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【新連載】【エトゥールの魔導師2】エトゥールの養い子〜貴方と手を繋ぎたい〜  作者: 阿樹弥生
第2章 貴方に名前を呼ばれたい

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(54)第2回メレ・アイフェス集合会議⑭

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 カイルは、きょとんとした。


「なんで、サイラスが知ってるのさ?」

「使ったことがあるに決まってるだろう。熱風による気道損傷や生物襲撃で(のど)を掻き切られて怪我をしたとか、先発降下隊の連中なら一度や二度は経験しているさ」

「ああ、なるほど」

「治療中にしゃべれないのは難儀だから、結構これが便利な代物で――」


 はっ、としてサイラスは口をつぐみ、少女をかえりみた。

 養い子は蒼白になっている。

 つい最近、同じ展開があったことをサイラスは鮮明に思い出した。過去の危険行為を猛烈に抗議されたのだ。


「こ、これは、かなり昔の話だからな?!安全無視をしていたのは昔の話だ!今はしてないっ!」


 わたわたとサイラスは言い訳に走った。

 数秒の沈黙の後、リルはわかったと言うように、コクリと(うなず)いた。だが、次の言葉を待っているようだった。


「これからもしない――ように、努力する」


 絶対にしない、と宣言するには、嘘っぽく、なによりサイラスが確約できない安全保障だった。言葉選びは大切だ。脳筋のサイラスが最近学んだことの一つだった。


 リルはまたもや、サイラスの言葉を吟味のため沈黙を続けてから、咀嚼(そしゃく)をようやく終えたかのように、こくりと(うなず)いた。

 サイラスは安堵の吐息をついた。

 とりあえず、泣かれるという最悪の事態は回避できたようだった。

 女性に泣かれることは過去に多々あり慣れているはずなのに、この養い子の場合だけは、対応に右往左往する。なぜだろう。


 サイラスは同僚達と専属護衛と猫の視線が自分に集中していることにようやく気づいた。珍獣を発見した時のものに似ていて、失礼極まりなかった。

 サイラスは咳払いをした。

 なにごともなかったかのように、問題の検討を再開する。


「シルビアに相談すれば、確実に調達できると思うが、あれって端末が嵩張(かさば)るよな?」


 常に端末を片手に行動するのは、避けたかった。襲撃時に端末を放りだし、武器を構える数秒のロスは深刻な問題だ。大災厄後の地上の治安の悪化は、予想以上だった。四ツ目という魔獣に加えて、略奪目的の盗賊団が増えていることは、実際に対応したサイラスが痛感している。


『それは通常会話を想定した場合だろう。たった短音を2語分なら、簡易版で十分だ。あの器用な気象研究員に頼んで小型化してもらえばいい』

「小型化……」

『養い子が通信機を常時、身につけているではないか。イヤリングでもネックレスでもなんだったら歯にしこんでもいい。拡声器をどこに設定したいか、だ』

「…………なるほど」


 サイラスは納得した。

 ロニオスが提示する「応急処置」案は確かに悪くなかった。


「クトリ・ロダスなら改造できるだろうな」


 ディム・トゥーラも同意した。


「よし、クトリとシルビアに相談してみる。で、根本の記憶喪失の原因を、猫親分はどう考えてるんだ?ぜひ、意見をききたいんだけど」

『それは報酬外の話題だな』

「は?」


 サイラスは、耳を疑った。

 まさか、ここで協力を拒否されるとは思わなかった。

 なぜ?

 白い猫モドキは、優雅に尻尾を振っているから、機嫌を損ねたわけではなさそうだった。むしろ面白そうな表情を浮かべているようにサイラスには感じられた。


「報酬外って……」

『リルが特上の報酬をくれるので、助言しただけだ。これ以上は業務範囲外だ』

「ちょ、ちょっと待ってくれ。原因をつきとめなければ、解決しない問題だよな?」

『そうだな』

「猫親分は心当たりがあるんでは?」

『まあ、そこらのボンクラよりは』


 ディム・トゥーラとカイル・リードが、揃って役立たず(ボンクラ)扱いされている。

 当人たちが視線を交わすのをサイラスは見た。


「えっと……報酬がないとダメなのか?」

『世の中には「等価交換」という言葉がある』

「つまり代価を示せ、と?」

『そうともいう。無償奉仕(ボランティア)は趣味ではない』

「あんた、初期のプロジェクトリーダーだろう?記憶喪失に巻き込まれているプロジェクト関係者に対して、配慮や同情やフォローはないのかよ?」

『「元」プロジェクトリーダーであり、今の責任者はエド・ロウだ。それは彼の責任の範囲なので、私には無関係だ』

「うわ~~、ここにきて、突き落としかよ…………」


 一理はあっても、見捨てられた失望の方が大きかった。


「だから、言ったじゃないか。ロニオスは任侠深い『親分』から一番遠い位置にいる人物なんだよ?ロニオスが支援追跡者(バックアップ)だったという恩恵を受けた人物ですら、銀河の彼方に逃亡を宣言するぐらいだからね。ロニオスは薄情なんだ」


 カイルがぼそりと言う。


『なるほど、カイル・リードとともに話し合いをすべき相手は、アードゥルか』

「カイル、アードゥルにまで被害が及ぶぞ」

「あ…………」


 ディム・トゥーラの指摘に、カイルは口を押さえた。

 サイラスはカイルを見た。


「そこまで性格がわかっているなら、この猫親分の協力を取りつける方法を教えてくれよ」

「「酒」」


 ディム・トゥーラとカイルは声をそろえて瞬時に答えた。


「それじゃあ、ただのアル中親父じゃないか」

「ただのアル中親父だよ」

『…………君達、依頼する側として、先ほどから失言が多すぎるぞ?』

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