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喜劇・魔切の渡し  作者: 多谷昇太
第二場 和子の自宅

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悪魔の捨て台詞

和子「ほら、お父さん、起きて。立って!……あ、ちょっと待って。お客さんの目が……(上手に向かって)ちょっと黒子さん。幕を引いて!」

黒子「はい」


黒子、上手から下手に引割幕を引きながら登場。


黒子「(天使と悪魔、観客に)風紀上、ここまでです」

悪魔「そりゃそうだ。第一見たくねえよ」

天使「んだっぺ。あとはご家族にお任せするだ。行くずら。(黒子に)黒子さん、まんずご苦労だっちゃ」


黒子、引割幕を和子宅いっぱいまで引いて(下手の通り側はそのまま)観客にピースサインをしながら下手に退がる。


天使「まんず、これでよかっぺさ。んだば悪魔、おらたちゃ矢切の渡しまで帰るべえよ。舟さ、心配だっぺ?」

悪魔「バカ。俺たちの船が人間に見えるかよ。触れるかよ。そんなことより、まあ、ちょっと待て。俺は和子に一言云い残しておかなきゃならねえ。(引割幕に向かって)おーい、和子。待ってろよ。いまお前の大好きなお米婆を、お光様を連れて来てやっからよ。どんなお光様だか、お前に心眼があったら見せてーや。へへへ。良夫と為子も楽しみにな。これから21日間、和子やこの家に取り憑いて、メッタメタにしてやるからな」

天使「まんずハア、あんなこと云って……」

悪魔「文句あるってか。(懐から鎌を出して)おい、俺様は人間の生殺与奪を握っている男だぜ。これで以ってな。お米でも誰でもだ」

天使「(生唾を飲んで)……出すなっちゅうの。このお……」

悪魔「いっぺんてめえのも切りてえんだがな。いつまでも付き纏いやがると……」

天使「やるってか。そったらばおらも出すけんのう。よかか?(懐から十字架を垣間見せる)」

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