[三章-22:阻む者]
———神谷悠一
優能力者学園 学園長の孫、高校部 校長の息子 など……。優能力者学園に少なからず影響を持つ、親バカならぬ孫バカの力を大きく受けている。一馬に興味を持ち、友人となる。一馬が完璧超人は?と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは悠一だ。
その神谷悠一が今、目の前にいる。
———数時間前
悠一は、汗まみれで恐怖に怯えた目で地面を見つめる。荒い呼吸を整えながら、全身で自分が生きていることを確認する。
……大丈夫、首もしっかりついてる。強化武器がなかったとはいえ逃げる事になるとは……
悠一は、断剣の首をめがけて振られたダガーを空間転移で回避した。長距離転移は初めて来る場所なのでできなかったし短距離転移も断剣によって視界を塞がれできなかった。ではなぜ悠一は生きているのだろうか?………答えは簡単、と言いたいがそうもいかない。悠一がダガーが首にあたり命が失われる直前、霊体に視覚譲渡させ、そこへ普通の短距離転移では不可能な距離だが移動した。短距離転移の移動可能距離、目視範囲とは実に複雑な意味を持っている。例えば、どんなに遠くが見えていても、山などの木の上には転移できない、理由は転移先に、術者の空間と同程度の地面が必要であるからだ。ぼやけているところも、目視範囲とはみなされない。だが、視覚譲渡のように一時的でも完全に悠一の視覚となっていればそこへ短距離転移ができる、視覚共有はあくまで共有側のものの視覚なので使えないだから視覚譲渡で一時的に悠一のものにし転移して生き延びた。
悠一は敗北した自分に怒りを覚えた、
「自分の実力を過信しない…戦闘において絶対に忘れてはならないことではないか。僕の力をしっかり使いこなして、どんな相手でも、全力を尽くすことで…僕は二度と負けない」
とそう自分につぶやきながら、強くある覚悟を決めた。
———数分前
悠一は一馬を探しながら、先生の捜索を交わしていた。
(見つかって、連れ戻されるなんてごめんだ。僕が一馬くんを助ける)
霊体もフル稼動で捜索に勤めている。いくつかの弱い霊体は限界が来て、消えてしまっていた。悠一の持つ中で最強の霊体でさえ、もって後1時間と少しでギリギリである。悠一にも焦りが現れ出す。どうしたものか、そう考えると同時に霊体のひとつから高速で移動する何かを見つけたことが伝わってくる。こんな場所で高速移動を出来るとすれば、断剣の仲間か、一馬だ。そう思って悠一は霊体の見つけたと言うところへと走り出した。
そうして見つけた一馬に対して、
「帰ろう、みんなも心配しているはずだ」
と優しい目を向ける。ただその目は他の人には向けられることはなかった。一馬達は数分ぶりに地面に足をつける。龍人は一馬達の前に立ち、
「誰だ?邪魔されると非常に困る状況なのだが?」
と悠一を睨みつけながら言う。その目は誰もが恐怖で後ずさるほど恐ろしいものだった。しかし悠一も一歩も引く事なく堂々とした口ぶりで、
「父の祖父の学園の生徒を誘拐した。それがバレると困りますよね?」
と尋ねる。周囲は時が凍りついたかのように静寂で、動くことを許さなかった。
「誘拐?馬鹿なことを言うな、一馬は自分の意志で行動している。時間がない、そこを退いてもらおうか」
「ならば、本人に問おう。一馬くんは、自分の本当に意志で行動しているのか?」
龍人との会話の口調をそのままうつしたかのように一馬に問う、悠一。一馬は一瞬その気迫に一歩下がり、言葉に詰まってしまうが
「自分の意志だ。俺は、レイとここを救わないといけない、だからそこを通してくれ…悠一」
とはっきりと悠一にも負けない強い口調で言う。
(ここを救う?龍の谷を?何があったか知らないが………断剣が関わっている事に間違いない。断剣を一馬くんが倒せるわけない、死んでしまう)
「仮にここに危機が訪れているとしても一馬くん、君には救えない……劣能力者の君には」
と後半言いづらそうにしながら強い口調を貫く悠一。龍人はらちがあかないと見て
「一馬達は先に行け、どうせ私のスピードをもってすればすぐに追いつくからな。もし、先に着いたならば、奴らの詠唱を止めろ。喋りを止めるだけでいいそれで時間稼ぎには十分だ」
と言う。一馬はその言葉に驚きながら
「龍神はどうするの?」
と半分答えがわかっている質問をする。
「彼を倒してから、追いかける」
と即答され、一馬は渋々頷き龍人に小声で
「殺さないでよ」
とだけ言って遥とともに走り出す。もちろん竜也も付いていっている。それを止めようと手を伸ばす悠一、しかしそれを阻むように龍脈が地面から吹き出す。龍脈が完全に一馬と悠一を阻む寸前、一馬は悠一にだけ聞こえるように
「これは俺の意志だ」
と言う。




