[一章-21:結末?《Outcome》]
一馬を見る宇佐美の目は実験動物の失敗作を何の感情も持たずに処分する研究員の目をしていた。いつもと違う宇佐美の声に固まる一馬。
(嘘だろ!?いや、ドッキリか?違う、ドッキリにしては腑に落ちないところがある。まず、1つ目は、俺が宇佐美を追う理由が不確定要素過ぎることだろ、連絡をとっていたそぶりも無いしわざと当てた線も薄いし、2つ目は、ドッキリの為にこんな本格的な研究室を準備するかどうかだ。)
と一馬の思考が加速する。
動きが無いまま数秒の時が過ぎる。
「ごめんね、でも見られちゃったから」
と言いながら注射器を手に持つ宇佐美。注射器の中身は見えないがやばそうなことは声からわかる。宇佐美が走って接近してくるのは見えていてもを状況を飲み込みきれず動けない一馬。ドン!と音が鳴り注射器が突き立てられる。
〈能力の優と劣 完〉
………………………と冗談はほどほどにしておいて、話を戻そう。
実際には注射器は突き立てられてはおらず寸前で止まっていた。
「ははは〜、どう?びっくりした?」
といつもの声に戻り楽しそうに尋ねる宇佐美。彼女は注射器が空であったことを示している。
「さすがに、びっくりしたよ、女優いけんじゃないか?」
と冷や汗ダラダラで必死に考えた冗談を織り交ぜ話す一馬。まあ、騙されるのは無理のない条件ではあった。その声を聞きながら宇佐美は血の入った何かを機械の中に入れ起動させる。なにをしているのか不思議そうになる一馬が見ていると、それを察したように宇佐美が
「血を貰った理由だけどね、話を聞いてみてやっぱり能力が発現するかどうかは遺伝情報が関わっているけれど、発現した能力の強さに関わっているかは微妙なのよね〜。だから血から少しでも情報が得られればと思って」
と言う。
現在、能力の発現するかどうかはほとんど遺伝によるものだということは周知の事実である。しかし強さについてはよくわかっておらず、まだ研究が続けられているとかいないとか。
宇佐美は話を続ける。
「この機械は液体の情報を自動的に分析するしてくれるのよ」
一馬の疑問がますます強くなっていき、
「何で家の地下に研究室なんかがあるだよ!?」
と尋ねる。
「あぁそれはねここはねもともと父のものなのでも今は研究主任として会社の研究室に泊まり込んでるけどね。それでいらなくなったここを借りてるわけ」
と宇佐美が答える。長い間親がいないという点では自分と同じなのかな?などと思う一馬。
「そろそろ、戻らなきゃね」
と宇佐美が一馬の思考遮るようにして言う。一馬は頷き、また宇佐美を追うようにしてついていく。研究室の扉は自動で閉まった。




