5
死者の名に、三波咲の名があった。
あのゲームを最後まで生き残ったら悪魔が叶えるという願いで、
(生き返らせる! 絶対に!)
と、夏樹は、リモコンを握りしめながら思った。
その日の夜。
もう寝るという時間に、ベッドに横たわり、その時を待った。
睡魔に襲われ、ぐっとどこかに引き寄せられるような感覚のあとで、一瞬後、感じたのは、薄暗いさと冷たさ。
あの悪魔の部屋にいる。
トーナメントの表がナツキの目の前にある。
ナツキはユウトとAの小部屋で対決。Bの部屋ではタツヤ対チカ。
(サキはチカに負けたのか)
表にそうある。
ついでに言うと、ユウトはカズマに勝ったあとにソウマに勝ち、タツヤは、ユキと戦って勝ちあがったキシベに勝った、ということが分かりやすいように赤ラインで示されている。
丁寧な悪魔だ。
ちなみに、このあいだナツキが勝った相手ユーゴは、タタに勝っている。チカはサブローに勝ったあとでサキに勝っている。
「さあ部屋へ行くがいい」
山羊面有翼の悪魔に言われてから足を運んだ。
Aの部屋。その中央に立ち、ナツキとユウト両者が向き合う。
「さあどんな勝負でもいい、そのカードが絡んでさえいれば」
この部屋専用の分身した悪魔がそう言うと、二人の左手のひらが光った。
ユウトの手にカードが。
ナツキの手にも。
ナツキの手には、十六枚のカードが。♠の13と♣の9、♢の3と♣の4、♡のAと♠の8、♣の3と♠の7、♠の5と♢の6、♣の13と♢の5、♠の9と♢の2、♡の6と♢の9。
ユウトはカードをまだナツキに見せていない。
ただ、その数は四枚少ない。♣のA、♡の12、♠の10、♡の4、♣の11、♢の12、♣の7、♡の、♢のA、♠の3、♢の11、♣の2の十二枚。
悪魔が、
「同数にする」
と言ってユウトの手にあるカードへと、新しいカードをシャッフルした中からランダムに4枚滑り込ませた。それらは♢の7、♡の8、♢の13、♠の6だった。ただ、これらも含め、一切ナツキはユウトのカードを見てはいない。
ユウトは増えたカードを確認し終えると、
「まあいい。じゃ、そうだな、ルールは……小さい数から出していく。両者ともに出せなくなったら山札を一旦横に置いて、また最初から。Aは単なる1とする」
と提案した。
ナツキはうなずいた。
「オッケー」
まずはじゃんけんをした。パーを出して勝ったナツキが先に出すことに。
ナツキは、まず、♡のAを出した。
そこへ、ユウトが、
「おっと、言い忘れたよ。同じ数なら2枚以上出していいことにしよう、いまここにAが出ているけど」
と言ってから、♣の2だけを出した。
「♢の2とかがあればもう1枚出したんだけどな」
「なるほど。場の数より大きい数で、同じ数なら複数出していいんだね?」
ナツキがそう確認すると、
「ああ、そういうことだな」
とユウトが。
ゆえに、ナツキは、♢の3と♣の3を同時に出した。
ユウトは、次に、♡の4を出した。
ナツキの番。ナツキは、♠の5と♢の5を出した。
すると今度は、ユウトが、♣の7と♢の7を出した。♠の6があったが、7の2枚を先に出しておこうとユウトは考えた。
ナツキは、その次に、♠の8を出した。
ユウトは、♠の10で応じた。
ナツキは、ここで、♠の13と♣の13を出した。
これで、両者、より大きい数を出すことができない。一旦山札は横に置かれた。
13の次の数のカードなどないのでパス扱いにならず、ユウトの番になった。
新たな山札の最初の一枚として、ユウトが♢のAと♣のAを出した。
すると、ナツキは、♢の2を出した。
ユウトは♠の3を出して応じた。
ナツキが次に出したのは、♢の6と♡の6の2枚。♣の4はあったが、
(先に2枚を捨てたい)
という思いがナツキにはあった。
対してユウトは♡の8をその上に置いた。
すると、ナツキは、♣の9と♠の9と♢の9を一度に出した。
いま、両者の残りの枚数は少なくなってきている。
ただ、ナツキは、♣の4と♠の7しか残っておらず、もう出せない。
ユウトの番。ユウトは♣の11と♢の11を出した。
ナツキはパスをするしかない。
次に、ユウトは♡の12と♢の12を一緒に出した。
ナツキはまたもパス。
ユウトはそこで♢の13を出した。
山札をどけて新しく積む。
ナツキの番。ナツキは♠の4を出した。
ユウトは♡の5を出した。
ナツキが♠の7を出すと、それでナツキの手札が空になった。
ユウトの手元には、♠の6が残っている。まあナツキには見せなかったが。
先に手札が空になったナツキのほうを見て、ユウトが、
「ちくしょう死にたくねえよお」
と。
「悪魔が叶える願いで生き返らせるから」
とナツキが言うと、ユウトは、
「ホントか? 絶対だからな!」
と、半信半疑で叫んだ。叫びながら、どこかへ吸い込まれるかのように、消えていった。
すると、カードの山のうち♢の7、♡の8、♢の13、♠の6だけが消え、残りは巨大な蛍の尻のように光ってナツキの左手へと移動した。左手のひらに宿った。が、その手のひらの表面に見えるのは、やはり♠13というマークだけだった。
引っ張られる感覚のあとで、夏樹は眠りから覚めた。
朝。
夏樹はリビングに向かった。リモコンで、やはりテレビの電源を付け、チャンネルを回した。
ニュースを確認。
すると、夏樹は、二名が新たに胸を貫かれたようにして死んでいると知ることとなった。
(絶対に勝ってそう願う。生き返らせるって)
夏樹は、やはりそこだけはぶれなかった。




