[二章-32:斉藤一馬]
御剣の気迫に一馬はしばらく立ち上がれなかった。そして、悔しさが全身を覆う。あれでもかなり手加減しているのだろうと分かっているからこそ一撃たりとも当てることができず追い込まれていく自分が悔しかったのだ。
そんな一馬を見下しながら御剣は
「……また、戦う意志が戻ったなら呼びに来い、それまでは一人でそこで倒れこんでるなり、一人で修行でもするなりしてろ」
とだけ言って家の方へ歩き去る。一馬は悔しかった、情けなかった、自分の無力さを知ってしまった。そして、少し修行した程度で手加減してくれている御剣に勝てるなんて、高慢な考えであったことを知った。一馬は、悠一が話しかけていることに気付かないほど、落ち込んでいた、涙をこらえていた、自分の無力さを悔やんでいた。一馬はしばらくしてやっと周りを見た。そこには森と、歩き去る悠一の姿だけがあった。悠一が消えていくのを見た後、一馬は叫んだ、名一杯叫んだ、悔しさを情けなさを高慢だった自分への怒りを吐き出すかのように。いつの間にか一馬の頰を涙がつたっていたがそんなことは一切気にならなかった。
「あの時…あの時から俺は何一つ変わってなどいない…俺は変わったと思い込んでいただけだった……俺は変わったと思い込むことで雫の兄であることができたのかもしれない……それがただの自惚れだと知らずに……」
一馬は気づけば周りが暗くなるまでその場で感情を吐き出していた。その中で一馬は決心した、
(今まで変わったと思い込んでいただけだった、だから進歩できなかった。それならば今だ、今から変わればいい、どんなに見苦しい戦い方でも、誰かの真似をしただけでも、なんでもいい、強くなって自分を変えよう)と
そう思った後、一馬はゆらりと立ち上がり刀を作り出し、木に攻撃をした。その刀の刃は殺傷能力が存在した。
あの日についてはまた後日書く予定です。




