1本・・・。ですか。」
男爵ほどの活躍をした人であれば、もっと財宝などを見つけていると思ったんだが。そう甘いものではないらしい。
「・・・あれを超える剣もあるにはあったのだが・・・。あいつ自らが放棄したのだ。もちろん事情はあったんだがな。放棄する際、血の涙を流している様な、苦悶の表情であったな・・・。今思い出しても・・・・笑える。」
武器マニアが、伝説級の武器を手放すって、何があったんだろう?
そう思っていると、両肩に何かが乗せられた。
「え、なんです?」
「できたぞ?霊装だ。」
それは、若葉の色をそのまま織り込んだような、それでいて質素には見えない、精霊の力を宿したようなマントであった。




