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オレとカノジョのヒーロー活動  作者: 赤城青
第二章 地下世界の怪物
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第二幕 外からの侵入者 ①

 『バベル』守護者管轄支部 888。

 聖來都市の目の映像がリアルタイムで流れるスクリーンで多くの役員が忙しそうにせっせと働いている。


「……引っかかったのは『一人』?」


 その中でも一際『若い』役員が最新端末片手に難しい顔をする。

 あたしの『勘』では今都市に侵入した事になっているテロリストの一味が縄にかかると予想していた。

 だが縄にかかったのは想像を越える『怪物』だった。

 一人で半径465m一帯を凍り付かせる惨状の度合いはこの前の巨人と脅威は変わらない。

 なにより恐ろしい事にあれだけの規模の能力を使用したにも関わらず、『死者0』だという話だ。

 つまりこの『怪物』はあの規模の能力を詳細にコントロールして、大部隊に死者を出さずに足を確実に止めるという『最小の結果』になるように手加減したという事実に頬を痙攣させられる。


「……そう。お疲れだったね。とりあえず報告書をアップして、避難所で休みなよ。うん? あぁあいいって気にしないでよ。これは仕方がないって君たちは災害に巻き込まれただけって気楽に考えて休みなよ」


 といつもの口上で部下を宥めながら通話を切り、一服するようにポテトをつまんだ。

 『ミオ』の名前の守護者帽子を深く被り、瞑想する。


「……今回は積極的に動かないといけない、か」


 『動け』と勘が命令を下す。


「佐藤さん。スクリーンに都市図を出してくれない? 上層のね」

「わかりました。監督者」


 大スクリーンに映し出されている都市図に役員達の注目を浴びる。


「氷結地帯に向かっているサイコメトリーに連絡。近くにある遊戯楽というゲーセンを調べさせて。多分だけど、ここに地下への入り口がある筈だから。それから近くの解析班に氷の分析データーを急がせて」


 当事者が聞いたらゾッとする内容だが、監督者は少ない資料から的確に指示を出す。


「これで氷結関係は大丈夫。後は……」

「相変わらず君は凄いな。シイナ・クロムウェル監督者」


 貫禄がある声に周囲が緊張の嵐に包まれる。


「西郷統括」

「普通に統括だけでいい」


 西郷 雅鳴。事実上で聖來都市守護者統括にしてナンバーワン。


「自分にもなにかしらの指示はないか?」

「……統括に命令できる権限はあたしにはありません」

「だがシイナ監督者の指示は自分よりも的確なのは事実だ。自分という手札を好きに使ってもいい」


 16歳という若いシイナがこの場で指揮を執っているのは超能力(カース)の恩恵が大きい。

 入隊して6年間の実績はどの都市に出向しても、それなりの地位に座らせられるのは珍しいことじゃないが、都市守護者統括の立場の人からここまで言われるのは初めてだ。

 それでいいのか、統括者? とツッコみたいが自嘲する。


「出来ればそうさせて貰います。ですが、縄にかからない事には行動にも出られないのが現状です」

「それは建前か?」

「……なんの事でしょう?」

「いまの包囲網はマップの記された通りだな」

「このマップには大まかにしか記されてませんが、詳細が知りたいなら切り替えますか?」

「いや結構。ただ『窮鼠猫を噛む』という古くから伝わることわざがある」

「普段なら歯向かうことのない強い相手に対して死にものぐるいで反撃することがあるって意味ですね。ですが窮鼠猫というほどに弱いと想定してません」

「その通りだ。ただ君はその可能性を意図して話さなかった。これは自分の勘だが」


 西郷統括の言葉にあたしの『直感』の思惑に気付かされる。

 これまでの指示は最善な判断を『直感』に頼っていたが、これはやらかしてしまったのではないかと疑心する。

 西郷統括から見ても、あたしが張った包囲網は『建前』に過ぎなかったのだ。


「ただこれを見るに君は優秀だ。現状ではこれ以上の最善策は実行出来ない」

「都市の目が万全に機能していない現状では定石通りにはやれないなら、人を目に変える誰でも思いつけます」

「それを迷わず実行は誰にでも出来ない。自分には無理だ」


 自分を卑下する西郷統括の思惑に一瞬だけ困惑する。


「……近い将来、君は自分と同じ席に座る可能性をひめている。その『直感』通りの定石を進む限りは」

「それはどういう……」


 支部中に警報音が鳴り響くとスクリーンのマップ上にレッドポイントが点滅される。


「東地区井ノ川守護者支部からのエマージェンシーです。侵入者一人に支部倒壊!? 推定数死者95人重傷者12人軽傷1人」

「侵入者が一人ッ!? 支部倒壊ッ!? 詳細な情報をまとめて、近くの部隊に戦闘待機命令及びに避難活動の準備を急がして──」


 ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!! 


「新たにエマージェンシーですッ!! 西地区竿口守護者支部。侵入者一人に支部倒壊。推定数死者77人重傷者1人軽傷者1人」


 ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!! 


「北地区鳳凰守護者支部からのエマージェンシーです。侵入者1人推定数死者126人重傷者45人軽傷者2人」


 ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!!  ビュッ!! 


「南地区雨宮守護者支部からエマージェンシーです。死者0人重傷者167人軽傷1人」


 立て続けに鳴り響くエマージェンシーコールに計画的犯行なのだとわからせられる。

 たった4人で298人の死者を出し、225人の重傷者を出される怪物が今の都市に潜伏しているという事実だけでこの場にいる全員が信じられないと言わんばかりに顔を青ざめた。

 しかも襲われた支部はこの聖來都市では聖來都市を代表できる程の実力者がいた筈だ。

 支部倒壊させるまでエマージェンシーを押す暇もないくらいにあっさりとやられた事実に下手に応援を呼ぶことさえ躊躇われる。


「訂正だな。窮鼠猫は獅子の類のようだな」

「……あちらがなにかしらのアクションを起こしてくれなきゃ我々は動けなかったのは事実ですけど……予測以上の被害になってしまいました」


 予定通りに能力の詳細を知らなければ、こちらも戦う事が出来ない。


「統括。失礼ながら貴方をこき使わなければならないようです」

「期待には応えよう」


 大事な帽子の鍔に手をかけながらエマージェンシーコールを見据えた。


      G


「…………ごめん。逃げられた。いやちゃんと予定通りのポイントに誘導は成功していたんだよ? だけど今代の『エネミー』に対象を奪われちゃった。これってあなたの管轄で私の責任じゃないと思うんだけど? …………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。殺さないでくださいッ!! ……てかどうして今代の『エネミー』を放っておくの? え? それってまじで? なら納得だけど、今回の対象はもしかしたらダメになるかもしれないよ。努力はするよ。けど外の住民の『過激派』に挑発したお陰で相当キレちゃってるじゃん? どうして潜伏中で刺激しないようにする対象を侵入者として指名手配するから……いざって時は爆弾持って特攻させる? え? それって決定事項なの? もしかして、そうならないように働けって脅し? あれって想像以上に痛いって知ってる? いやあなたに痛みについて語るのはやめる。……わかったよ。今回もやるよ。けど失敗しても怒らないよね?」




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