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あなたの『真実の愛』、利用させていただきます  作者: Debby


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16 まともではない妹

「君が『真実の愛』とやらにあこがれを持つのは勝手だが、何故愛し合っていることが前提で話が進んでいるんだ?

そもそも君と私が結ばれるなどあり得ないのだと、先日説明したはずだ。

それに再三家名で呼んでいただくよう伝えもしていたはずだ」


「アレクシス様も私のことをリリアと呼んでくださっているではないですか。愛し合うもの同士、名を呼び合うのは普通のことでしょう?」


「だから君と愛し合った覚えはない。

──君とはもう会うこともなくなるだろうが、今後はシュタイン嬢と呼ばせてもらう」


「「え?」」


会うこともなくなる?

ヴァルハイト様の言葉に、リリアだけでなく、わたくしも驚いてしまいました。


ですが、急な突き放しですが、これまでリリアと過ごした時間を、ヴァルハイト様はどう説明するおつもりなのでしょうか。


「だから、そんな演技はいらないのよ。私がこの伯爵家を継ぐことになるんだから」


リリアはヴァルハイト様の後ろに立つわたくしを見ると、「ね、お姉様」と、明るく問いかけてきました。

……恋は病であるといいますが、リリアは心を病んでしまったのでしょうか。いつ、どのようなタイミングで発症したのかはわかりませんが、今のリリアがまともではないことはわたくしにも分かりました。


もう、ヴァルハイト様の言葉すら届かないようです。



「あなたに領民の命を預けることなど、何が起ころうと出来ません!」


わたくしはリリアを睨み付けるように告げました。語気が強くなったのは、そうしないとリリアが恐ろしくて、会話など出来そうになかったからです。


ヴァルハイト様は身を挺してわたくしを守ってくださいましたし、とりあえず我が家の使用人も多数いるこの場では、リリアに与(くみ)してシュタイン伯爵家をどうこうしようということは考えていないようですので、後程お話しすることにして、今はリリアです。


「そもそもわたくしに何かあったとしても、親族の中から相応しいものが選ばれます。あなたがこの家を継ぐことは天地がひっくり返ろうとも無いでしょう」


両親もまだ若いですし、幼子を養子として伯爵家に迎え、教育を施すという手段もあります。

血筋だけを重要視して、学ぶことを放棄していたリリアに伯爵家を継がせることは、絶対にあり得ません。


「エレノア嬢の言うとおりだ。

それに、シュタイン嬢、君は今回のことでセヴェルス修道院に行くことになるだろう」


セヴェルス修道院は問題を起こした貴族令嬢が入れられる厳格で有名な修道院です。

問題を起こしている貴族令嬢は、社会的に死んでいるも同然です。

当然一度入れば出ることは叶いません。


今回のことを考えるとリリアの行く先として妥当ではありますが、何故それを他家の令息であるヴァルハイト様がおっしゃるのかが理解できません。


「アレクシス様! セヴェルス修道院なんて、なんでそんなことを言うのですか!?」


「君のやったことは殺人未遂だ。しかも後継の座を奪うために嫡子の命を狙った犯行だ。

伯爵家から犯罪者を出すわけにはいかない。

君をセヴェルス修道院に入る以外、シュタイン伯爵家を救う手立てはない」


「──なにを言っているの? お姉様は『悪役令嬢』だもの。断罪は成されて当然なのよ。それに、私はあなたと添い遂げるために──」


「何度でも言うが、俺は君と愛し合った覚えはない。


この件に関しては、早々にシュタイン伯爵と話をつけている。君の修道院行きも、当主である君の父君の判断だ。


──シュタイン伯爵が戻られるまで、シュタイン嬢を自室に閉じ込めておいてくれ」


ヴァルハイト様が、そう執事に命じました。


リリアが何度もヴァルハイト様の名を呼び、手を伸ばしましたが、彼がその声に答え、その手を取ることはありませんでした。

リリアはそれでもヴァルハイト様のおっしゃっていることが未だ信じられないようで、なお、彼に訴えかけました。


「私たち、出会った時からお互いに惹かれ合っていたじゃない……」


「出会ったとき……?」


リリアに言われ、ヴァルハイト様はリリアと初めて会った日の記憶を思い起こしておられる様でした。

そして、なにか思い当たることがあったようで、苦虫をかみつぶしたような顔でおっしゃいました。


「あんな貴族の常識から逸脱した言動の令嬢の、どこに惹かれる要素があったというんだ?」


「そんな……」


「姉であるエレノア嬢を殺そうとしておいて、普通に話しかけられるその性根は非常に危険だ。──その様な者を次期女伯爵であるエレノア嬢の住まう伯爵家に置いておくことは出来ないし、このことが明るみに出れば、シュタイン伯爵家の汚点となるだろう。


家名に傷が付く前に令嬢を修道院に送る──貴族家では良くあることだよ」


ヴァルハイト様の事務的な物言いに青ざめたまま、リリアは執事と家僕に連れていかれました。


他家の子息であるヴァルハイト様の命で執事が動いたということは、ヴァルハイト様の話は本当のことなのでしょう。


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