[二章-18:小さな探偵の事件簿 後編]
「まじか、服部か…やりそう」
と言う鈴香。
だが奥から
「違う、今回に限っては俺は違う!」
と言う服部の声が聞こえてくる。
「でもお前、サッカーボール持ってたじゃないか」
と先生が言う。
「違う、入口に転がってたのを拾っただけだよ」
と必死に無罪を主張する服部。
雫は
(こんなに必死に違うって…にぃなら助けるかな)
と考えながら教室の中まで進む雫。
教室をぐるりと見回す。窓に空いている穴はパッと見た感じ直径20㎝程度。ガラスは教室の中へ入り込んでいる。服部の居る場所と割れてる窓ガラスはちょうど教室の対角線上だ。
「…何かおかしい」
と呟く雫。
(にぃ、だったらどうするんだろう?)
と考えながら何がおかしいと感じる原因なのかを探す雫。
(今までのにぃとの能力強化共有で得てきた情報、にぃの考えをフルに使えば…)
「……わかった!」
と頭の中で少し解決して喜んだあまり大きな声が出てしまった雫。
「何がわかったんだ?」
と先生に聞かれる。雫は言うかどうか悩み始める。
(もし、違っていたら…でもにぃなら…)
「あの…ガラスって何で教室の中で飛び散ってるのですか?」
と尋ねる雫。これは一馬自身の窓の割れたところを見たと言う経験から思いついたものだ。それを聞いた、先生は確かにと言いそうな顔をした後、
「外から割ったからじゃないか?そうだな、外で遊んでいて割ってしまったので急いで教室に戻ったとかな」
と先生。もっともな答えなような気がするが雫は納得できず
(こうなったら一つずつ確かめていくしかない)
と思い
「ボール貸して」
と言いながらボールを奪い取り穴に近づくサッカーボールはその穴を通ることが出来なかった。サッカーボールは一回り大きかった。
(やっぱり、…犯人はあの人?でも本当に?)
と思う雫。
「サッカーボールで割ったわけじゃないのか…」
と考え始める先生。
雫は頭の中で先程までの情報を処理し始める。
(やっぱり、そうなるか…)
「先生、聞いてください」
と雫が言う。先生も先程までの行動からまた新しい情報が得られるかもと考えてたのか真剣に聞こうとしている。
「犯人は古谷くんです」
といきなり犯人を言った雫に、先生も生徒も
「それはないだろう」
とか
「あの真面目な古谷がボール遊びなんかするか?」
とか言い始めた。
「そうだよ、だいたい先に服部くんがいるのにどうやって窓が割れるんだよ」
と言う古谷。他の人も うんうん と頷く。
「何でみんな、授業後に割れたとおもっているの?」
と雫が尋ねると
「そらそうだろう、授業が始まる前に窓が割れたのを見た人はいないんだから」
と答える古谷。しかし周りの数人は疑問を持ったようだった。
「でも、今日は体育があった、みんな20分前位に更衣室に行ってた。しかも美咲が授業の5〜4分前に割れる音を聞いたって言ってる」
と雫が言うと先生が
「本当か?」
と尋ねてきて、美咲はすぐに頷いた。
「先生が授業を終わりに傷ついたドッジボールがあるって行ってた。ドッチボールならサッカーボールより一回り小さいから窓の穴も通り抜けられる。これでボールの傷付いていた理由が証明できた」
と雫が言う。これも両方を比べて持って見たことのある一馬の記憶から考えたものだ。
「俺がやったとは限らないじゃないか。何で俺なんだよ!」
と不機嫌そうに尋ねる古谷。
「それは古谷くんが遅れてきたから」
と雫が答える。
「遅れてきたから怪しいのはわかるけど、だからって犯人はおかしいだろ!」
と古谷。
「でも古谷くんはなぜかトイレのない倉庫から走ってきたのに、トイレで遅れたって言ったよね」
「そうか!そのタイミングで窓を割ったボールを隠したのか」
と先生が言う。周りの疑惑の視線が全て古谷に集まる。
「そうだよ、俺がやったんだよ……。でも窓を割るつもりなんてなかった。僕だって遊びたかったんだ!でも遊びに行くと…何で勉強してないのってわざわざ聞きにきて…勉強してこいしてこいって遊ばせてくれないじゃないか!…うっ…だから僕は一人で…うっうっ……一人で遊ぼうとしたんだ!そしたら間違えて割っちゃって…うっ…で誤魔化せるかもと思って隠しちゃったんだ…うぁぁぁぁん」
と泣きながら答える古谷。
「雫、よくわかったな」
と先生が言う。
「えへへ〜、にぃのおかげ」
と雫は小さく呟く。
———帰り
「雫ちゃん帰ろ〜」
と言うひなの声が聞こえてくる。
「あれ?お兄さんじゃないの?」
と真っ先に聞いてきたのは鈴香。
「うん、暫くの間だけだけど」
と雫が答えた。
「今日なんか名推理したみたいじゃん、すごいね雫ちゃん」
とひなが褒めると
「今までのにぃとの能力強化共有のおかげだよ」
と雫は答える。
(にぃ、やっぱりすごい)
と改めて雫は思った。
「にぃ、早く帰ってきてね。待ってるから」




