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天下の鍵は海にあり!~対馬から始める交易国家運営録~  作者: ワタツミ
第三章 九州争乱編

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53/72

51話 伝播

第三章突入です。

引き続きよろしくお願いいたします。


初めての執筆となります。

時代考証などが甘い部分がありますが、エンターテインメントとしてお楽しみください。


頑張って更新頻度を上げていきます。

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ほのぼの系も書きたくなり、2作目も始めました。

箸休め的な更新になりますが、歴史物と一緒に読んでいただけると嬉しいです。


氷が解ける音をきく-転生バーテンダーの気ままなスローライフ-

https://ncode.syosetu.com/n6126mb/

塚崎城の門が開かれ、粥が冷え切った兵たちの腹を満たし始めた頃。

北の街道から、僅か十数騎の供回りを連れただけの一団が、悠然と馬を進めてきた。


————————————————————


佐伯利興(さえき としおき)

漆黒の陣羽織を纏い、無駄な装飾を排した実用本位の具足。

後藤貴明(ごとう たかあき)は、城門の脇に立ち、その男を射抜くような視線で見据えた。


この利興という男からは静謐さと、人を透かし見るような底知れぬ圧力を感じる。


利興は貴明の正面で馬を止めると、軽やかに地面に降り立った。


「後藤貴明殿か。城門を自ら開けたその英断、まずは敬意を表したい」


利興の声は低く、しかし驚くほど澄んでいた。

感情の起伏が削ぎ落されたその響きは

貴明に「この男の前では虚飾は通用しない」という直感を抱かせた。


「佐伯利興殿、初めてお目にかかる。」

貴明は慇懃に一礼した。


利興はその姿をみて、口元に笑みを湛えて返答する。

「戦場には出ず、今頃かと思われるかもしれんがご容赦いただきたい。

 私の仕事は...そうだな皆が渡った川の向こうに、いかにして道を作り、富を流すかを考えることなのだ。

 ご決断下された想いは決して裏切らぬ。安心なされよ。


利興はそう言い残し、迷いのない足取りで城内へと入っていった。


————————————————————


城内の一室。

かつては後藤家の軍議が開かれていた広間に、利興、利繁(とししげ)、そして貴明の三人が車座になった。


利興は、持参した巨大な地図を畳の上に広げた。

それは、従来の国人領主たちが簡易で書くような領地の境界を記した地図ではなかった。

港、街道、水源、そして銀山と交易経路が色分けされた、いわば富の脈動を記した図面である。


「貴明。お前の最初の仕事は、塚崎の民を豊かにすることだ」

臣下の礼をとる貴明への、利興の口調はもはや遠慮がない。

そうして地図の一点を指差した。


「……戦ではないのでしょうか」


「弱兵のうちに、龍造寺は倒せん。

 今日、対馬から運ばせたのは食うための米だけではない。

 最新の農具と、塩害に強い種だ。さらに、武雄の山中にある未開の地を拓くための技術者も連れてきた」


貴明は、呆然と利興を見た。

城を落とした直後の大名が、真っ先に語るのが種と農具の話だとは、誰が想像できただろうか。


「……本気で言っておられまするのか。

 利興様は、本当にこの肥前を……いや、九州を如何なされるおつもりか。

 大名たちが奪い合うこの地で、一人だけが耕し、豊かにされるというのか」


「奪うだけでは、いつか民を食い潰す。

 私の望みは、この日の本全体を、民が飢えずに暮らせる巨大な仕組みの中に置くことなのだ。

 そのためには、龍造寺隆信(りゅうぞうじたかのぶ)をはじめ、奪うことしか頭に無い旧権力の化身どもを排除せねばならん」


利興の瞳に、静かな光が宿った。

「貴明殿。貴殿の領地が落ち着きを取り戻した後は繁の補佐として大村を切り取っていただきたい。

 交易取引の付き合いがある松浦と接触し、南蛮船を招致し得る港を確保せよ。

 そこから入る富が、龍造寺を絞め殺すための資金となる」


「龍造寺を……金で締め上げるので」


「仕組みで滅ぼすのだ。

 其方が槍で敵を崩し、私が富で背後を断つ。どうだ、其方の誇りはこのはたらきに耐えられるか?」


貴明はしばらく黙り、やがて噴き出すように笑った。

「……失礼、いやはや恐ろしい男だな。降伏が正しい決断であったようだ」


貴明は腰の刀の柄を叩いた。


————————————————————


夜。利繁と貴明は、並んで武雄川の土手に立っていた。

城内では佐伯の兵たちが、後藤の兵たちに対馬の干物や、新しい槍の扱いを教えている。

和睦から僅か数時間で、両軍の境界線は曖昧になり始めていた。


「貴明、降伏を決めた真の決め手は何だった」

利繁が、ふとした風のように尋ねた。


「……二日目の夜だ」

貴明は川面に映る月を見つめた。


「民の暮らしと、俺の誇りを天秤にかけた。結果、民の暮らしが勝ったのだな。

 負け戦がわかっていて、そこに理由を求めたこともあっただろう

 利繁殿、私は其方に破れて、誇りを傷つけられたとは思っていないぞ。」


利繁は、その言葉を噛みしめるように頷いた。



冬の水音が、暗い夜に流れ続けた。

互いに命を懸けた男たちが、今夜は同じ川を眺め、一つの目的に向かおうとしている。


対馬から壱岐。壱岐から名護屋。名護屋から怡土。怡土から武雄。

点が繋がって、線になった。

この線が面となり、肥前全体を覆うとき——もはや龍造寺隆信が暴れる余地すらなくなるだろう。


貴明はその夜、そのことを初めて考えた。

自分が今、その巨大な盤面の一点になったのだということを。

川の音が、変わらず流れていた。

さて、本日は少し実験をしています。

普段は1話=5000文字前後なのですが、本日は1話=3000文字前後で更新回数を多くしています。

皆さん、どちらが読みやすいでしょうか?

教えていただけますと幸いです。


(更新多いと、タイトル考えるの大変&1日の総文字数は増えている(T_T))


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