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デビルズカード  作者: 阿川時定


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3/6

3

 悪魔の部屋は相変わらず薄暗い。その部屋の、トーナメントの看板を、そこにいる皆が見ている。

 ナツキの次の相手はシュウ。

 サキは相手ナシ。シードを引いてしまった。

 この戦いが終われば残り8人になる。シードは3人いる。つまりこの回では5人が命を失うということ。


 重たい空気の中で、シュウとの対戦の部屋へと入っていくナツキ。

 それを見送るサキは、その途中でどこかへと引っ張られるように、看板の前から消えた。


 部屋にもやはり悪魔がいる。顔は山羊(やぎ)面(づら)のまま。5体に分身しているのだ。


 ナツキとシュウが小部屋の中央で向き合うと、その瞬間、ナツキの左手のひらに複数のカードが出現した。♠(スペード)の13と♣(クラブ)の9と♢(ダイヤ)の3と♣の4だ。以前も確認したが、なぜか13はK(キング)の表記ではない。


 シュウの手にも、同じように四枚が。

「さあどんな勝負をする」

と悪魔が聞いた。

 ナツキは決めていなかった。

 シュウは別のことを考えていて、

「な、なあ。生き返らせるっていう願いを叶えてもらうから、大金を山分けしようぜ」

などと言い始めた。

「でもそれじゃあこのカードはなくならない」

「そんなの次の奴に託(たく)せば」

「次の誰かが願ってくれるとは限らない!」


 ナツキは、姉のような死がもうないようにと願っていた。そして率先して、

「神経衰弱(しんけいすいじゃく)」

 すると、悪魔の手からカードが配られた。二組ずつになる。

「まずは表に返したまま場に出して」

とナツキが言った。

「あ、ああ」

 察した悪魔がテーブルを出現させた。

 そしてそこへシュウが出したカードは、♡(ハート)のA(エース)と♠の8と♣の3と♠の7。


 今回の神経衰弱は、記号も一緒でなければならない。

 シュウの側に♣の3がいまは2枚あり、ナツキの側に♢の3がいまは2枚あるが、♣の3と♢の3で一組、正解ということにはしない。


 それらのカードが裏返され、騎士のような絵柄だけが見える状態になった。それから掻(か)き混ぜられ、どれがどれだかわからなくなった。

 そして縦四列、横四列に、十六枚が綺麗に並んだ。

「じゃあじゃんけん」

 言い出したナツキがチョキを出して負けた。なのでシュウから。


 合計十六枚が目の前にある。

 シュウは、まずはシュウから見て左上の角にあるカードをひっくり返した。それは♠の8だった。次に、同じくシュウから見て右下の角をひっくり返した。それは♣の9だった。


 その作戦にナツキは乗ることにした。

 シュウから見て右上の角にあるカードに手を伸ばした。ひっくり返して見えたのは♡のA。

 次は、シュウから見て左下の角にあるカードに。それをひっくり返して見えたのは、♠の13。


 シュウは端からひっくり返していく。次は、シュウから見て左上から一枚下。♢の3だった。それならと、その次は右下から一枚上。

 そこにあったのは♡のAだった。

「あ」

とシュウがこぼした。

「じゃあ次こっちの番」

 ナツキは♡のAが一組見えたことで、それを先取した。

 まだナツキの番。

 ナツキの手札になった♡のAがあった場所のあいだをひっくり返した。それは♣の3だった。次は、シュウから見て左下から一枚上のカードをひっくり返した。それは♠の7だった。


「くっ。でもまだ一組だけだ」

 シュウはそう言いながら真ん中のほうへ手を伸ばした。真ん中二列のうち左の列の一番上。それは♣の9だった。

「待てよ。9だろ。ってことは」

 シュウも一組手に取った。彼から見て右下角が♣の9だったからだ。

 シュウは、次は、右下角から一枚左のカードをひっくり返した。♠の8だった。

「お! 待てよ待てよ」

 シュウは右上角のカードを裏返した。♠の8。シュウの手札が二組になった。


 まだシュウの番。さっきの左隣をひっくり返すと、見えたのは♣の4。

(くうぅっ外れろ、外れろ)

 ナツキは死にたくなくて心の中で呻(うめ)いた。

 シュウが、シュウから見て右上角の左隣のカードをめくると、そこに見えたのは♠の13。


 ナツキは♡のAのあいだにあったカードを覚えていた。♣の3だ。

 シュウから見てその♣の3の左のカードをナツキがひっくり返すと、見えたのは、♢の3。

 そのカードのもう一枚の場所を、ナツキは覚えていた。

 シュウから見て左上角から一枚下のカードが♢の3。ナツキはしっかりとそれをひっくり返した。


 これで二組対二組。


 ナツキは、シュウから見てその♢の3の上のカードが何なのかを覚えていた。ひっくり返すと、♠の13。それから、シュウから見て左下角のカードをめくった。♠の13!


 まだナツキの番。

 ナツキは♢の3があった場所のあいだのカードをひっくり返してみた。

 そこにあったのは♣の4。

 ナツキはそこから手を奥へとやって、迷うことなく、端の一枚をひっくり返した。それも♣の4!

 まだナツキの番。ナツキは♣の4のあいだをひっくり返した。

 ♣の3だった。

 最初に取った♡のAのあいだのものがそうなので、ナツキは迷わずそれをひっくり返した。

 残りをひっくり返せば、♠の7の一組もナツキの手札に加わることとなった。


 これで、六組対二組。


「そんな。そんな!」


 シュウが絶望の表情を見せると、ナツキは、

「生き返らせるから! 願うから! あの悪魔に!」

「あんな悪魔、信じられるか!」

そう言いながら、シュウはどこかへと引っ張られるようにして消えた。


 シュウの手札がテーブルにポトリと落ちた。

 空間から声だけが消えた。

 ナツキはシュウの手札だったカード一組をも手に加えた。そしてテーブルでトントンと揃(そろ)える。

(こんなもので)

 命や願いが左右されるなど、たまったものではない、ナツキはそう感じたが、言葉にし辛かった。


 これらのうち、悪魔が増やしたカードだけが消え、残りは、ナツキの左手のひらに宿った。♠13とだけ、やはりそこにある。


(負けられない。負けたくない。願い方を間違えたらどうなるか)


「では、また」


 悪魔がそう言ってから、目が覚めた。まるで精神だけ別の場所にいて、朝の自分へと入り直すかのように。


 夏樹(なつき)はリビングへ急ぎ、テレビをつけた。

 あのニュースが再び。胸元をまさに貫かれた形の亡くなり方をした死者に、5人の名が加わった。

(5人……? あ、そうか、そうだった、3人がシードで)

 8人が出そろった。


 画面をぼんやりとみながら、夏樹は、

(みんなどんな願い方をするつもりなんだ)

と、そう思って、姉の死を悼(いた)んだ。

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