with Lionheart 35
京子の家を出て、宿まで三人で歩きながら翌日の予定を決めていく。
先程京子にも話したように、一日のんびり過ごそうとは思っているが、プレイディア領は別に観光に特化しているというわけでもない。
であればいっそ、昼まで惰眠を貪り、腹が減ったら起きて、午後はふらりを街並みを歩いて猫達に会い、また腹が減ったら適当な店で好きな物を食べる、なんていう怠惰な日を過ごすのもいいだろう。
といってもマリアは恐らくいつもとかわらないくらいの時間に起きて剣の稽古をした後に身だしなみを整えておくだろうから、悠理がゆっくりと準備を終えたら部屋をたずねればいい。
一般的な侍女のようにベッタリ侍って世話を焼かせることは殆どないが、それを許してくれる彼女の存在は本当にありがたい。
必要な時に必要な距離感で傍にいてくれる有能な侍女に部屋の前で就寝の挨拶を告げる。
「おやすみマリア」
「おやすみなさいませ、ユーリ様、レオンハルト様」
宿の部屋は悠理が奥の角部屋を、一番階段に近い部屋をマリアが使い、その間をレオンハルトが使っている。
本来なら主人の姿が消えるまで扉の前で見送るが、マリアは空気が読めるのでとっとと部屋に引っ込んだ。
二人に当てられたくなかっただけとも言うが。
ソファから立ち上がる際にエスコートするように繋がれた手は帰り道でも離れず、今この瞬間も悠理とレオンハルトの手のひらは重なったままだ。
京子の家で悠理が言った「あとで」は、レオンハルトにとって今なのだろう。
勿論悠理が本気で嫌がれば刺し違えてでも二人を引き離すつもりでいるが、ここ最近のレオンハルトがあからさまに詰めだした距離に戸惑いこそ見せるものの、まんざらでもないようだし、悠理曰く「旅の恥はかき捨て」だそうだから、マリアは扉の内側で小さなため息を一つついて、昼までどうやって過ごすかを考え出した。
「…れお?」
「なーに、ユーリ」
「あの…手を…そろそろ離さないと、部屋に入れない、な、って…」
「ねぇユーリ」
すり、とレオンハルトの長い指が悠理の白い手の甲を撫でる。
「ひぇ…、な、なんでしょう…」
「明日は、ゆっくり起きるんだよね?」
「そのつもり、ひゃっ…」
何度も往復する親指がもたらすくすぐったさに肩が揺れても、繋がれた手が離れる気配はない。
「ユーリ、さっき、あとでね、って、言ったよね?」
「…んんんん…!?」
なんの話だ、と一瞬思ったが、すぐに思い出した。
京子の前で近すぎる距離が恥ずかしくて、とにかくその場を収めようと、何も考えずに「待て」をさせた。
そしてそんな会話をすっかり忘れて、「明日はのんびりする、昼まで寝る」と宣ったのは、誰でもない悠理自身だ。
逃げ出したつもりでなんなら自分で袋小路を作って入り込んだ事実に気づいた時にはもう遅い。
繋いだ手を持ち上げ指先に口付けるレオンハルトの、伏せられたまつ毛から反応を伺うように覗き見えるアンタレスがゆらりと光っているのが見えた。
「ユーリの部屋から、空は見える?」
とろりと蕩けた瞳に「否」を返せるはずもなく、目の前にいるのが自分を捕らえたがっている狼だとわかっていながら、悠理はレオンハルトを部屋に招き入れた。
これムーンだったらレオンハルトくん大勝利じゃんって感じですがここは全年齢なろうなのでレオンハルト残念ですね!ドヤ顔
イチャイチャはさせてやるから我慢したまえ思春期。




