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悪魔の部屋は相変わらず薄暗い。その部屋の、トーナメントの看板を、そこにいる皆が見ている。
ナツキの次の相手はシュウ。
サキは相手ナシ。シードを引いてしまった。
この戦いが終われば残り8人になる。シードは3人いる。つまりこの回では5人が命を失うということ。
重たい空気の中で、シュウとの対戦の部屋へと入っていくナツキ。
それを見送るサキは、その途中でどこかへと引っ張られるように、看板の前から消えた。
部屋にもやはり悪魔がいる。顔は山羊面のまま。5体に分身しているのだ。
ナツキとシュウが小部屋の中央で向き合うと、その瞬間、ナツキの左手のひらに複数のカードが出現した。♠の13と♣の9と♢の3と♣の4だ。以前も確認したが、なぜか13はKの表記ではない。
シュウの手にも、同じように四枚が。
「さあどんな勝負をする」
と悪魔が聞いた。
ナツキは決めていなかった。
シュウは別のことを考えていて、
「な、なあ。生き返らせるっていう願いを叶えてもらうから、大金を山分けしようぜ」
などと言い始めた。
「でもそれじゃあこのカードはなくならない」
「そんなの次の奴に託せば」
「次の誰かが願ってくれるとは限らない!」
ナツキは、姉のような死がもうないようにと願っていた。そして率先して、
「神経衰弱」
すると、悪魔の手からカードが配られた。二組ずつになる。
「まずは表に返したまま場に出して」
とナツキが言った。
「あ、ああ」
察した悪魔がテーブルを出現させた。
そしてそこへシュウが出したカードは、♡のAと♠の8と♣の3と♠の7。
今回の神経衰弱は、記号も一緒でなければならない。
シュウの側に♣の3がいまは2枚あり、ナツキの側に♢の3がいまは2枚あるが、♣の3と♢の3で一組、正解ということにはしない。
それらのカードが裏返され、騎士のような絵柄だけが見える状態になった。それから掻き混ぜられ、どれがどれだかわからなくなった。
そして縦四列、横四列に、十六枚が綺麗に並んだ。
「じゃあじゃんけん」
言い出したナツキがチョキを出して負けた。なのでシュウから。
合計十六枚が目の前にある。
シュウは、まずはシュウから見て左上の角にあるカードをひっくり返した。それは♠の8だった。次に、同じくシュウから見て右下の角をひっくり返した。それは♣の9だった。
その作戦にナツキは乗ることにした。
シュウから見て右上の角にあるカードに手を伸ばした。ひっくり返して見えたのは♡のA。
次は、シュウから見て左下の角にあるカードに。それをひっくり返して見えたのは、♠の13。
シュウは端からひっくり返していく。次は、シュウから見て左上から一枚下。♢の3だった。それならと、その次は右下から一枚上。
そこにあったのは♡のAだった。
「あ」
とシュウがこぼした。
「じゃあ次こっちの番」
ナツキは♡のAが一組見えたことで、それを先取した。
まだナツキの番。
ナツキの手札になった♡のAがあった場所のあいだをひっくり返した。それは♣の3だった。次は、シュウから見て左下から一枚上のカードをひっくり返した。それは♠の7だった。
「くっ。でもまだ一組だけだ」
シュウはそう言いながら真ん中のほうへ手を伸ばした。真ん中二列のうち左の列の一番上。それは♣の9だった。
「待てよ。9だろ。ってことは」
シュウも一組手に取った。彼から見て右下角が♣の9だったからだ。
シュウは、次は、右下角から一枚左のカードをひっくり返した。♠の8だった。
「お! 待てよ待てよ」
シュウは右上角のカードを裏返した。♠の8。シュウの手札が二組になった。
まだシュウの番。さっきの左隣をひっくり返すと、見えたのは♣の4。
(くうぅっ外れろ、外れろ)
ナツキは死にたくなくて心の中で呻いた。
シュウが、シュウから見て右上角の左隣のカードをめくると、そこに見えたのは♠の13。
ナツキは♡のAのあいだにあったカードを覚えていた。♣の3だ。
シュウから見てその♣の3の左のカードをナツキがひっくり返すと、見えたのは、♢の3。
そのカードのもう一枚の場所を、ナツキは覚えていた。
シュウから見て左上角から一枚下のカードが♢の3。ナツキはしっかりとそれをひっくり返した。
これで二組対二組。
ナツキは、シュウから見てその♢の3の上のカードが何なのかを覚えていた。ひっくり返すと、♠の13。それから、シュウから見て左下角のカードをめくった。♠の13!
まだナツキの番。
ナツキは♢の3があった場所のあいだのカードをひっくり返してみた。
そこにあったのは♣の4。
ナツキはそこから手を奥へとやって、迷うことなく、端の一枚をひっくり返した。それも♣の4!
まだナツキの番。ナツキは♣の4のあいだをひっくり返した。
♣の3だった。
最初に取った♡のAのあいだのものがそうなので、ナツキは迷わずそれをひっくり返した。
残りをひっくり返せば、♠の7の一組もナツキの手札に加わることとなった。
これで、六組対二組。
「そんな。そんな!」
シュウが絶望の表情を見せると、ナツキは、
「生き返らせるから! 願うから! あの悪魔に!」
「あんな悪魔、信じられるか!」
そう言いながら、シュウはどこかへと引っ張られるようにして消えた。
シュウの手札がテーブルにポトリと落ちた。
空間から声だけが消えた。
ナツキはシュウの手札だったカード一組をも手に加えた。そしてテーブルでトントンと揃える。
(こんなもので)
命や願いが左右されるなど、たまったものではない、ナツキはそう感じたが、言葉にし辛かった。
これらのうち、悪魔が増やしたカードだけが消え、残りは、ナツキの左手のひらに宿った。♠13とだけ、やはりそこにある。
(負けられない。負けたくない。願い方を間違えたらどうなるか)
「では、また」
悪魔がそう言ってから、目が覚めた。まるで精神だけ別の場所にいて、朝の自分へと入り直すかのように。
夏樹はリビングへ急ぎ、テレビをつけた。
あのニュースが再び。胸元をまさに貫かれた形の亡くなり方をした死者に、5人の名が加わった。
(5人……? あ、そうか、そうだった、3人がシードで)
8人が出そろった。
画面をぼんやりとみながら、夏樹は、
(みんなどんな願い方をするつもりなんだ)
と、そう思って、姉の死を悼んだ。




