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【新連載】【エトゥールの魔導師2】エトゥールの養い子〜貴方と手を繋ぎたい〜  作者: 阿樹弥生
第3章 貴方とすごしたい

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(3) 遊戯の達人③

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


現在、更新時間は諸事情によりさらに迷走中です。(土下座)

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「……えっと……」


 ディム・トゥーラは、観測ステーション時代から支援追跡者(バックアップ)としてカイルが起こした騒動の尻(しり)拭(ぬぐ)いをしていた――カイルにはその自覚があった。


「…………僕の尻拭いは今に始まったことじゃないよね?」

「…………お前、開き直るようになったな?」


 ディム・トゥーラは、カイルを睨んだが、その言葉は否定されなかった。


「だが、今回はお前だけじゃない」

「他に誰の尻拭いが…………」

「他に誰のだと?地上に降りている研究員全員のだ」

「………………はい?」


 それは意外な言葉だった。

 ディム・トゥーラは自分の発言に推敲を加えた。


「ああ、シルビアとイーレはのぞいてもいい。とくにシルビアはよくやっている。エトゥールの王妃と治癒師という難しい立場を見事にこなしている。ある意味、彼女も俺と同じ尻拭い(フォロー)役に回ってくれている」


 シルビア・ラリムは高評価だった。

 ディム・トゥーラにあまり褒められたことのないカイルはそれだけで羨ましい案件だった。

 普通にシルビア・ラリムが褒められている。

 なぜ、自分のときは『規格外』という婉曲(えんきょく)表現かつ褒め言葉とは思えないものになるのだろうか。


「ディム、いつから女性優遇主義(フェミニスト)になったの?彼女達をのぞいたら、残るのは男性陣になるじゃないか」

「だからそう言ってる」

「………………」

「まず、世界の番人という得体の知れない精神生命体と同調して、観測ステーションにも戻れなくなった馬鹿が一人。しかも王族と婚姻しながら、隠居生活に突入して貴族の社交義務を放棄している」


 ぐさり。

 カイルは傷ついたが、事実の羅列なので反論の余地はなかった。

 大災厄時から世界の番人と同調しているカイルは、周囲に凄まじい威圧を放っている。カイルの持つ遮蔽(しゃへい)能力を駆使(くし)しても、実の幼い娘が恐怖に怯え、接触を拒絶するレベルだ。

 カイルの事情を知り、耐えうる者しかエトゥール城内にいない。

 ある意味、大災厄で地形的に孤立したため放棄された王都と王城は、カイルの隔離場所として渡りに船ではあったが、新たにアドリーを遷都することになったセオディア・メレ・エトゥールの苦労は計り知れない。


「次にクローン再生時の記憶喪失という重大事故には同情するが、地上で隣国の高級娼館の放蕩三昧(ほうとうざんまい)というメレ・アイフェスの自覚が皆無の降下隊員の馬鹿が一人」

「あ〜〜〜」


 サイラス・リーの当時の状況は確かに噂になっただろうと、隠居生活中のカイルも察することができる。

 大災厄の復興中に放蕩三昧の賢者など非難の対象だし、それはエトゥール王であるセオディア・メレ・エトゥールへの批判材料になりうるのだ。

 復興支援として、食料や生活物資の高速培養で供給しているメレ・アイフェスは、それ以外の面では確実にセオディア・メレ・エトゥールの足を引っ張っている。王妃シルビアが治癒師として活躍中なことが高評価なフォローであることも理解できた。


 不思議とセオディアから文句が伝わってこないのは、なぜだろう。

 世界を滅亡から救ったことに比べれば、瑣末(さまつ)な事案に分類されているのだろうか?


「そして、地上滞在を決めた引きこもりの気象学研究者は、その天才的な器用さをいらない方向に発揮して、本来地上にない便利品を開発発明して、普及するという文明干渉をしている。しかも関係者は止めようとしていない」


クトリ・ロダスのことだ。


「えっと…………」

「科学・機械的冷凍技術や自動走行機能付荷車が存在する古代文明の論文を俺は読んだことがないんだが、これはいったいどういうことだ?」


 共犯者の自覚があったカイルの目が泳いだ。

 だが、積極的に東国(イストレ)の生菓子のために冷凍保存箱を欲して、クトリに製作を依頼したのはシルビアだ。

 そこは減点にカウントされないのか。ずるい。

 カイルの中で、ディム・トゥーラの女性優遇主義(フェミニスト)疑惑が増大した。

 

「そこらへんを統括制御するべき初期探索の責任者が、地上にいるはずだったのだが」


 周囲の温度が冷えた。


「その監督責任者が行方不明だと?ふざけている」


 侍女のマリカは、その怒りの波動に息を飲む。

 一方、ファーレンシアは軽く口に手をあて、別の意味で驚きを示した。


「まあ、驚いた。ディム様がカイル様以外にそんな激怒なさるなんて」


 ディム・トゥーラとカイルが双方複雑な表情を浮かべて、ファーレンシアを見つめた。


「……………………姫」

「……………………ファーレンシア」

「ああ、失礼しました。あまりの珍しさについ本音が……」

「ファーレンシア様、弁解になっていません」


 マリカが小声で注意を促す。


「だって、マリカ、これは本当に珍しいのよ。ディム様が本気で怒っていらして、それがカイル様ではなくロニオス様に対してなんですもの」


 ファーレンシアの天然に近い指摘は、ディム・トゥーラの怒りを霧散させる消沈効果が絶大だった。

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