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オレとカノジョのヒーロー活動  作者: 赤城青
第二章 地下世界の怪物
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第四幕 呪われた末裔 ①


 囚われてどのくらいの時間が経過しただろうか、オレは与えられたレーションと水を貰い、黙々と食べていた。

 何故か、手錠は剥がされて、いつでも逃亡可能状態で放置されられている。


「ナギちゃんは探検したいって飛び出て行って、たまに気配を消して現れるおじさんは水と食料を渡して、ついでに菓子も貰って…………あれ、オレって捕まっているんだよな?」


 心の中のセイラさんはため息を吐いていた。

 そうこうしていると、孔袁のおっさんより出現率が少ない来訪者が現れる。


「……少し、話そう、ね」


 相変わらずの独特な口調のルーシィに拒否権などないオレは頷く。


「オレと話しても楽しくないと思うぞ」

「うん。友達いなさそうだよ、ね」


 喧嘩売ってんのか? このサイコパスガールは?


「……ごほん。それで話ってなんだ?」

「赤霧春公。聖來都市東地区。東橋家との繋がりが深い赤霧家に生まれ。赤霧家は代々、目になにかしらの呪いを排出したが、貴方には能力が芽生えなかった、ね」


 オレは名乗った覚えはないが、どうやって短時間でここまで調べられた事に言葉を失ってしまった。


「貴方の事は調べた、ね。貴方の父は聖來都市に殺され、赤霧家は没落してしまい、今はイモウトと暮らしている、ね」

「……よくそこまで調べられたな」

「貴方の存在は理解不能だったから、ね」


 一体、どうやって? 聖來都市の中にもまさか日ノ本の民の協力者が潜伏しているのか?

 いや、きっとそうなんだろう。

 あのモールを見張ってた連中ももしかしたら、都市内の協力者なのではないか?

 この隠れアジトには孔袁とルーシィしか出入りしていない。

 常に行動を共にしていないという事は、生活環境が整っている聖來都市の住民?

 まだ可能性の段階だが、本当にそうなら恐ろしいな。


「貴方の祖父は——」

「——もういいだろ、オレの話は、本題はなんだ?」

「…………超能力のない貴方は私が操作した弾丸を避けた。それはどうやって」


 おの時の答え合わせがしたかったのか。


 どうして避けられる?

 ……お前本当に気付いてないのか?


「簡単の話だ。お前は殺意はあるけど、殺す気はなかった。それだけだろ」

「……意味がわからない」

「別におかしくない。殺さなきゃいけないけど殺したくないと思っている人間はなにかしらのエラーが出る。特に視線は嘘つかないからな。乱射して撃たれる方が避けるのが難しいだろ」

「…………視線、ね。そういうこと」

 

 ルーシィからしたら、無意識の行為なのだろう。

 どこを狙っているのか、全て視線で教えてくれたから、オレはあんな無謀な策を実行し、途中まで成功している。

 言葉にすると、ルーシィは否定するのだろうが、要するにこういう殺しに向いていない。

 向いていないこそ、オレは生きているとも言える。


「確かに、ね。私はこんな事しなくて、普通に暮らしたいと思っている、ね」

「……聞いていいか?」


 疲れた顔をするルーシィは頷く。


「南地区の支部を襲撃した際に死者ゼロで済ませた理由は?」

「…………死んで済ませられると?」


 ぞくり、と背中を刺すような殺意にオレは唾を飲む。


「……殺すのは生温いって話か?」

「死って安息だよ、ね? あいつらは生涯、生き地獄を味合わせないと、ね」

 

 雅鳴の時にも感じたこれは怒りというより憎悪か?

 雅鳴は襲われた支部の共通点とか言ってた。


「……教えてくれないか? どうしてそこまで恨んでいるのか」

「簡単だ、よ。あいつらは都市外調査という名目で私達日ノ本の民を駆除してい、る。人間の皮を被った怪物だから、ね」

「……」


 予想は出来ていたが、オレは信じられないように言葉を失っていた。


「それは本当の事なんだな?」

「……わたしのお父さん、お母さん、近所のお姉ちゃんも友達も、みんな殺された、ね」


 都市外調査している守護者達の話は噂程度しか知らなかった。

 聖來都市の外はもう人が住める領域ではなく、ヴィラン化が加速する地とも言われている中での調査は高額の仕事なんだと言われていた。

 その実態をオレは詳しく知ろうとは思わなかった。

 まさか、そんな非道な事が行われているなんて、想像出来る筈もなかった。

 まさか、聖來都市がそんな闇を抱えているなんて、想像したくなかった。


「信じられないなら、これを見て、ね」


 そういうルーシィは懐から携帯端末を差し出した。

 オレは震える手でそれを受け取ると、それは5分程度の動画だった。

 再生ボタンに手をかけた時、甲高い悲鳴がBGMのように響き渡った。


『……私はこの集落の村長をしている。綾瀬 隆史だ。ついにこの集落に鬼狩りの襲撃を受けている。この集落の武人はやられたようだ。……退路も全て塞がれている。私達は全滅するだろう。女子供まで全員ッ‼︎ だがせめて一矢は報いらせる為にこの記録を残す。私が非道に死ぬ姿をどうか役立ててくれ。全ては日ノ本の民の幸福を願っている』 


 ダンっと爆発が起こり、集落が燃え広がっている。

 子供の泣き声が響くが、銃声が鳴れば消えて、誰かがやめてくれ。殺さないでという懇願を笑いながら殺す襲撃者。

 村長は荒い息を整え、決死の覚悟で立ち上がる。


『聖來都市の守護者達よッ⁉︎ 取引がしたい! これ以上の蛮行はやめてくれッ』


 両手を上げて、降伏宣言する村長は襲撃者の前に立つと、襲撃者の顔と守護者の制服を血に染めた男は唇を曲げる姿が映り出す。


「……こいつはまさか……東橋道場にいた」


 その男の顔に見覚えがあった。

 確か、東地区のどっかの守護者支部にいた真面目で努力家の歳が離れた鈴乃の兄弟子。


「……橋田辰巳。東地区井ノ川守護者支部所属。私の仲間が報復完了している、ね」

「……」


 そうだろうな、と答えるのも惜しく動画に集中する。


『私達を襲ってなんになると言うんだ⁉︎ 私達が君達になにをした⁉︎ どうしてこんな目に遭わなければならない⁉︎』


 村長の声は震えている。

 わかっているのだ、こんな声は絶対に届かないと。

 ただ非道に殺される姿を動画に収める為だけに、いまここで立っている。

 それを勇気と言うのか、いや、こんな理不尽になにもかも奪われる怒りからか、わからない。


『……お前達が死ぬと金になる』『お前達が死ねば聖來都市は安泰』『お前達の死を聖來都市は望んでいる』


 守護者達の言葉に濁りはまるでなく、本気で言っているのだとわかる。 

 

『……この呪われた末裔がああああああああああッッッッ』


 怒りに任せて、懐から拳銃を取り出すも無駄だった。

 その刹那に腕は斬り飛んだ。


「……東橋剣術の飛ぶ斬撃」


 未だに飛ぶ斬撃ってなんだよっと思う故に、これはフェイクでは再現出来ない。

 東橋の型は完璧に再現するなど、フェイクには無理だ。

 この動画はマジなんだろう。


『ああああああああ………………』


 いつの間にか村長の首は斬り飛ばされていた。

 村長は死んだが、殺戮は終わらない。

 悲鳴は度々鳴っては消え、鳴っては、消え、鳴っては消え、そして動画は終了した。


「この集落に住んでた村長はリアルタイムの映像を江戸に送ってたから、この動画がある、ね。他にも何本もあるけど……見る?」


 オレはただ呆然とルーシィの話に傾ける。

 他にもある? こんな事が日常的に起こっている?

 聖來都市はどうしてこんな事を……そもそもどうしてこんな事が出来るかの理解不能だった。

 いくら金の為でもこんなこと…………。


「……これが私達が敵対している理由だ、ね」

「…………………………………………………………」


 オレはなにか喋ろうとしたが、どんな事を言えばいいかわからなかった。

 もしオレが逆の立場ならルーシィ達と同じ事をしていただろうというのを想像してしまったのだから。

 あんなに理不尽に奪われて、許すなんて出来るわけがないのだから。

 聖來都市に住むオレが関係のない人を殺すななんて、口が裂けても言えなかった。


「…………この端末は置いていく、ね」


 なにも言えずにいる端末を握りしめていたオレに告げるとルーシィは静かに部屋から出て行った。

 

 

 


 

 

 

 

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