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オレとカノジョのヒーロー活動  作者: 赤城青
第二章 地下世界の怪物
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第四幕 呪われた末裔 ②

 いつの間にか探検から帰ってきたナギに心ここに在らずという感じで話をしたが、正直なにも覚えてはいなかった。

 もう深夜くらいになった頃にはナギはいつの間にか、与えられた部屋で睡眠に行った。

 オレは寝ようとしても、眠れずに先程の動画とは違う動画を流す。

 絶望の悲鳴に笑う襲撃者達。最後まで戦おうとして、殺され、逃げようとすれば、殺された。

 そこに幼い子も関係なく、殺される。

 どうして、人はこんなに残酷になれるのか、理解出来ないかった。

 鈴乃の兄弟子だった人も何度も話した事がある。その時の印象は優しいお兄さんという感じでここまで非道な事をする人には見えなかった。

 あの動画から観て、人が変わったようで──


「……ハルヒロさん」

「うん?」


 と突然現れたセイラになんで堂々と姿を見せルーシィ行動に、あんまり意識がなかったオレがつい持っていかれてしまった。


「……ハルヒロさん。手合わせしましょう?」

「………………………… なぜ?」


 あまりの不思議ちゃん発言に思考が止まってしまったが………………なんで?

 いくら考えてもわからなかった。

 しかもどうして今なのか、こっちはもう囚われの姫状態の今⁈

 しかもあなたって隠れてないといけない宇宙人じゃなかったっけ?


「いいから表に出ましょう」

「お、おう」


 あまりの迫力に先程まで抱いていた重い感情が動揺する。

 そして迷う事なく、セイラは牢獄の扉を開けるとそのまま出ていく。オレは仕方がなく付いていくことにした。



       £



 地下に続く階段を下ると、避難区域に着いた。

 どうやらあのアジトの地下には緊急時の為に用意された地下避難所が設置されているようだ。今も人の出入りがあるのか綺麗に清掃されている。


「……確かにこの場所なら手合わせ程度なら大丈夫だろうけど…………まじでやるの?」

「ボコボコにしてやります」


 なにやら殺る気満々のセイラは腕を振るい回している。なにやら怒っているようだが、オレには心当たりがまるでない。

 そしてここにはツッコミ所があって──


「……立ち合い人は我がやろう」

「お願いします」


 何故か、孔袁のおっさんがこの意味不明の手合わせの立ち合い人を申し出たのだった。


「え? なんでこんなに受け入れてるの?」

「…………」


 オレの疑問に孔袁は無言を貫いた。

 うん。教えてくれるとは思わなかったけど、もう少しだけ説明してくれると助かります。


「……わたしは条件を飲みました」

「へ?」

「彼はわたしの存在を感知する術があるようでしたから自身を隠すのをやめました」


 確かに条件の話は後にするって話だったが、どういう事? それに感知する術がある事をどうしてセイラは気付いた?


「……我に気付いた事を口外しないと条件をつけた」


 ようやく口を開く孔袁になんとなく理解した。

 孔袁はセイラの存在に気付き、セイラの解析で孔袁のなにか都合が悪い事実に気付いた為に口止めをしたって事か?

 だが、それって……セイラの正体が未知生物だと理解している前提の話なわけで?


「どうしてセイラの存在を感知したんだ?」

「……我の能力(カース)は魂の揺らぎを視る。我に嘘は通じない」

「…………視る」


 どうやら孔袁は赤霧家と同様な呪いを持っているようだ。

 その能力で異物であったセイラの存在に気付いたってところなんだが……問題はそれじゃない。


「あんたらはセイラみたいな人を知っているのか?」

「……数十年規模に出没する異星人の存在は観測されている。日ノ本の民に接触してきた個体も」


 その言葉は初耳であった。

 まさかセイラ以外の宇宙人の存在が観測されているなんて想像もしていなかった。

 セイラからもそういう話は……。


「……そうなのか?」

「そのようですね。わたしはまだ前任者には会ってないませんから詳しくは知りませんが」

「前任者ね? 探し物と関係あるのか?」

「肯定です」


 どうやら詳しい内容を聞かないといけないわけだが……まだ疑問がある。


「で?」

「どうしました?」

「いや、なんでオレはお前と手合わせしなきゃいけないんだ?」

「やればわかります」


 なにがなんだがわからないが、手合わせする事は決定したようだ。なら好きにやらせてみるのもいいかもしれない。今のオレもむしゃくしゃしていたし、ちょうどいい機会だ。

 だがセイラは一人でインビジブルを相手にしていた。

 普通にやっていたら、まず勝てない。

 ならばどうすればいいか、鈴乃対策だな。


「……安心してください。わたしは特別な能力は無しでやりますので」

「……おおう」


 鈴乃の時同様に超能力を封印作戦を決行しようとしたがオレの思考が完璧に読まれた。

 やばい。オレのやり方を熟知しておられるセイラさんに震えが止まらなかった。


「早速、始めましょう」

「…………おう」


 言われるがままに所定の場所に立つ。

 5Mの距離。オレはセイラの足に目を向けた。

 足腰からは不自然さはないという事は即行動は起こさず様子見するのだろうが、油断はいけない。


「──コインが落ちたら始めだ」


 と孔袁のおっさんが東橋で使われている合図に少しだけ驚く。

 微かに耳に伝わる音を瞬時に聞き分け動けるように設けられている合図方法。

 師匠曰く『コインの回転を予測し、時間を推測し、いかに早く動けるかも重要』だったか──


 ──コインは弾かれる。


 オレはそれを合図にセイラの動きを予見する。

 回転するコインはカランと落ちる音と共にセイラは動いた。

 予備動作など感じさせない拳が来るので、受け止める体制で待ち構えていると、視界にノイズが走る。


「な」


 オレは為す術もなく、セイラに組み伏せられた。


「……勝負あり」


 孔袁の宣言に理解させられる。

 オレは負けたのだ。

 あまりの事に動揺と驚愕に呆然となった。

 信じられなかった。

 勝ち負けがどうのこうのじゃない。

 セイラに負けるかもしれないとは予測していた。

 それなのに──


「……ハルヒロさん。貴方はわたしが慣れない拳で殴りつけると予測していませんでしたか? わたしは初めからこの決着になるように考えていました」


 セイラは淡々と告げる。


「ハルヒロさん。貴方は今の立ち合いでわたしの簡単なフェイントを見抜けなかった。貴方が得意としていた先見が機能していませんでした」


 普通に考えたら、セイラがそんな単純な事を実行する筈がない。あの時のオレは見抜けなかった。


「なぜだと思いますか?」

「…………」

「貴方の先見はメンタル面によって変わる」

「…………そうだな」

「今の貴方は先見が使えません」


 今のオレの心情は揺らいでいる事を指摘するセイラに言い返す事など出来なかった。

 今までのオレは人の心情を見抜けているように視えて、なにも視えていなかった事に気付いてしまったのだ。

 自分自身への疑心によって、オレの目は曇ってしまったのだろう。


「……聖來都市の闇の部分を知ってしまったハルヒロさんがそうなってしまうのは予想出来ていた事です」

「予想って……最初から知っていたような台詞じゃないか?」

「いえ、聖來都市が外でそんな事をしているのは初耳です」

「ならなんで──」


「──ハルヒロさん。貴方は凶器を持って、いざ敵かもしれない人を殺せと莫大な報酬をぶら下げられたらどうしますか?」


「……は?」

「答えてください」


 以前にも似たような事を聞かれたような気がする。

 内容がなんだったか不思議と思い出せない。

 確か、セイラが図書室でふと当たり前な事を聞いてきた。


「…………オレはしない」


 自身に害する存在なら容赦はしないと決めている。だけどそれ以外の無関係な人を害するのは訳が違う。

 例え、妹の為だったとしてもその一線だけは踏む事はないだろう。


「それが普通です。ハルヒロさん」

「……普通じゃないだろ」


 都市外で多くの聖來都市の守護者達はオレとは違う選択をしている。


「ハルヒロさんが言う守護者達……いや聖來都市……都市内に暮らしている人達を歪めている()()がいるとしたらどうですか?」

「…………は?」

「答え合わせは後にしましょう。今はハルヒロさんには通常に戻す事が先です。このままでは日ノ本の民の拠点まで辿り着く事は出来ません。ですので孔袁さんにお願いしました」

「…………え?」


 先程のは?とは違う意味で困惑していると、待っていたように孔袁のおっさんは前に出た。

 手には棍棒3Mくらいの巨大な棍棒を握られている。


「…………あのーセイラさん? もうちょっと手心というやつをね?」

「余計な事を考えないように徹底的に追い込んでいきましょう。時間もありませんし、これが確実で効率的です」

 

 言いたい事はわかる。

 言いたい事はわかるが、そのやり方は獅子は我が子を千尋の谷に落とすのと変わらないのでは?


「…………」


 なぜかやる気に満ちている孔袁さんからウキウキというオーラを感じるのは気のせいだろうか?

 こうしてセイラの鬼のような奇策によって強制的に立ち直られたのであった。




 

 


 

 


 


 


 


 

 

 


 

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