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白夜に愛をうたう星  作者: おジョー
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with Lionheart 37

二ヶ月とか開いててビックリする。


本当にお待たせしました。

予定していたプロットから少し外れ過ぎてしまって投稿が遅くなりました、申し訳ない。

なんの予定も立てず、本能の赴くままに怠惰な時間を楽しむ。

日程に追われるような旅ではないのだから、たまには、そんな日が一日くらいあってもいいだろう。

そうして、次に向かう場所を話し合って、もう少し、現実から離れた場所で自分の気持ちにも向き合って。

王都へ戻ったら煩わしい問題を一掃して、今度はそこで生きていくためのこれからを話し合う。


(そう思っていた時が、私にもありました…)


というか、昨日はそうするつもりでいたのだ。

この世界は決して小さくない。

国内だけでものんびりと巡れば三ヶ月はかけられるだろう。


昼頃に起きて、

三人で昼食をいただき、

本屋で地図を買って、

猫たちに挨拶をして、

美味しそうな食事処を見つけて楽しい時間を過ごす。


(そう、決めていたのに…!!)


眩しさに瞼を開けば、すぐ隣にレオンハルトがいて、溶けそうな瞳で悠理を見つめていた。

差し込む陽の強さと高さから考えて、今はいつも起きている時間より二時間は遅い時間だろうと考える。

大変に寝坊で、大変に怠惰で、大変に良い。

レオンハルトを部屋へ帰し、それぞれ支度を整えてからマリアを部屋まで迎えに行き、宿屋の近くでブランチをとることにした。

余談だが悠理はこの時、服でギリギリ隠れない位置についた痕が見つかってため息を隠しもしないマリアに髪型を変えられた。

そうして訪れた店で飛び込んできた話を聞くまで、ある程度無計画に過ごすという計画は、順調だった。


「おい、聞いたか?第一王子の婚約が解消されるかもってよ」


他の客がそう語るのを聞いた瞬間オレンジジュースが気管に入りかけた。


(どういうことなの)


ルドルフのそれは、国同士の友好を深めるための婚約ではなかったか。

もちろん友好を深めるなんていうのは百パーセントではないにしろ建前で、そこには互いに様々な思惑やしがらみがあって、だから相手の国の姫君はまだ幼いながら親元を離されてこの国に滞在し、ルドルフないし嫁ぎ先となるアルテイアの文化や生活に馴染んでもらい、彼女の成人を待って成婚、となるはずではなかったか。

それが、今になって解消とは。

しかも王城でまことしやかに囁かれているならまだしも、王都から馬車で三日かかるこの地で生きている人間の口にのぼるだなんて、「解消"かもしれない"」と言われていたが、既にほぼ決定事項なのではないだろうか。


「…はぁーーーーーー」


噂話をしていた客達が席を立ってから、悠理は盛大にため息をついた。

彼らは「破棄」ではなく「解消」と言っていたから、もしかしたら二国間でこの話は円満に進んでいるのかもしれない。

国力をくらべても、こちらが一方的に飲み込ませるなんてことはできないはずだ。

で、あれば。

かつてのように、大きな戦に発展することは、ないだろう、恐らく。


(…めいびー、…あいほーぷそう…)


かと言って楽観視はできない。

タイミング的にも、少し前のルドルフの様子からも、恋人(仮)で魔女(仮)のジュエルが関わっていることはほぼ間違いない。

それに、「婚約者がいなくなったからジュエルを妃に!」なんて言い出しかねない輩がいないとも限らない。

いや、むしろいる。

それが口にした本人の意思であろうとなかろうと関係ない、大事なのは、そう口にするのが誰かということだ。

そして悠理の頭に浮かんだ言い出しかねない輩は、今のところ、この国を統べる存在。


「…チッ、クソガキと小娘が…、いつまでも調子づきやがって…」


ついレディにあるまじき悪態が口をついて出る。


「はぁーーー」


再び大きなため息をこぼして、悠理はおもむろに京子からもらった耳飾りを握った。


リィン。

小さく音がなり、ほんの僅か待ってから、京子の声が聞こえる。


『……はよ、悠理』


起き抜けだろうか、掠れた声が妙に色っぽい。


「おはよう、京子。突然だけど、私たちは早急に王都へ帰ることになりそうだから、その連絡」


『…ん…、……んん…?』


京子はどうやら本当に悠理からの通信で起きたようだ、声は耳に届いているが、話している内容が脳へは達していないだろう。


「起こしちゃってごめんね、またしっかり目が覚めてるだろう時間にかけ直すよ」


『ん…、んんん…、…すみ…』


意味を成さない言葉を最後にふつ、と音が途切れた。


「京子への連絡はまた後でするとして、退室の準備をしに戻ろうか」


「わかった」


「かしこまりました」


席を立って、ふと気づく。


「ピアスを作る余裕は、なさそうだね」


ルドルフへの贈り物を考え直さなくてはならない。


「宿へ戻る前に昨日の店も寄ろうか」


以前贈ったものと同じものでなければもういっそ許されるだろう。

別に話の為に用意する土産でもないのだから。


「それでしたらユーリ様、店内にルドルフ様のお好きそうなペンを見つけております」


「流石うちのマリア、優秀」


「恐れ入ります」


食事と会計を済ませ、雑貨屋でルドルフへの土産を買い、三人は宿屋へ戻った。

元々そこまで長居する予定のなかった宿だ、気が乗らずとも帰り支度は早くに終わり、悠理は再び京子からもらった耳飾りに魔力を込める。


リィン。

そろそろ聞き慣れてきた小さな音。


『あー、悠理、さっきはごめん、完全に寝ぼけてた』


「いや、こっちこそ寝てる時にごめんね」


『いや、かまわないよ、あの後すぐナイトに叩き起されたし…、それで、どうしたの?』


やはり先程の会話は京子の記憶に残っていないようだ。


「あー、もう少しゆっくり旅行を楽しむ予定だったんだけど、不測の事態が発生したので今夜にはここを出ることになったよ」


『なんと』


昼に聞いた噂をそのまま話せば、耳飾りの向こうで京子が絶句しているであろう気配を感じた。


『……なるほど、それは…、戻らざるをえないね…、私も急いでそちらへ向かった方がいい?』


「ううん、そばにいてくれたら私としてはものすごく心強いけど、ちゃんと京子が全部済んだぞ!って思えるようになってからで大丈夫だよ」


『なるはやでいくわ』


「お?おう、ありがとう?え?」


悠理は甘えるのは下手だが、気持ちを言葉で表すことが苦手というわけではない。

京子は昔からそんな悠理に翻弄されていたし、それを苦痛には思っていなかった。

むしろ甘えるのが下手な分、感情を素直に示された時の喜びもひとしおで、多少の無理ならきかせてしまえると京子自身自覚している。


『ここから王都まではのんびり走って三日くらいだっけ?何もないとは思うけど、着いたらまた連絡をしてくれる?』


「いや、転移するのですぐです」


『なんだって』


「祝福として望んだわけではありませんが転移魔法が使えるので、さらに膨大な魔力を持つ人間が二人いるので、ここから家までなら休憩をはさまずに飛べます」


実際は祝福として得た知識と全属性適応という魔法による効果なのだが、それを説明する必要は今はないだろう。


『………それでも、一応ついたら教えて』


「ふふ、りょーかい、それじゃ、また」


京子との通信を終えて部屋を出れば、レオンハルトとマリアも準備を終えて廊下で待ってくれていた。


「お待たせ、ここを出たら路地裏で猫たちに挨拶だけして、街を離れよう。帰りは転移を使うからすぐだけど、その前に二人への贈り物に魔力を込める。馬車で三日の距離なら、その後の転移も私だけの魔力で問題なくこなせると思う」


二人は軽く頷くと、悠理について歩き出す。


「はー、全然のんびりできなかった…、今度はもっとゆっくり、色んなところ見て回ろうね、それこそ観光で経済回してるようなとこへ行ってさ」


その時は京子もナイトもいるだろうから、今回のように宿に泊まるのではなく、建物を借りてしまおうと悠理は早くも次回の旅行に思いを馳せた。


(…レオへのご褒美も、必要だしね)


二人で南の空を見るのだ。

それまでに、京子に呪いが解ける瞬間の判別方法についても聞いておかなくては。

レオンハルトとなら、きっと共に老いることができるだろうから。




悠理の幸せな未来のために。

オイタの過ぎる愚かな役者には、そろそろ舞台を降りてもらうことにしよう。

やっとジュエルちゃんとバトりそうなとこまできました。


そういえば。

恐らくですが、始めのうちのサブタイトルが変わります。

何故って?

あと3年も待てないからです、うちのレオンハルトくんが。

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