↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの『真実の愛』、利用させていただきます  作者: Debby


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/24

20 伯爵の意図

全席個室。会員制のレストランでの昼食という形で、シュタイン伯爵とアレクシスの面会は行われた。


「では、これまでの四人の候補は皆、リリア嬢を選んだため必然的に候補から外れたと……」


「君ら候補の令息は優秀ではあるが、あくまでも次期伯爵はエレノアだ。そのことを頭では理解しているのだろうが、実際どうなのか──結果はわかり易かったよ。エレノアではなく、リリアを当主に添え、自分たちが実権を握ろうという魂胆が透けて見えた。まぁ、リリアはあの容姿だ。本当に好意を持っていたのかもしれないがね」


リリアは幼い頃から勉強することを嫌い、外見を磨くことばかりに注力していた。しかし、美貌はどんなに手を入れても、永遠に続くわけではない。

伯爵夫妻は、あの手この手で、せめて下位貴族の夫人程度はこなせるようにと教育を施してきたが、全て徒労に終わった。


これまでリリアは裕福であれば良いと、爵位を問わず嫁入り先を探していたが、マナーはいかに自身を可愛らしく見せられるかを追求し歪めて覚え、基本的な勉強をも嫌う……リリアはこの容姿さえあればと思っているようだが、まともな貴族家にリリアを望む声がある筈もなかった。


現在リリアが使っているのは伯爵令嬢としての予算であり、エレノアの代になれば無くなるものだ。それでも伯爵家のために有益な働きができるなら仕事はあるため、給金を与えることは可能だが、リリアにそれは無理だろう。


嫁にも行けず、仕事も出来ない──そういった理由から、エレノアへの代替わりのタイミングでリリアを修道院に入れることは、決定事項だった。




しかし、ある時からリリアは『真実の愛』などと口走り、ちょうどはじまったエレノアの婚約者の選定に横やりを入れるようになった。

彼らと結ばれるようなことがあればリリアは平民だが、伯爵は本人が『真実の愛』だと思って嫁ぐのであれば、構わないと思っていた。


何よりエレノアが婚約者の選定にリリアを利用していたこともあり、伯爵もリリアの行動を止めなかった。

エレノアのために選んだ子息ではあるが、彼らが平民となる覚悟でリリアを選ぶのであれば、伯爵にはとめられないし、何よりその様な心持ちでエレノアの夫になどなれるはずもないからだ。


リリアには分配される財産がある。他家に嫁ぐのであれば持参金に、修道院へ入るのであれば寄付金となるその金があれば、かなりの年数を二人で生活することができるだろう。その間に生活基盤を整えれば良いと思っていた。


しかし彼らは、リリアを選んだ上で、伯爵家の後継を変えるよう望んだ。執務能力で選んだ候補たちだったが、そんな彼らでも他家の者が後継の選定に口出しすることがどんなに愚かであり得ないことなのか……彼らはそんなことも理解できていなかったらしい。


そういった出来事が四度続いたのだ。

仕事が出来ようともその様な心持の子息が多いとなると、こちらだって多少慎重になる。

だから、他の候補の時と同様、アレクシスへと干渉するリリアを止めなかった。


「悪かったね」


そう言いながら、伯爵は濃紺の絵付けが施されたコーヒーカップを音もなくソーサーに戻した。


伯爵にとってはどちらも大切な娘である。


これまでの令息との縁談は断っていたリリアも、アレクシスとであれば、結婚したいと言っていた。

伯爵は、アレクシスがリリアを選ぶなら、それでも構わないと思っていたのだ。



「で、君はそれを聞いてどうするんだい?」


その話を聞き、アレクシスは、伯爵夫妻だけでなく、執事ら使用人がなぜリリアの愚行を止めなかったのか、得心がいった。


「どうする、と言われても、私の縁談の相手はエレノア嬢です。

もしエレノア嬢に選んでもらえ、将来伯爵家に入るのであれば、一番に考えることは伯爵家の未来と妻となるエレノア嬢のことです。


伯爵には申し訳ありませんが、リリア嬢は伯爵家にとって、害悪でしかない。エレノア嬢が清廉潔白な伯爵となるのに確実に邪魔になります」


貴族家は税金で生活する代わりに、領民により良い生活を約束する。貴族は趣味嗜好のためだけに生きることは許されない。

それを知ろうともせず、マナーや知識を得られる環境にありながら、それを学ばなかったのはリリアの判断だ。


そういう心持の令息令嬢は、家の恥になるため伏せられてはいるが、早々に皆修道院へ入れられている。他国に嫁いだとされる者たちの多くがそれにあたる。


彼らは全員が神に身を捧げるわけではない。

修道院に入った時点で籍からは抜けるが、そういった貴族の入る修道院では、ひとりでも生きていける術を身につけたあと、望めば寄付金の一部を持って、平民として市井で生活することが出来るようになっている。結婚も自由だ。


たとえリリアが婚姻や他の理由で家を出たとしても、問題を起こせば確実にシュタイン伯爵家の名が出るだろう。

リリアの場合、その思い込みの激しさで、すでにエレノアの婚約者候補との顔合わせで問題が起きているのだ。今後、問題を起こさぬ保障などない。


伯爵家の未来を考えるのであれば、これ以上リリアを野放しにするべきではないと、アレクシスはシュタイン伯爵に強く訴えた。





その数日後、シュタイン伯爵は、リリアの修道院行きを決定した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。