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私だけが真実を知っているのに、誰も信じてくれない 〜悪役令嬢にされた私は沈黙を選びました。けれど王都は、私を失ってから少しずつ壊れていく〜  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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第29話 その恋さえ、誰かの都合だった

 小会議室の中で、誰もすぐには動けなかった。


 開かれた書簡は、資料台の上に置かれている。


 古い紙。

 ダーネス侯爵家の私印。

 整った文字。


 そこには、感情らしいものが一切なかった。


『将来、セレスティア嬢が王太子妃候補として不都合となった場合、リリアナ嬢への移行は可能。ただし、その際はセレスティア嬢が自ら退く形を取らせることが望ましい』


 セレスティアは、その一文から目を離せなかった。


 自ら退く形。


 自分が王太子妃候補として不都合になる日を、誰かは想定していた。


 そして、リリアナへ移る道筋まで考えていた。


 婚約破棄の夜。


 アデルがリリアナを庇い、自分を断罪した夜。


 あの出来事は、本当に偶然だったのか。


 リリアナの涙。

 アデルの怒り。

 父の沈黙。

 貴族たちの視線。

 自分が謝罪を求められた場。


 すべてが自然に起こったものだと、少なくともセレスティアは思っていた。


 人々の愚かさと、誤解と、感情が重なって起きた悲劇だと。


 だが、この書簡は違うことを告げている。


 誰かは、そうなる可能性を知っていた。

 いや、知っていただけではない。


 望んでいたのかもしれない。


「……父上」


 セレスティアの声は、自分でも驚くほど低かった。


 グレゴールは答えなかった。


 また沈黙。


 けれど、今度の沈黙は娘を従わせるものではなかった。


 追い詰められた者の沈黙だった。


「この書簡をご存じでしたか」


 セレスティアは、もう一度尋ねた。


 グレゴールは資料台の上の紙を見ていた。


 その目には、怒りもある。

 屈辱もある。

 だが何より、計算があった。


 どう答えれば、最も傷を小さくできるか。


 娘の問いを聞いてなお、父はまだそれを考えている。


 セレスティアには、それが分かってしまった。


 分かりたくなかった。


「古い話だ」


 ようやく、グレゴールは言った。


「それは答えではありません」


「当時、そういう案が存在しただけだ」


「案?」


 リリアナの声が震えた。


 彼女は手元の記録用紙を握りしめている。


「私は、案だったのですか」


 グレゴールは、わずかに顔をしかめた。


「リリアナ。お前は黙っていなさい」


 その瞬間、リリアナの肩が震えた。


 だが、以前のように俯かなかった。


「黙りません」


 声は小さかった。


 けれど、確かに聞こえた。


「お父様。私は、もう黙りません」


 グレゴールの目が鋭くなる。


 リリアナは泣いていた。


 頬を涙が伝っている。


 それでも、ペンを離していなかった。


「私が殿下をお慕いしたことも、殿下が私を選んでくださったことも、全部、私たちの気持ちだと思っていました」


 アデルが、苦しげにリリアナを見る。


 リリアナは続けた。


「でも、この書簡には、私が殿下の心的安定に良い影響を与えると書かれていました。殿下が私へ強い情を示した場合、移行は自然に進むと」


 声が詰まる。


 それでも、彼女は言葉を出した。


「私は……殿下への気持ちまで、利用されていたのですか」


 答える者はいなかった。


 アデルは、椅子の背を握りしめた。


 その指が白くなる。


 彼の胸にも、同じ問いが刺さっていた。


 自分は、リリアナを愛していると思っていた。


 セレスティアの正しさに息苦しさを覚え、リリアナの柔らかさに救われたと思っていた。


 それは嘘だったのか。


 いや、完全な嘘ではない。


 リリアナの笑顔に安らいだのは本当だ。

 彼女が涙を浮かべて頼ってくると、守りたいと思ったのも本当だ。


 だが、その状況が作られていたのだとしたら。


 リリアナが何も知らず、守られるだけの娘として育てられたのも。

 セレスティアが正しい資料を差し出すたびに、アデルが息苦しさを覚えるようになったのも。

 二人の姉妹が対照的に見えるよう仕組まれていたのだとしたら。


 自分の恋は、どこまで自分のものだったのか。


 アデルは、初めてその問いを前にした。


「母上」


 アデルは王妃を見た。


「これは……この書簡は、誰が書いたのです」


 王妃は書簡を見つめた。


「私印はダーネス侯爵家。筆跡も、おそらくオルフェリアでしょう」


「彼女一人で?」


「いいえ」


 王妃は静かに首を振った。


「この手の調整は、一人ではできません」


 その言葉で、部屋の空気がさらに重くなる。


 オルフェリア一人の策ではない。


 王妃宮。

 王太子府。

 レイノルド公爵家。


 三者に利益あり。


 さきほどの覚書の文面が、全員の胸に蘇った。


 ノアが初めて口を開いた。


「この書簡の宛先は」


 書記局長が紙を確認する。


「表書きはありません。中身にも明確な宛先はありません。ただ、末尾に“調整案として保管”とあります」


「保管場所は箱の中」


 ノアの声は低い。


「つまり、正式文書にはできないが、関係者間で共有するための私的覚書ということですか」


 書記局長は少し考えた。


「その可能性が高いかと」


「関係者とは」


 ノアの問いに、誰もすぐには答えなかった。


 だからこそ、彼は続けた。


「オルフェリア・ダーネス侯爵夫人。ハーランド伯。レイノルド公爵。そして、当時の王太子府長官代理。最低でもそのあたりでしょう」


 グレゴールが睨む。


「辺境伯。推測で名を挙げるのは」


「推測です」


 ノアは認めた。


「ですので、記録照合が必要です」


 逃げ道を塞ぐ言い方だった。


 グレゴールは口を閉ざす。


 セレスティアは、ノアの横顔を見た。


 彼は怒っていた。


 表情はほとんど変わらない。


 けれど、分かる。


 この人は、静かに怒っている。


 それが不思議と心強かった。


 自分の怒りだけでは、まだ足がすくむ。

 けれど隣で、同じものを不当だと見ている人がいる。


 それだけで、言葉を続けられる。


「父上」


 セレスティアは、再びグレゴールを見る。


「私が不都合となった場合、というのは、どういう意味ですか」


 グレゴールは答えない。


「王太子妃候補として不都合。つまり、私が殿下の隣に置けなくなる状況を、あらかじめ想定していたということですね」


「言葉を選びなさい」


「私は選んでいます」


 セレスティアは、はっきり言った。


「今まで選べなかった言葉を、ようやく選んでいます」


 グレゴールの顔がこわばる。


 セレスティアは続けた。


「私を不都合にするために、何かが行われたのですか」


「そのようなことは」


「では、なぜ“自ら退く形”と書かれているのですか」


 部屋が静まり返る。


 自ら退く形。


 セレスティアが、自分から王太子妃候補を辞退したように見せる。


 それは、あの夜と似ていた。


 断罪の場で、彼女は謝罪を求められた。


 謝れば、どうなっていただろう。


 彼女は悪女として非を認め、王太子妃にふさわしくないと自ら示したことになったのではないか。


 そして、リリアナへの移行はより自然に進んだ。


 アデルは、青ざめた顔でその可能性に気づいた。


「まさか……」


 声が漏れた。


 セレスティアはアデルを見た。


 アデルは額に手を当てていた。


「私は、あの夜……」


 そこで言葉が止まる。


 自分は、セレスティアに謝罪を求めた。


 リリアナを傷つけたと認めろと迫った。


 もしセレスティアが謝罪していたら。


 彼女は自ら非を認めたことになる。


 自ら退く形。


 あの場は、そういう流れになっていた。


 アデルは椅子に座り込んだ。


「私は、利用されたのか」


 誰も答えなかった。


 リリアナが、小さな声で言った。


「私も、です」


 アデルは顔を上げる。


 リリアナは泣いていた。


 けれど、その涙はアデルに縋るものではなかった。


「私も利用されました。殿下を好きだと思う気持ちも、お姉様に嫉妬する気持ちも、泣けば守ってもらえる自分も。全部、都合よく育てられていました」


「リリアナ」


「でも」


 リリアナは、涙を拭わずに続けた。


「利用されたからといって、私が何も悪くないことにはなりません」


 その言葉が、アデルの胸に刺さった。


「私は、お姉様を傷つけました。知らなかった。でも、傷つけました。だから、記録を見ます。逃げません」


 リリアナはアデルをまっすぐ見た。


「殿下は、どうなさいますか」


 アデルは言葉を失った。


 リリアナに問われている。


 守るべき相手だと思っていた少女に。


 利用されたから仕方なかった。


 そう言えば楽だ。


 自分は知らなかった。

 ハーランド伯が悪い。

 オルフェリアが悪い。

 グレゴールが悪い。


 そう言えば、自分の心は少し軽くなる。


 けれどリリアナは、それを選ばなかった。


 知らなかったけれど、傷つけたと言った。


 では、自分は?


 アデルはセレスティアを見た。


 彼女は泣いた跡の残る顔で、こちらを見ている。


 責めているようで、責めていない。


 ただ、待っている。


 アデルが何を見るのかを。


 アデルは、喉の奥から言葉を絞り出した。


「私は……あの夜、君を断罪した」


 セレスティアは黙っている。


「それが、誰かの作った流れだったとしても。私が言った言葉は、私の口から出た」


 リリアナの手が、記録用紙の上で止まる。


 アデルは続けた。


「私は、君が冷たいと思っていた。正しすぎて、息苦しいと思っていた。君がどれほどのものを整えてくれていたのかも知らずに」


 声が震える。


 王太子としては、ひどくみっともない声だった。


 だが、今はそれを整えるセレスティアはいない。


 整えないまま、自分で言うしかない。


「私は、まだ謝罪の言葉を持てていない」


 セレスティアの目が少しだけ動いた。


「母上にも言われた。今の私は、謝罪で自分を守ろうとしていると。だから……今ここで、許してほしいとは言わない」


 アデルは、深く息を吸った。


「だが、記録してください」


 書記局長がペンを取る。


 アデルは言った。


「王太子アデル・ヴァレンティアは、婚約破棄の夜、セレスティア・レイノルドに対し、十分な調査も証拠確認も行わず、妹リリアナへの加害を前提として断罪した」


 部屋が、静まり返った。


 リリアナの涙がまた落ちる。


 セレスティアは、動かなかった。


 アデルは続ける。


「その断罪が、結果として、セレスティアを王太子妃候補から退かせ、リリアナへの移行を進める形になったことを認める」


 書記局長のペンの音が響く。


 かり、かり、と。


 アデルの言葉が記録になる。


 初めて、彼自身の口から。


 セレスティアは、胸の奥が痛むのを感じた。


 これを聞きたかったのか。


 分からない。


 謝罪ではない。


 けれど、事実の認定だった。


 アデルが自分のしたことを、王太子としてではなく、一人の当事者として言葉にした。


 それでも、痛みが消えるわけではない。


 当然だ。


 この一言で終わるほど、軽い傷ではない。


 だが、記録された。


 それだけは、前へ進むために必要だった。


 グレゴールが、苛立った声を出した。


「殿下。そのような記録を残せば」


「残す」


 アデルは、初めてはっきりとグレゴールを遮った。


「私は残すと言った」


 グレゴールの顔が固まる。


 アデルは彼を見る。


「公爵。あなたも答えるべきだ」


「何を」


「この書簡を知っていたのか」


 グレゴールは沈黙した。


 アデルは逃がさなかった。


「セレスティアが謝罪すれば、自ら退く形になる。そういう流れを、あなたは知っていたのか」


 グレゴールはしばらく黙っていた。


 全員が待つ。


 やがて、彼は低く言った。


「可能性としては、知っていた」


 リリアナのペンが紙を引っかいた。


 セレスティアは、息を止めた。


 可能性として。


 また、曖昧な言葉。


「では」


 セレスティアは言った。


「父上は、あの夜、私が謝罪すればどうなるかご存じだったのですね」


「お前が素直に謝罪すれば、場は収まった」


「そして私は、自分から非を認めたことになった」


 グレゴールは答えない。


「リリアナへの移行が、自然に進んだ」


 沈黙。


 セレスティアは、胸の奥に冷たいものが落ちていくのを感じた。


 あの夜。


 父は自分を助けなかっただけではない。


 沈黙によって、流れを進めた。


 セレスティアが悪女として謝罪し、王太子妃候補から退く形になることを。


 父は止めなかった。


 いや。


 望んでいたのかもしれない。


「どうして」


 リリアナが、震える声で言った。


「お父様、どうしてですか。お姉様は娘でしょう。私も娘でしょう。どうして、そんなふうに」


「家のためだ」


 グレゴールは、また同じ答えを出した。


 だが、今度は誰もその言葉を重く受け止めなかった。


 中身が空だからだ。


 家のため。


 それで娘たちを説明できると思っている。


 そのこと自体が、彼の罪だった。


 セレスティアは静かに言った。


「父上にとって、私たちは家のための配置だったのですね」


「違う」


 グレゴールは即座に言った。


 だが、その否定は遅かった。


 あまりにも、遅すぎた。


 王妃が、深く息を吐いた。


「記録しなさい」


 書記局長が頷く。


「レイノルド公爵、婚約破棄の場において、セレスティア様の謝罪が王太子妃候補辞退へ繋がる可能性を認識していたと発言」


 グレゴールの顔が強張る。


「王妃陛下、それは」


「あなたの発言です」


 王妃は冷たく言った。


「これまで娘たちに記録のない役割を負わせてきたのでしょう。ならば、今日はあなたの言葉も記録されます」


 グレゴールは黙った。


 その顔には、怒りよりも屈辱が濃かった。


 セレスティアは、父を見つめた。


 悲しくないわけではない。


 だが今、悲しみよりも強いものがあった。


 決別に近い静けさ。


「父上」


 セレスティアは言った。


「私は、レイノルド公爵家へ戻りません」


 グレゴールの目が鋭くなる。


「何を言う」


「私は、公爵家の管理下に戻りません。修道院にも入りません。王宮実務に復帰するかどうかも、私自身が決めます」


「お前は私の娘だ」


「はい」


 セレスティアは頷いた。


「ですが、父上の所有物ではありません」


 その言葉は、静かだった。


 けれど部屋の空気を切った。


 リリアナが、泣きながら記録した。


『セレスティア様、レイノルド公爵家の管理下へ戻らないと宣言。父の所有物ではないと発言』


 アデルは目を伏せた。


 王妃は静かに頷いた。


 ノアは、ただ隣に立っていた。


 グレゴールは、何かを言おうとして、結局黙った。


 その沈黙は、もう誰も従わせなかった。


 しかし、箱の中にはまだ最後の一枚が残っていた。


 書記局長が、それを手に取る。


「王妃陛下。最後の文書です」


 王妃は、疲れた顔で頷いた。


「読みなさい」


 書記局長は文書を開いた。


 そこに書かれていたのは、短い覚書だった。


「――移行が完了した後、セレスティア嬢の扱いについて。王妃宮補佐として残す案、修道院へ送る案、または北方辺境伯家との連携に用いる案、三案を検討」


 ノアの目が、初めてはっきりと細くなった。


 セレスティアは、ゆっくり彼を見る。


 北方辺境伯家との連携。


 この文書は、彼女が王宮を出るずっと前から、北方までも選択肢として見ていた。


 まるで、彼女の行き先さえ駒のように。


 書記局長は続けた。


「北方案については、ノア・ヴァレンティア辺境伯の性質上、本人意思なき婚姻・保護利用には抵抗が予想されるため、慎重を要する」


 部屋の視線が、ノアへ集まった。


 ノアは表情を変えなかった。


 だが声は、これまでで最も冷たかった。


「私の名まで、ずいぶん便利に使われていたようですね」


 グレゴールは何も言わない。


 王妃も、唇を引き結んだ。


 セレスティアは、文書を見つめた。


 自分は、王太子妃候補から外れた後も。


 王妃宮に残すか。

 修道院へ送るか。

 北方との連携に使うか。


 その程度の選択肢で扱われていた。


 人ではなく、配置。


 娘ではなく、駒。


「……なるほど」


 セレスティアは呟いた。


 声は静かだった。


 静かすぎて、リリアナが不安そうに顔を上げる。


「セレスティアお姉様」


「私は、どこまでも便利だったのですね」


 誰も、否定できなかった。


 セレスティアは資料台に置かれた文書を見つめた。


 不思議と、もう涙は出なかった。


 怒りも、悲しみもある。


 けれど、それ以上に思った。


 もう十分だ。


 十分すぎるほど、見た。


 セレスティアは王妃を見た。


「王妃陛下。本日の記録は、すべて保全されますか」


「されます」


「王妃宮、財務局、書記局、そして第三者立会人の写しも」


「ええ」


 セレスティアは頷いた。


「では、私は一度席を外します」


 アデルが顔を上げる。


「セレスティア」


「今は、これ以上ここにいると、言わなくてよいことまで言ってしまいそうです」


 その声は穏やかだった。


 だが、限界に近かった。


 ノアがすぐに言う。


「付き添います」


 セレスティアは一瞬だけ迷い、頷いた。


「お願いします」


 グレゴールが低く言う。


「まだ話は終わっていない」


 セレスティアは父を見た。


「はい」


 そして、はっきりと言った。


「だからこそ、私が壊れる前に席を外します」


 それは、今までの彼女なら絶対に言わなかった言葉だった。


 限界を認める言葉。


 自分を守るための言葉。


 王妃が静かに頷く。


「許可します」


 セレスティアは礼をした。


 完璧な礼ではなかった。


 少し震えていた。


 それでも、自分の足で扉へ向かった。


 ノアが隣に立つ。


 扉が開く。


 廊下の空気は、小会議室より少し冷たかった。


 セレスティアは一歩出た瞬間、壁に手をついた。


 呼吸が乱れる。


 ノアは彼女のすぐ横に立った。


 触れない。


 でも、倒れそうになれば支えられる距離。


「大丈夫では、ありません」


 セレスティアは苦しそうに言った。


「はい」


「でも、出られました」


「はい」


「私は……駒ではありません」


「はい」


 ノアは、低く答えた。


「あなたは、あなたです」


 その言葉で、セレスティアは目を閉じた。


 涙は出なかった。


 ただ、深く息を吸った。


 小会議室の中では、リリアナが泣きながら記録を続けていた。


 アデルは、自分の恋さえ誰かの都合だったかもしれないという事実の前で、動けずにいた。


 グレゴールは、ついに沈黙では何も守れなくなっていた。


 そして王妃は、空になりかけた箱を見つめていた。


 古い鎖は、すべて姿を現した。


 だが、鎖が見えたからといって、すぐに外れるわけではない。


 ここから先は、それぞれが自分の手で外していかなければならなかった。

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