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私だけが真実を知っているのに、誰も信じてくれない 〜悪役令嬢にされた私は沈黙を選びました。けれど王都は、私を失ってから少しずつ壊れていく〜  作者: 鳳凰院暁月刃夜


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第117話 開けられなかった日を、失敗と呼ばない

 王都にとって、その日は何も起きなかった日だった。


 セレスティア・レイノルドは、まだ母の覚書を読んでいない。


 箱はまだ開いていない。


 返答もない。


 ただそれだけが、王都の茶卓をゆっくりと渡っていった。


「まだですって」


「まあ、まだ?」


「いくら何でも長すぎるのではありません?」


「お母様の覚書でしょう? 読まない方が不自然ですわ」


「でも、北方辺境伯家で大切に扱われているのでしょう?」


「大切に扱うことと、先延ばしは違いますわ」


「箱に触れたという噂もありますけれど」


「触れたなら、なぜ開けないのかしら」


「そこまで来たなら、もう開ければよいのに」


 そこまで来たなら。


 その言葉は、王都ではとても自然に使われた。


 婚約話でも。


 面会でも。


 謝罪でも。


 寄付でも。


 役職の受諾でも。


 そこまで来たなら、最後まで。


 席に着いたなら、話を聞くべき。


 封を受け取ったなら、読むべき。


 手を伸ばしたなら、掴むべき。


 蓋に指をかけたなら、開けるべき。


 王都では、そういう考え方があまりにも当たり前だった。


 だが、北方辺境伯家の一室では、その「当たり前」が静かにほどかれようとしていた。


 セレスティアは、小卓の前に座っていた。


 昨日、箱の蓋に指をかけた。


 蓋は、ほんのわずかに動いた。


 けれど、開けなかった。


 手を離した。


 白湯を飲み、記録した。


『蓋接触あり。

 開封なし。

 中止は本人判断。

 失敗ではなく、境界確認』


 その一文を書いたあとも、失敗という声は完全には消えなかった。


 夜のあいだ、何度も浮かんだ。


 開けられなかった。


 読めなかった。


 ここまで準備したのに。


 ノアも待ってくれているのに。


 王妃宮も、公爵家も、王太子府も、それぞれ扉の外で止まってくれているのに。


 それでも、自分は開けなかった。


 その事実は、朝になっても残っていた。


 だが、もう一つの事実も残っている。


 蓋に指をかけた。


 自分の「まだ」を聞いた。


 手を離した。


 中止した。


 そして、失敗ではないと書いた。


 セレスティアは、その二つの事実の間で揺れていた。


 部屋は整っている。


 窓も短く開けた。


 水もある。


 薄青の布も畳まれている。


 けれど今日は、箱に触れない。


 昨日、蓋に指をかけた。


 今日は、その日を失敗にしないための日だ。


 ノアが入ってきた。


 手には、王妃宮からの返答がある。


「王妃宮より、補足基準が届いています」


「昨日の件ですね」


「はい」


「読みます」


 ノアは封書を小卓に置いた。


 セレスティアは、すぐには開けなかった。


 王妃宮の返答は、いつも丁寧で、時に鋭い。


 読むと助かることもある。


 でも、刺さることもある。


 セレスティアは水を一口飲み、封を開いた。


 中には、王妃宮らしい整った文字が並んでいた。


『蓋接触および開始前中止に関する整理――暫定版一』


 一、文書、箱、封筒、扉等に触れた後でも、本人は開封・入室・閲覧を中止できる。

 二、接触は開封決定ではない。

 三、蓋に指をかけること、封に触れること、扉前に立つことは、それぞれ独立した段階である。

 四、中止は失敗ではなく、本人の境界確認である。

 五、外部者は、接触済みを理由に次回開封予定を推測しない。

 六、本人の「まだ」を尊重する。


 セレスティアは、四番で手を止めた。


『中止は失敗ではなく、本人の境界確認である』


 昨日、自分が書いた言葉と同じだ。


 けれど、王妃宮の紙に置かれると、少し違って見えた。


 自分一人の慰めではない。


 基準になった。


 誰かが同じ場面に立ったとき、その人も使える言葉になった。


「……失敗ではなく、境界確認」


 セレスティアは声に出した。


 ノアが静かに頷く。


「はい」


「私がそう書いたから、王妃宮が合わせてくれたのでしょうか」


「それもあるでしょう。ですが、必要な基準だから作られたのだと思います」


「必要な基準」


「はい」


「私だけのためではない」


「はい」


「私の昨日が、他の誰かの中止権にもなる」


「そう思います」


 セレスティアは、紙から目を離した。


 箱を見る。


 閉じたままの箱。


 昨日、蓋がわずかに動いた箱。


 今日は触れない箱。


 その箱の前で止まったことが、誰かの権利になるかもしれない。


 そう考えると、胸の奥が少し震えた。


 嬉しい、ではない。


 誇らしい、でもない。


 ただ、自分の止まった場所が、無意味な穴ではなく、誰かの足場になるような気がした。


「閣下」


「はい」


「止まった場所にも、名前があると、少し立っていられますね」


「はい」


「昨日は、開けられなかった場所だと思いました」


「はい」


「今日は、境界を確認した場所、とも思えます」


「はい」


「同じ場所なのに」


「名前が変わると、立ち方が変わります」


 セレスティアは、その言葉を気に入った。


 帳面を開く。


『開けられなかった日を、失敗と呼ばない。

 蓋に指をかけた。

 まだ、と感じた。

 戻した。

 王妃宮は、中止を境界確認とした。

 同じ場所でも、名前が変わると立ち方が変わる。

 昨日の私は、失敗したのではない。

 昨日の私は、まだを聞いた』


 書き終えたあと、しばらくその文字を見つめる。


 まだを聞いた。


 それは、昨日の自分へ贈る言葉だった。


 そして、十三歳の自分へ贈る言葉でもあった。


 あの頃、何度「まだ」と言いたかったのだろう。


 まだ休みたい。


 まだ分からない。


 まだできない。


 まだお母様のことを聞かれたくない。


 まだ妹の涙を受け止められない。


 まだ王宮の文書を見たくない。


 けれど、言えなかった。


 言っても、聞かれなかったかもしれない。


 だから昨日、箱の前で聞こえた「まだ」は、あの頃の自分がやっと言えた言葉でもあったのかもしれない。


「私は、昨日の“まだ”を消したくありません」


 セレスティアは言った。


 ノアは、穏やかに頷く。


「消す必要はありません」


「でも、開ける日はいつか来るかもしれません」


「はい」


「そのとき、昨日の“まだ”は間違いだったことになりますか」


「なりません」


「開けられた日が来たら、開けられなかった日は失敗ではなくなるのですか」


「いいえ」


「では?」


「開けられなかった日も、その時点で意味があります。開けられた日が後から来ても、昨日の意味は変わりません」


 セレスティアは、深く息を吐いた。


「後から成功が来ないと、失敗ではなかったことにならない気がしていました」


「よくあることです」


「昨日の中止は、いつか開けるための前段階だから意味があるのではなく、昨日の中止そのものに意味がある」


「はい」


「難しいです」


「はい」


「でも、大事ですね」


「はい」


 その会話のあと、北方辺境伯家から王妃宮へ短い追記が送られた。


『本人所感追記。

 開けられた日が後日来るかどうかに関わらず、開けられなかった日は失敗ではない。

 中止そのものに意味がある。

 回答不要』


 王妃宮では、その追記を読んだリリアナが、机に両手を置いたまま動けなくなった。


「中止そのものに意味がある」


 彼女は呟いた。


 マルタが頷く。


「はい」


「成功の前段階だから意味があるのではなく」


「はい」


「中止した日、それ自体に」


「はい」


 リリアナは、昨日の自分の記録を思い出した。


 姉が蓋に指をかけたと知って、「次は」と思いかけた自分。


 次へつながるから意味がある。


 進んだから価値がある。


 そんな見方を、まだしていた。


 姉の中止を、次の開封へ続く階段として見そうになった。


 でも、違う。


 中止した日は、中止した日として守られるべきだ。


「マルタ様」


「はい」


「私は、お姉様の昨日を、未来の開封のための踏み台にしそうになりました」


「はい」


「それは危険ですね」


「危険です」


「昨日は昨日として、置く」


「はい」


「次があってもなくても」


「はい」


 リリアナは、記録帳を開いた。


『姉の中止について追記。

 中止そのものに意味がある。

 私は、次へ進む前段階として見そうになった。

 危険。

 姉の昨日を、未来の開封の踏み台にしない。

 開けられなかった日を、開ける日の前座にしない。

 昨日は、昨日として守る』


 書いている途中で、リリアナはペンを止めた。


「昨日は、昨日として守る」


 自分で書いたその一文が、少し胸に響いた。


 姉の昨日だけではない。


 自分の昨日も。


 失敗だと思っていた日。


 泣いてしまった日。


 手紙を送れなかった日。


 未送付綴じへ入れた日。


 それらも、未来に成功しなければ意味がないわけではない。


「エルン」


「はい」


「未送付綴じへ入れた手紙も、いつか上手な手紙を書けるようになるためだけに意味があるのではありませんね」


 エルンは少し考えた。


「送らなかったその日に、もう意味があります」


「はい」


「紙も守られました」


「そこですか」


「大事です」


 リリアナは少し笑った。


 マルタも、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「王妃宮補足に追記します」


 リリアナは言った。


『中止日保護に関する追記』


 一、中止は、後日の成功や完了を前提にして初めて意味を持つものではない。

 二、中止した日そのものに、本人の境界確認としての意味がある。

 三、外部者は「次はできる」「次へ進んだ」と解釈して、本人を促さない。

 四、未完了の日を、未来の完了の踏み台として扱わない。

 五、昨日は昨日として守る。


 五番を見て、マルタが言った。


「少し詩的ですね」


「だめですか」


「いいえ。覚えやすいです」


「では、残します」


 王妃宮の補足は、内部で共有された。


 そして、その日の午後、思わぬところへ波及した。


 若い令嬢たちの縁談控室である。


 王妃宮では、寄付事業や礼法講義に参加している若い令嬢たちが、控室で休むことがある。


 その日、三人の令嬢が小声で話していた。


 リリアナが部屋へ入る直前だった。


「昨日の面会、最後まで座っていられなかったの」


 一人が言った。


 栗色の髪の、まだ十六歳ほどの令嬢だ。


「途中で気分が悪くなって、退出したのですって?」


「ええ。お相手のお母様がずっと家のしきたりの話をなさっていて。私、返事をしなければと思ったのだけれど、声が出なくなって」


「それで?」


「母に、失礼だったと言われたわ」


 令嬢は、膝の上で手を握りしめた。


「でも、王妃宮で中止権という話を聞いたでしょう。私、あれを思い出して、立ったの。退出します、と言えたの。最後まで座れなかったから失敗だと思っていたけれど……」


 そこで、彼女は言葉を詰まらせた。


 隣の令嬢が小さく言う。


「中止は、失敗ではなく境界確認」


「そう。それを思い出したの」


 三人目の令嬢が、少し強い声で言った。


「それでよかったのよ。縁談の席だって、出口のない部屋ではいけないわ」


「でも、相手の家からは不満が来ると思う」


「来たら、王妃宮の基準を引用しましょう」


「あなた、強いわね」


「怖いわ。でも、怖いままでも引用はできるもの」


 そのやり取りを、リリアナは扉の外で聞いてしまった。


 入るタイミングを逃したとも言える。


 けれど、その会話を聞いたことを、彼女はすぐには悪いと思えなかった。


 姉が箱の蓋に指をかけて戻した日。


 その記録が、若い令嬢の縁談面会を途中で止める力になっている。


 リリアナは、胸の奥が熱くなった。


 姉は知らない。


 きっと、知らされない方がいい。


 姉の境界確認を、誰かの美談にしてはいけない。


 でも、意味は広がっている。


 静かに。


 押しつけではなく。


 扉を叩かずに。


 マルタが背後から静かに声をかけた。


「入らないのですか」


 リリアナはびくりとした。


「マルタ様、驚かせないでください」


「扉の前で固まっておいででしたので」


「聞こえてしまいました」


「はい」


「これは、記録してよいのでしょうか」


「個人名を伏せれば」


「姉へは?」


「送らない方がよいでしょう」


「はい。分かっています」


 リリアナは、小さく微笑んだ。


「でも、姉の昨日が、誰かの今日を少し守りました」


「はい」


「それを姉へ背負わせない形で、制度として残します」


「よい判断です」


 その後、王妃宮では、縁談面会、謝罪面会、親族面会、文書受領に関する中止権の応用基準が作られた。


『開始後中止権の応用――暫定版一』


 一、面会の席に着いた後でも、本人は中止・退出を申し出ることができる。

 二、文書を受け取った後でも、開封・閲覧を中止できる。

 三、謝罪を聞き始めた後でも、途中で止めてよい。

 四、縁談、親族面会、謝罪、説明、事情聴取において、開始したことを理由に最後まで続けさせてはならない。

 五、中止した者を未熟、不敬、冷淡と即断しない。

 六、中止後の再開予定を外部者が勝手に決めない。


 この基準は、正式な王国法ではない。


 王妃宮内部の補足でしかない。


 それでも、若い令嬢たちの間で静かに広がった。


 「あの席、途中で立ってもよいらしい」


 「謝罪を聞いていて苦しくなったら止めてもよいらしい」


 「封筒を受け取っても、開けないままでよいらしい」


 「縁談の席で気分が悪くなったら、退出しても失敗ではないらしい」


 らしい。


 らしい、という曖昧な形で。


 それでも、確かに広がった。


 王太子府にも、その波及は届いた。


 ラウルが、少し困った顔で報告書を持ってきた。


「殿下、若い令嬢たちの間で、開始後中止権という言葉が広まりつつあります」


 アデルは顔を上げた。


「よいことだ」


「縁談の面会で途中退出する例が出ています」


「よいことだ」


「相手家から苦情が来ています」


「苦情を記録しろ。途中退出を責めた家として」


 ラウルは少しだけ目を丸くした。


「強く出ますね」


「途中退出できない縁談の方が問題だ」


 エドがすでに筆を走らせている。


「殿下、王太子府としても見解を出しますか」


「まだ早い。だが、王妃宮基準を否定しない。苦情が来た場合、本人の体調・境界確認を優先するよう返答する」


「はい」


 アデルは、少し考えてから続けた。


「それから、王太子府の面談にも開始後中止権を明文化する」


「内部通達ですね」


「ああ」


「理由は」


「人は、座った後でも苦しくなる」


 エドの筆が止まった。


 アデルは目を細める。


「何だ」


「今の、貼れます」


「貼るな」


「王太子府の内部通達に入れます」


「それならいい」


 グレゴールのもとにも、若い令嬢の縁談退出の話は届いた。


 彼は報告を聞き、しばらく黙っていた。


「昔なら、行儀が悪いと言ったかもしれない」


 家令が答える。


「はい」


「最後まで座るのが礼儀だと」


「はい」


「だが、最後まで座ることが、その娘を守るとは限らない」


「はい」


「セレスティアは、最後まで座り続けた」


「はい」


「何度も」


「はい」


 グレゴールは、目を閉じた。


「座り続ける娘を、私は誇った」


「はい」


「今は、立てる娘を褒めるべきなのだろうな」


「褒めるより、立てる場所を作るべきかと」


 グレゴールは少しだけ笑った。


「お前は、本当に褒めさせてくれない」


「褒め言葉が負担になる場合もありますので」


「王妃宮だな」


「はい」


 夜、北方辺境伯家に、王妃宮からの報告が届いた。


 ただし、個人名は伏せられていた。


『王妃宮内部において、開始後中止権の応用基準作成。

 縁談面会、謝罪面会、文書受領等に適用検討。

 個別事例非共有。

 本人の先日の境界確認を、進展圧ではなく中止権整理として扱う。回答不要』


 セレスティアはそれを読み、しばらく黙った。


「広がったのですね」


 ノアが頷く。


「はい」


「個別事例非共有」


「はい」


「誰に何があったかは、書かれていない」


「はい」


「でも、縁談面会、謝罪面会、文書受領に」


「はい」


 セレスティアは、小卓に報告を置いた。


 胸の奥が静かに揺れている。


 自分の昨日を美談にされるのは嫌だ。


 だが、自分の昨日から誰かの中止権が整うことは、嫌ではなかった。


 ただし、それを背負いたくはない。


 誰かを救うために蓋に指をかけたわけではない。


 昨日の自分は、自分の「まだ」を聞いただけだ。


「私は、誰かのために開けなかったわけではありません」


 セレスティアは言った。


「はい」


「誰かのために止まったわけでもありません」


「はい」


「でも、止まったことが誰かの助けになるなら、それは……」


 言葉を探す。


 誇り?


 違う。


 責任?


 違う。


 慰め?


 少し近い。


「少し、報われる気がします」


「はい」


「でも、報われるために止まったわけではありません」


「もちろんです」


「難しいです」


「はい」


 セレスティアは帳面を開いた。


『王妃宮で、開始後中止権の応用基準が作られた。

 縁談面会、謝罪面会、文書受領にも使われるらしい。

 私は誰かのために蓋から手を離したわけではない。

 私の中止を、美談にしない。

 でも、誰かが途中で止められるようになるなら、少し報われる気がする。

 報われることと、背負うことは別。

 私は、誰かのために次を急がない』


 書き終えて、セレスティアは箱を見た。


 昨日と同じく閉じている。


 今日は触れていない。


 それでいい。


「閣下」


「はい」


「今日は、箱に触れませんでした」


「はい」


「昨日を失敗と呼ばないために、今日は触れませんでした」


「はい」


「これも、中止権の一部でしょうか」


「そう思います」


「続けない権利」


「はい」


「再開しない日を選ぶ権利」


「はい」


 セレスティアは小さく頷いた。


 箱の横に新しい紙を置く。


『開けられなかった日を、失敗と呼ばない』


 もう一枚。


『中止そのものに意味がある』


 さらに一枚。


『昨日は、昨日として守る』


 そして、最後にもう一枚。


『私は、誰かのために次を急がない』


 その紙を置くと、箱の周りはまた少し厚くなった。


 言葉の壁。


 言葉の庭。


 どちらにも見える。


 セレスティアは、手を伸ばして紙の端を整えた。


 箱には触れない。


 紙だけを整える。


 それで十分な日だった。


 夜、灯りを落とす前に、セレスティアは箱へ静かに言った。


「お母様」


 今日は、声が少し落ち着いていた。


「昨日は、蓋に指をかけて戻した日でした」


 箱は答えない。


「今日は、それを失敗にしない日でした」


 そして、少し間を置いて続けた。


「明日は、まだ分かりません」


 その未定が、今夜は少し優しかった。

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