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あなたの『真実の愛』、利用させていただきます  作者: Debby


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19/24

19 茶番

「予定が急になくなってしまったの。せっかくオシャレしたのに残念で──もしよろしければお茶会に同席させていただけないかと思い、こちらに参りましたの」


婚約者候補との顔合わせであると知っていながら現れたリリアに、アレクシスは驚きを隠せなかった。

エレノアも驚いたような表情をしていたため、これが、リリア嬢の暴走であると察することが出来た。


しかし、なぜ侍女や執事はこの暴挙を止めなかったのか、その疑問は残る。


しかも、リリア嬢の視線から、この申し出はどう見てもこの場のホストであるエレノア嬢にではなく、アレクシスに向けられたものであることが分かった。


(──何か裏があるのか?)


もしかすると全て演技で、エレノアはこの話を断って欲しいと思っているのかもしれない。理由は分からないが、リリアを使い、アレクシスを怒らせ、この話を無かったことに……といった具合で。

それならば、執事をはじめとする使用人がリリアの暴走を見守っていることも納得できた。


しかし、このわずかな時間で、アレクシスはエレノアに興味を持ってしまっていた。

もしもこの話を断って欲しいと思っているのであれば、彼女の口からその理由を聞かせて欲しい──


「私は構いませんよ」


アレクシスは意図の分からないこの茶番に乗ってみることにした。


「アレクシス様──嬉しいわ」


リリアはそういうと、椅子を自ら引いて、アレクシスの隣に座った。令嬢自ら椅子を引くなどあり得ない。

ここはアレクシス……は彼女に椅子を引く気などさらさらないため、執事を待つべきだ。しかも、座った場所も悪い。

おまけに許可も出していないのにいきなり名を呼ばれてしまった──彼女がどこまで非常識な行動に出ることが出来るのか、逆に興味すら湧いて来た。






それから、リリアはお茶会に二度ほど乱入し、アレクシスがシュタイン伯爵家を訪れると必ずと言っていいほどエントランスホールで待ち構えるようになった。


何度も言うが、ここで伯爵令嬢が客を待つのはマナー違反だ。しかも、アレクシスはリリアの客ではない。

伯爵夫妻はリリア嬢のこの行為をなんとも思ってないのだろうか。

予想通り、嫌気がさしてこちらから断るのを待っているのか、リリア嬢をアレクシスにけしかけ、何かあったところで問題にし、この話を無かったことにするという可能性もあるのではないかと考えている。

しかし、後者であればリリアに瑕疵が付くことになる。


そもそもこの婚約話は伯爵本人がアレクシスに持ち込んだ話だ。こちらが無理強いしたわけではない。

政敵でも無いのでアレクシスを嵌める理由もないし、まだ候補の段階であるためこの話は無かったことに……そう言ってもらえれば済む話だ。


アレクシスは、とりあえず、相手の出方を見ることにした。




ある日アレクシスは、「お姉様の準備が整っていないので、私がお相手しますわ」というリリアに、腕を引かれた。

気安く触れないでもらいたかったが、茶番に付き合うと決めたのだ。大人しくリリアについていく。


案内された応接室は窓も空いておらず、お茶の準備もされていない。

すぐに侍女が茶器を持ってきたが、

これにより、伯爵家ぐるみで行われている茶番という前提が揺らいだ。

これがリリアの思いつきによる行動であると、容易に察することが出来たからだ。

そして、それはリリアの話を聞いて、確信に変わった。




「『真実の愛』ですか?」


「えぇ、そうです。『障害』を乗り越え、真に愛し合う者同士の間に実る愛──それは運命の相手との恋! 素敵だと思いませんか?

殿方は真実の愛で結ばれた令嬢のために政略の相手を断罪し、愛する令嬢と結ばれるのです。愛された令嬢はより美しく輝き、二人は幸せになるのです!」


リリア嬢はソファーを移動し、アレクシスの隣に移動して来た。


「私、ずっと『真実の愛』のお相手と巡り会うのを心待ちにしているのです……」


裏があるかと疑っていたリリアは、物語で読んだらしい『真実の愛』に憧れ、暴走しているだけのようなのだ。


まさか、四人の候補が脱落した原因はコレか? コレにまんまと篭絡されてしまったと──


万が一これが伯爵家ぐるみであるならば、何を考えてのことか、アレクシスは確かめなければならないだろう。このまま意図の分からない茶番に付き合うのは危険だ。


「──リリア嬢……」


髪には先日エレノアから奪ったコサージュが挿してあった。侍女が潰れた花を整えたらしいが、少しの歪みを残している。


リリアのこれが演技ではないだろうことは、エレノアの反応から分かっていた。

しかし、元々の性質もあるだろうが、物語と現実の区別もついていないうえに、すべてを自分の都合が良いように解釈する。


バカな子ほどかわいいとは言うが、これでは伯爵家にとって害にしかならない。

伯爵がこれを野放しにしている意図はなんだ。






その日の帰り、アレクシスはエントランスホールで執事に耳打ちした。


「ご令嬢方には知られないように、シュタイン伯爵と話がしたいんだが、任せていいか?」

「──かしこまりました」


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