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天下の鍵は海にあり!~対馬から始める交易国家運営録~  作者: ワタツミ
第一章 対馬転生編

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23話 鎮圧

初めての執筆となります。

時代考証などが甘い部分がありますがエンターテインメントとしてお楽しみください

夜が明けると同時に、佐須勢が動いた。

————————————————————

津奈は街道の正面に五十人を展開していた。

互いに睨み合う形で陣を敷いて一夜。

夜明けと同時に、佐須盛廉は陣を前進させた。

六十三人が隊列を組んで道を降りてくる。先頭では盛廉自身が馬を飛ばしている。

津奈は自分の手勢に静かに指示を下した。

「受けろ」

————————————————————

最初の激突は、道の中ほどで起きた。

佐須勢の前衛二十人が、全力で津奈勢の前衛にぶつかる。

最初の一合で、双方それぞれ一人が地面に倒れた。

盛廉の指揮は、力押しでひたすら突き進む選択をしたようだ。

事実、こちらの五◯は押されている。一度前線を後退させた。


遮二無二押してくる佐須勢を前に押されているが、崩れてはいない。

「左翼、前へ」

左翼の十五人が、佐須勢の右側面に動いた。

佐須の陣がその動きに気づき、右翼に人間を割く。

前衛の圧力がわずかに落ちた瞬間——

「かかれ!」

前衛が踵を返し、総力で前進を始めた。

————————————————————

戦況は乱戦である。

佐須の陣は崩れる気配がないが、こちらも崩れない。

刀が飛ぶ。刀を手放した者は体当たりを仕掛けている者もいる。

地面に倒れた者を味方が踏み越えて前に出る。


佐須勢は止まれないのだ。宗家に反旗を翻した事実は晴康の名によって全土に報せが走っている。

力で盤面を覆すしか生き残る術はない。


佐須盛廉が前に出る。

六十三人の先頭に立って、刀を振るう。

腐っても守護代として三十年、この島に君臨してきた男の矜持を見る心持ちである。

津奈の前衛の一人が、胸を打たれ血が吹き出す。。

盛廉が前に出るたびに、津奈勢は後退を余儀無くされている。

(まずい)

自身も自ら前に出る。

盛廉と向き合った。

「邪魔をするな。

儂は新参者に誑かされた晴康殿を解放するのだ!そうすればこれまでの穏やかな対馬ではないか!」

「愚か者が、すでに時代も民の心も変わっているのだ」

盛廉は呟きを終える前に踏み込んできた。

————————————————————

津奈と盛廉が向き合う間にも、道の両脇では乱戦が続いている。

五◯対六十三。数では鎮圧軍が劣っている。


しかし津奈勢の五◯は既に壱岐攻略で実戦を経験していた。

1度死地を経験をした兵の動きは段違いである。

崩れ始めた時、乱れが生まれた時の対処は迅速で正確であった。


盛廉が率いている兵たちも各々腕は立つ。

しかし小競り合いや喧嘩のような経験はあれど、集団での実戦は初めてなのだ。

軍の体裁すら保てていない。

事実、力押しで多少押し込まれているが組織立っての乱れには繋がっていないのだ。

自分の実感はじわじわと差に現れ始めていた。


佐須勢の右翼が押し込まれた。一人が刀を失い逃走する。

その隙を津奈勢の左翼が突く。。

右翼が崩れたのを見て、佐須勢の後衛から数人が防ぎに動く。

右翼を補おうとしたその動きが、陣全体の密度を下げた。

前衛が薄くなった。

その薄くなった前衛に間髪入れずに津奈勢が突っ込む。

佐須勢に動揺が走る。浮き足立つ軍勢は背を見せ始めた。

————————————————————

その頃合いになって後方では盛円が動いた。

事前に話をつけてあった後衛の五人が浮き足立つ軍勢に襲いかかる。

後詰を予定していた味方から襲いかかれた佐須勢は、もはや戦どころではない。


数的有利を逆転された上での挟撃である。

さらに進発を始めたはずの豆酘崎からは火の手が上がる。

海路を夜通し進んできた利繁、康範の壱岐勢三〇〇が、下県の近くの港に上陸し退路を断つ役割を担った。


火の手を確認し、三方向から同時に圧力がかかる佐須勢は戦意を失った。

逃走を図り山の斜面を駆け上ろうとした者は盛円が斬って捨てた。


その姿を確認すると刀を置き、降伏を願い出る者が現れる。

進退窮していた者たちは我先にと刀を捨てる。


しかし——佐須盛廉はなお、太刀を構えたまま津奈と対峙する。

「其方の負けだ。刀を置け」


盛廉は答えない。

ひとしきり周囲に目を遣る。従って来た者たちは次々と刀を置いている。退路はない。

呼びかけに応じないまま、前方に踏み込んだ。

————————————————————

盛廉が踏み込み、津奈が受ける。

膂力では盛廉の方が上だが、津奈は受けた刀を滑らせながら体を開く。

盛廉の刀が空を切った。

体勢を崩し、がら空きになった胴へ向けて...

一閃、太刀を横に薙ぐ。


上半身を失った肉塊が崩れ、血飛沫が上がる。

周囲の戦いが止まった。

数瞬の沈黙を経て、津奈勢から勝鬨が上がった




————————————————————

降伏した残兵たちを収め、津奈勢を吸収した利繁は津奈と康範を伴って

国府の利興のもとに報告に向かった。日は頂点を過ぎて傾きかけている。

「謀反人、佐須盛廉を打ち取りました」

「盛廉は」

「……津奈殿が止めを」

利興は無言のまま頷く。


追討を命じた晴康様は、首を奪るところまでは求めてはいなかっただろう。

——報告を受ける限り、佐須盛廉は降ることを拒んだようだ。

「死者は」

「双方合わせて十五人。死傷者は三十人を超えております」

「わかった」

「盛円殿が後詰を動かしましたな。それが決め手になりました」

「盛円に礼を言ってくれ」

「はっ」


「……晴康様への報告は」

「今夜、俺が行こう」

「お伝えはどのように...」

「ありのままをお伝えするしかあるまい。」

————————————————————

【山本康範】 天文十八年・秋 厳原

佐須盛廉、討死。

その一報が、康範の中に重く響いた。


死者は十五。

利興が万全を期した算段の結果として、十五人が逝った。

おそらく別の者の絵図であれば家中は割れ、島内は長引く権力闘争の場と化しただろう。


明らかな負け戦と悟っても、激しく抵抗した佐須盛廉と

最期まで付き従った五名には敬意を払うべきだと思った。


冷遇を受けていた上県の領主として、交易の不正で私腹を肥やしていたことを差し引いても

この対馬の守護代を三〇年つとめた男である。


その男の消えた今、この島はどこへ向かうのか

あの兄弟がどう収めるのか

胸を躍らせる自分がいた。

————————————————————

その夜、利興は晴康を訪ねた。

「謀反人、佐須盛廉を打ち取りました」

「討ち取った...か」

「佐須盛廉は降伏の呼びかけを拒絶。津奈殿の手により首級を挙げられたとの由」

晴康は長い間、黙っていた。

「……あいわかった」

「佐須に付き従った者どもは武装を解き、下県に戻らせます」

「それがよかろう」


「守護代職は——どうされますか」

晴康はしばらく考えた。が、答えずに続けて指示を出した。

「盛廉の弔いは儂が行おう。儂を当主に据え、守護代として三十年この島を治めた人間でもある」

「はい」

晴康は目を閉じた。

「……今夜は眠れそうにないな」

「私も眠れないと思います」

「……それでいい。この先、其方には今日のような夜が増えるだろう。その度に眠らずに己と語ると良い」

利興は部屋を出た。

廊下で、しばらく立ち止まった。

秋の風が、冷たかった。

————————————————————

利興の居室には利繁が待っていた。

「終わった」

「……終わったな」


「次は——博多か」

「そうだな。だが、すぐには動かん。壱岐は領有したばかりだし、晴康様のお体も心配だ。

 しばらくは対馬を落ち着かせつつ、力を蓄えよう」

「晴康様は——今夜の話を、どう受け取られた」

「……今夜は眠れそうにない、とおっしゃっていたな」

と利興は続ける。

「俺も眠れないだろう。今回、俺は数年をかけて準備を進めてきた。

 追討に関しても絵図は描いたが、実戦に立ってくれたのはお前たちだ。

 国府で報告を待つだけの俺の指示で、お前たちは戦い、そして死傷者も出ている。

 その事実と向き合う夜にしようと思う」

「……耐えられるかな、兄貴」

「耐えて見せるさ。そうでなければ、次に進めない」

「今回の俺たちの行動は——正しかったんだろうか」


利興は少し考えた。

「正しかったかどうかは、主観でしか分からない。

 しかし——不正で私腹を肥やしていたことは事実であるし、俺たちが政務をになった方が対馬は豊かになる。そう思うしかない。それを実現するしかない。と思う」

「そう思うしかない、か」

「そうだ。眠れない夜はある。しかし——朝になればまた動きはじめるぞ」


————————————————————

【佐須盛円】 天文十八年・秋 厳原

その夜、盛円は一人で兄の亡骸に向き合った。

後詰の二◯を動かしたのは、自分である。

その二◯が離反したことで挟撃の形になった。

その戦況の中で兄は逃げ場を失い、降ることを拒否した。降らなかった兄は武士として逝った。

(俺が兄を追い込んだ)

自責の念と後ろめたさは少なからずある。しかし——別の選択肢はなかった。

俺が裏切ることがなくとも、利興は兄を追い詰め失脚を図っただろう。

それはわかっている。

生前は軽蔑を感じていた兄の政務、私腹を肥やすことを目的とした交易などより

利興が対馬の政務を担えば民は豊かに暮らせるだろう。

それもわかっている。


「……兄上」

盛円は一言つぶやいた。

返事はなかった。兄はもうどこにもいない。

————————————————————

翌朝、利興は盛円の元を訪ねた。

「盛円殿」

「はっ」

「交易の不正および、反乱への関与は佐須勢への優位を決定づけた手柄により不問とする。

これからも、この対馬のために働いてもらいたい」

「寛大な処置に感謝いたします。」

「ついては交易の管理を任せたい。対馬と壱岐、博多との荷の流れを経験を活かしてまとめていただきたいのだ」

「……守護代職は」

「晴康様のご意向により、しばらく空席とのことだ」

「……わかりました」


利興は少し間を置いた。

「昨夜は、眠れたかな」

「一睡も出来ませんでしたな」

「私もだ」

二人はしばらく言葉を発さず視線を交わした。

秋の朝の光が、部屋に入ってきた。

累計PV数がどんどん伸びており、非常に嬉しいとともに身が引き締まる思いです。

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更新の励みになりますのでどんな内容でもいただけると嬉しいです。


個人的には人物の解像度が粗いと思っており...

今後頑張ります...

コツとかあったら教えて欲しい...

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