with Lionheart 29
「おはようマリア、昨日はよく眠れた?」
「…おはようございますユーリ様、お気遣いありがとうございます、よく寝ました、従者失格な程度には…本当に…どうお詫びしたらよいものか…」
朝。
部屋に差し込んだ晴れやかな日差しに不似合いな雰囲気でテーブルについているマリアは、どうやら昨日の自分をハッキリしっかり覚えているようだ。
「ははっ、旅の恥はかき捨てって言うし、気にしなくていいよ、私もまぁまぁやらかしてるし」
(京子に色々ぶっちゃけたりとかレオに甘えたりとかな!!!!)
思い出すだけで体温が上がる。
「おはよう、二人とも早いね」
「お、はよう、レオ。私は今きたところ」
「おはようユーリ、これ、昨日ミヤコから預かった耳飾り。ユーリに渡してくれって」
そういえば、そんなやりとりをしていたような。
しかし悠理はこの耳飾りがそもそもどんなものなのか知らない。
曖昧な表情を察したのか、それがなんなのか聞く前にレオンハルトが言葉を続けた。
「肌に触れてる状態で魔力を込めればミヤコと話ができた」
(便利か!!!!)
つまりこれは遠い過去に使い慣れた携帯電話のようなものであると。
悠理だって物に魔力を込められるのだから似たようなものは作れるだろうが、如何せんそれを必要とする相手がいなかったので、作ってみようとさえ全く、一ミリも、思わなかった。
仕組みがわかれば今回の旅でも大いに役立つのではなかろうか。
そこまで考えて、ふと別のことを思い出した。
数年前、ルドルフへ贈ったオルゴールだ。
(あれには、たしか…)
悪いものを祓うとされる銀細工を施し、いくつか効力を重ねたはずだ。
「…レオ、昔ルドルフに贈ったオルゴール、今どこにあるか知ってる?」
「執務室で見たことはありませんね…、確か以前、あれを聞くとよく眠れるからと、ご自身の寝室に置いていると仰っていました、……そうかだから」
レオンハルトにも思い当たることがあるらしい。
視線で続きを促す。
「早朝に会う兄上は、ジュエル嬢に誑かされる前の聡明で優しい方です」
恐らく黒だろうと思っていたものが確実に黒となっていく。
マリアが町の住人から聞いてきたことも併せれば、ほぼジュエルは魔女とみて間違いないが、つきつける証拠がない。
そもそも人が魔女である証拠など、あるのだろうか。
(それに、必要なのはそれだけじゃないんだよなぁ)
そう、悠理達が探すべきなのはジュエルが魔女である証拠ではなく、国王を呪い、その罪を擦り付けたという証拠だ。
(まぁ、それを探すならこんなとこ来てる場合じゃないんだけどな!)
事件はプレイディアでなく現場で起きているのだから、その証拠を探すなら王都でするべきなのだが、仕方がない、旅行がしたかった。
「…よし、きめた。今日はこの後、猫たちの話を聞いて、お土産を探します」
「おみやげ」
「ルドルフとジュエルに、レオンハルトからね」
「……は?」
「あの子あんまり頭良くないから、レオからおみやげなんてあったら他のことはどうでもよくなりそうじゃない?」
ジュエルをバカにしすぎている自覚はある。
レオンハルトに嫌な役どころを押し付けているのもわかっている。
だが仕方がない、悠理から何か渡そうとすれば警戒されるのは目に見えている。
「………上手くいった際のご褒美はありますか?」
「なにがいいんだ」
「考えておきます」
笑顔が怖い。
「…あぁ、それから、マリア」
「はい」
「昨日会った京子だけど、うちで暮らすことになったから」
「かしこまりました」
「ていうか、改築するか…?」
あの頃の悠理はとち狂っていたのだろう、有り余る金と時間で一人で暮らすなら有り得ないだろう部屋数の家ではあるが、成人四人で暮らすとしたら、せまかったりするのだろうか。
「…色々片付いたら考えるかぁ」
まずは今日を元気よく楽しく過ごすために、目の前の朝食を平らげることにする。
いつも待っていただきありがとうございます。
評価やブックマークなど、「待っていてくれる人がいる」って目に見えると頑張ろうと思えます。
これからもどうぞよろしくお願い致します。




