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【新連載】【エトゥールの魔導師2】エトゥールの養い子〜貴方と手を繋ぎたい〜  作者: 阿樹弥生
第3章 貴方とすごしたい

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(1) 遊戯の達人①

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。 現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

悩みましたが、結局第3章に突入します。

「た、大変です!カイル様っ!ファーレンシア様っ!」


 ファーレンシア付きの筆頭侍女であり、第一兵団長の伴侶であるマリカが珍しく取り乱して、住居区と化している聖堂に駆け込んできた。

 彼女は日課である離れの住人へ食事と極上の東国(イストレ)の酒を届けに行ったはずだった。

 住人は白い猫を模(も)した人語を解する精霊獣(ウールヴェ)だ。


 その正体は500年前にエトゥールを建国した初代王であり、ファーレンシア姫の伴侶であるカイル・リード・メレ・アイフェス・エトゥールの血縁者であるという神話級の存在であることは、限られた者だけが知る機密事項であった。


「ロニオス様が……ロニオス様が」

「あのアル中親父がどうかした?」

「カイル様」


 ファーレンシア姫が夫の暴言をやんわりと嗜(たしな)める。


「カイル様、私の義父にあたる方なので、もう少し呼称に心遣いをいただきたいと思います」

「ファーレンシアはロニオスに甘すぎだよ」

「それは愛しているカイル様の近しき血縁者ですもの」


 カイルはストレートな愛情表現に顔を赤らめた。メレ・アイフェスは妻に弱かった。


 仕えている夫婦の惚気(のろけ)の会話に、マリカは冷静さを取り戻した。

 マリカはそっとファーレンシア・エル・エトゥールに動揺で握りつぶしてしまった紙片を差し出した。

 渡された紙片に目を通したエトゥールの姫は、顔色を変えたがそれは一瞬のこと、すぐにいつもの平静さを取り戻したのは、王族の持つ資質と経験であろう。

 周囲に動揺を悟られてはならない。それは王族としての矜持(プライド)でもあった。

 ファーレンシアは、静かにマリカに告げた。


「すぐにお兄様(メレ・エトゥール)に伝言を。精霊獣(ウールヴェ)を飛ばして、どうするか指示を仰ぎます。準備を」

「はい」

 マリカは深く一礼をして、ファーレンシアの精霊獣(ウールヴェ)に準備をさせるためにその場を立ち去った。


「ファーレンシア?」


 まだ事情の知らないカイルは、きょとんとしている。

 ファーレンシアは短い吐息をついた。

 当事者とも言えるカイルに事情を話すしかないのだが、問題はその後の親子関係の悪化だ。

 加えて英知のメレ・アイフェスともいえるディム・トゥーラは、タイミング悪く天上に戻っている。


 だが、巻き込ませてもらおう。

 兄ならそうするに違いない、とファーレンシアは選択をした。


「カイル様、お話の前にディム様を呼んでいただけますか?お二人揃っての方がいいかと思います」

「呼ぶ?ええっと、精神的に?肉体的に?」


 奇妙な言い回しだが、精霊獣(ウールヴェ)に同調させるか、地上に降下させるかの確認だった。

 わざわざ降下してきて取るに足らない問題だと判断する可能性もあることに、ファーレンシアは気づいた。


「とりあえず、精霊獣(ウールヴェ)に宿っていただきたいのですが…………」

「待ってね」


 カイルは少し目を閉じた。

 地上とはるか天上で、瞬時に対話が可能というメレ・アイフェスの奇跡はこういうときに便利だ、とファーレンシアは思った。


 ほどなく扉がひとりでに開き、隣の広間で侍女達とともに子守をしていたはずの白い虎が入ってきた。

 背中には、きゃっきゃっと無邪気にはしゃぐ幼い愛娘(まなむすめ)であるエイアがもれなくついてきた。エイアは精霊獣(ウールヴェ)の「中の人」が変わったことを、いつものように敏感に見抜いていた。


「ディム様」


 ファーレンシアは虎の精霊獣(ウールヴェ)に向かって、ドレスをつまみ上げ丁寧な正規の礼をしてから近づいた。

 その背中からエイアの小さな身体を抱きとった。幼子(おさなご)は精霊獣(ウールヴェ)から引き離されたことに不満を表明し、愚図る。エイアは虎の精霊獣(ウールヴェ)が大好きで、片時も離れないのだ。


 精霊獣に同調したディム・トゥーラが何かを伝えたのか、エイアの機嫌(きげん)がすぐに直った。

 その様子を見守っていたカイルが嘆いた。


「実の父親である僕がいまだに触れられないのに、ディム・トゥーラは順調に絆を深めるなんて、世の中は不公平で理不尽で無情だ」

『お前の軽はずみな行動の自業自得な結果だ』

「ほんの少しでいいから、同情して慰めてよ」

『断る。ざまーみろだ』


 一人と一匹のいつもと変わらない調子の会話にファーレンシアは、ややホッとした。


『で、姫。俺をわざわざ呼び出した理由を聞かせてくれないか?』


 時間を無駄にしないのが英知を司(つかさど)る導師(メレ・アイフェス)の性格だ。しかもファーレンシアが呼び出すということに、重大性を察している。

 この機知こそ、セオディア・メレ・エトゥールが片腕として欲している理由なのだが、本人はその事実を知らない。

 ファーレンシアは憂(うれ)えたように、再び吐息をもらした。


「申し訳ありません。地上で起きた事件なので、地上人で解決すべき事柄かとは思いましたが、無関係ではないお二人には報告した方がよろしいかと思いまして……」


 いつにない回りくどい言い方に、カイルの方が眉をひそめた。


「ファーレンシア?」

『何が起きた?』


 ファーレンシアはてっとり早く、カイルと精霊獣に紙片をよく見える位置で開示した。


「ロニオス様が家出をなさいました。現在、行方不明です」

『「は?」』


――旅に出ます。探さないでください。 ロニオス


 ふざけ切った文面だった。

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