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学校から帰る際に夏樹は気にしていた。咲のことをだ。また会いに来るのではないかと。
予感は的中した。
別の学校の制服の姿で静かに立ち待っている咲に、夏樹は自分から声をかけたくなった。
「なんとかこの通り勝てたよ」
「早く終わるといいのにね」
「このゲームが? そうだね。それで、あんなカード、消えてしまえばいい」
「そうだよね、そうよ、そう願えばいい。もう一つは、みんなを生き返らせること」
「うん」
その日の夜。
夏樹は、自分の部屋でベッドに横たわっていると、再び、激しい睡魔に襲われた。
目を開けると、そこは悪魔の部屋。あの薄暗い空間だ。
まるで体が二個ある、精神とあのマークだけ移動している、そういう感覚に、夏樹だけではなく、ほか七名も陥っている。
山羊顔の悪魔は、トーナメント表となっている看板の上に浮いている。翼はあるが、羽ばたいて浮いているわけではない。
「さあ次の勝負だ」
表には、Aの部屋でナツキとユーゴが勝負、とある。ちなみにサキはDの部屋でチカと勝負だ。
皆、移動した。
それぞれが心の準備をする。
カードが出現した。ナツキのものはその左手に。♠の13と♣の9と♢の3と♣の4と♡のAと♠の8と♣の3と♠の7。そして左手から♠13というマークが消えている。
相手のユーゴもそのようになった。
アイドルにでもいそうな男。そんな容姿のユーゴが先にその口を開いた。
「ハイ&ローで勝負だ」
「二人のカードを混ぜて並べて、当てるの?」
とナツキが問うと、
「いや、手持ちから出したお互いのカードのどちらがハイかローかを当てる」
「じゃあ、えっと、どっちも当たりの時もあるってことだよね?」
「ああ」
「んー、いいよ、じゃあそれで」
悪魔が念じたのかテーブルが出現した。
そこに、ナツキはまず、♠の13を出した。裏返したままで、だ。
ユーゴも一枚を裏返したまま提示した。
ナツキは「ハイ」を宣言。
ユーゴは「ロー」と。
両者のカードが裏返される。と、ユーゴのカードは♢の2だった。
ナツキは当然気にして、
「Aは2に負ける? それとも単に1?」
「1だ、ローだ」
しかも、お互いのさっきの宣言は両方ともが当たり。
それならと、ナツキは今度は、♣の3を裏の状態で出した。
ユーゴもカードを一枚裏で出した。
ナツキは「ロー」と。
ユーゴは「ハイ」と。
宣言後、それぞれ裏返した。
ユーゴのカードは♣の13。
ここまでで、当てた回数は2対2で引き分け。
ここからがきつそうだとナツキは考えた。そして出したのは♣の9。
ユーゴが一枚を裏返したまま出し、両者宣言。
ナツキは「ハイ」と。
ユーゴは「ロー」と。
両者、カードをひっくり返す。ユーゴのカードは♢の5だった。
ユーゴの口から、「ふう」という息が漏れる。
3対3。
ナツキは、次は♢の3を伏せた。
ユーゴも一枚を伏せた。そして、
「ロー」
とナツキが言うのと同時に、
「ハイ」
とユーゴが。そのユーゴのカードは♠の9だった。両者正解。
これで4対4。
ナツキは今度は♣の4を伏せた。
ユーゴも一枚を伏せた。
ナツキが宣言する。
「ロー」
「ハイ」
とユーゴも宣言。これらは同時だった。
ユーゴのカードは♢の9だった。
これで5対5。
ナツキは、次は♡のAを出した。裏のまま。
ユーゴのカードも伏せられる。
同時に宣言。ナツキは「ロー」と。ユーゴも「ロー」と。
つまりここが勝負の分かれ目。
お互い、カードをひっくり返した。ユーゴのカードは♠の5だった。
これで6対5。
(くそっ、じゃあ次はハイを出してくるのか?)
予想するユーゴに対して、ナツキは、七並べを思い浮かべていた。どこから上をハイとするか。
ナツキは、次は♠の8を伏せた。
ユーゴも一枚を伏せた。
宣言。ナツキは「ハイ」と。ユーゴは「ロー」と。同時に。
お互いのカードが裏返される。ユーゴのカードは♢の6。
つまり7対6になった。ナツキがリード。
最後のナツキのカードは♠の7だ。それを伏せた。
最後のユーゴの一枚も伏せられた。
そして宣言。ナツキは「ハイ」と。ユーゴは「ロー」と。
ひっくり返ったユーゴのカードは♡の6だった。
結果、8対7でナツキの勝利。
その瞬間、その場にあったカードのすべてが光ってナツキの左手のひらに宿った。そこに♠13のマークがやはり出現した。
「くそぉ、死にたくない。そうだ、3セット勝負だ! そういうことにしよう! うわあああ!」
言いながら、ユーゴはここから消え失せた。やはり、どこかへと引っ張られるようにして。
「勝負あり」
悪魔がそう言うと、ナツキもまたどこかへと吸い込まれるようにしてその部屋から消えた。
夢の試合から覚めた瞬間、まぶたを大きく開いた夏樹はまたリビングへ急いだ。
ニュースを見る。
七時頃だとテレビに表示されている時点で、あの死に方の死者が四名増えていた。




