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能力の優と劣  作者: 俊
三章:龍の谷の新伝説編
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[三章-23:龍人と悠一]

龍人と悠一二人は睨みつけあう。無という言葉が一番似合う時間が過ぎていく。どちらも相手の手がわからないので相手の出方を伺いあう。永遠(むげん)に続くかもしれないと思えて来るほどの長さの無の時間を止めたのはなるべくはやく終わらせたいと考えている龍人。

「急いでいるのでな、さっさと済ませるぞ」

と面倒くさそうに言う。

「それは、僕も一緒だ」

と即返答する悠一。その手にはすでに剣が握られていた。龍人も刀を鞘から出し刃を自らの方へ向けて構える。それを見て、悠一は一瞬驚きを顔に出した後、不機嫌な顔になる。

「……峰打ち…。はやく終わらせたいと言っているのに舐められたもんだな」

「一馬との約束は守らないとな、今は邪魔者だが友だちなのだろう?」

「一馬をどうやって操っているか知らんが…潰す!」

と悠一が空間転移(シフト)で龍人の背後に回り込み斬りつける。しかしそれは地面から吹き出した龍脈によって弾かれる。近づく悠一を振り向きざまに勢いを使って斬りつける。そのタイミングで悠一がいたのは刀とは真逆の方向。龍脈が吹き出す。悠一は攻撃することなくまた空間転移(シフト)し龍人の死角へと移動し斬りつける。決まった、悠一はそう思った。龍人は剣の動きを見ることなく腰につけた鞘の下を片手で押し込みながら掴み防ぐ。悠一は驚き一瞬動きが止まる。その僅かな隙を逃さない蹴り、悠一は背後に数歩後退する。一気に距離を詰める龍人、迫る刀。

(かわせ……)

悠一は能力防御壁(ディフェンス・ウォール)を展開する。そんなものは勢いをつけた龍人の刀には豆腐に鎹であり、たやすく破壊される。刀が悠一に接触する瞬間、

「空間転移(シフト)!!」

と叫び、龍人の目の前から消える。龍人は悠一が姿をあらわすと同時、いやそれよりも一瞬はやく鞘を背後に押し出す。鞘は悠一が現れると悠一がそれに気付くよりもはやく接触する。状況を処理しきれない悠一に対して拳が入る。その威力は人間の域を超えていた。悠一は地面に数回当たってバウンドする。

(どうやって、空間転移(シフト)先を読んだ?霊体(プリズマ)を回復のために使用を最小限に抑えてやっているとはいえ……強さはおそらく……あいつ、断剣に匹敵…いやそれ以上かもしれない)

悠一は空間転移(シフト)で距離を詰める。龍人はまたも現れるより一瞬はやく移動先に拳を放つ。悠一は空間転移(シフト)後に一瞬生まれる隙のせいでかわすことが出来ず肩に拳を受ける。また飛ばされる。

(まただ、どうやって……空間転移(シフト)先を読んでいるか知らないがこれなら)

と悠一は、また空間転移(シフト)を行う。龍人はまた移動先に拳を放とうとして、別の方向を向く、そこに拳を放とうとして、別の方向を向くを繰り返す。別の方向を向こうとすると同時に、悠一前に拳を放とうとしていたところに一瞬だけ現れ、空間転移(シフト)する。

(乱反射転移(ピンボール)なら、いくら空間転移(シフト)先が読めても、どこかで隙が生まれるはず)


乱反射転移(ピンボール)

転移先を範囲的にして、そこへの連続転移を行う技。これは、悠一のように空間を修復しながら転移できる。短距離無制限転移ができないとよほどの近距離に飛ぶのを繰り返す以外でできない。転移が終わるほんの少し前までどこへ飛ぶか分からないのが欠点ではあるが相手の撹乱には非常に有効である。


龍人の周りを転移し続け、隙を探す悠一。なかなか生まれない隙に少し苛立ちを覚え始めた時急に転移が止まり、木に叩きつけられたことに気付く。

「…はっ?」

目の前にいるのは龍人。転移は止まっている。視界は龍人によって転移には不十分な状態である。だがそんなことは悠一にはどうでもよかった。それよりも重要なことはなぜ、転移が止まり、木に叩きつけられたかだ。乱反射転移(ピンボール)は連続転移が実行不可能になる要因つまり、姿を現した瞬間に攻撃を受けるか、空間断裂が起こるかぐらいしかない。後者は空間系能力者でないとありえない。つまり、一瞬姿を出した瞬間に攻撃を受けたことになる。

「ありえない、どうやって」

頭で処理できなくなり、言葉に出てしまったことに少し後で気付く悠一。

(瞬間的に、かなりの威力の全方位攻撃を僕が姿をあらわすタイミングに合わせて放ったのか?そんなこと……できるのか?)

「貴様が瞬間移動で姿をあらわすタイミングは大体一定だったから、そこに合わせて龍脈は爆発させたのさ」

と龍人。悠一は立ち上がり反撃をしようとした、しかし体が動かない。よく見ると自分は鎖にぐるぐる巻きにされていた。悠一は1つ大きなため息をついた後

「…1ついや、2つ教えろ。まず1つどうやって、…転移先を読んだ?」

と反撃を諦め質問する悠一。

「簡単さ、あんたの瞬間移動先に龍脈ではない、エネルギーが組み上げられていくのを感じたからそこに注意していたら、見事にそこに現れたわけさ」

と人間ではありえないことを簡単と言ってしまう龍人。それに驚きながらも

「2つ目……本当に一馬くんは自分の意志で行動しているのか?」

と尋ねる。

「…そっちの方が答えは簡単だな、そうだ。どうしても疑うなら、追いかけて自分の目で確かめてこい。この鎖は私が離れたら消える」

と答える龍人。悠一はもう一度ため息を吐いた後、敵意を捨てて

「わかったよ龍人……はやく一馬くんを追いかけて。……ただし、一馬くんをしっかり守ってくれよ。……鎖が消えたらすぐに追いかける」

と告げる。龍人は真面目な顔で

「任せろ、龍の柱のところで一馬と待っているさ」

と言って走り出す。悠一はその背中を眺めていた。空間転移(シフト)で今すぐにでも抜け出せることを忘れて。

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