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白夜に愛をうたう星  作者: おジョー
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with Lionheart 27

正直に言えば、目先の問題が大きすぎて、なんせ国家を揺るがしかねない事態だ、おとぎ話に出てくるような、暇を持て余した神々の遊びに付き合ってやるような、「真実の愛とはなんぞや」なんてことを気にしている場合ではない。


「…あのですね、私たちがここにきた理由を、お話していませんでしたね…」


「あぁ、なんか、人を探してる?ん?人の過去を探ってる?だっけ?ナイトからちらっと聞いたような」


悠理は自分たちがプレイディア領へ来るに至った理由をかいつまんで説明した。


「えっ、なにその女?えっ?やばない?」


「いやヤバいんですよ、雑に嵌められたのもなんやねんて感じなんだけど、このままルドルフ氏が現実見てくれないとマジで戦争が起こりかねないんですよ、冗談じゃなく」


そうなればかつての戦争で功績をあげた聖魔女ルシフェルである悠理は、確実に前線へ送られるだろう。


「えー…、こわ……、…で、なんでいきなりその話?」


「……あの、ですね…、その…ジュエルの事とか、もろもろ全部が片付いたら…、ですね…」


「結婚しようって?フラグじゃねーか」


「それな!?いや私は死なないけど!」


「えっ?待って?プロポーズされたの??」


正確には全部が片付いたらちゃんとプロポーズをしますだが、大した違いはない、悠理は小さく頷いた。


「っかー!!!!あまじょっぺぇなぁ!?なんだそれ!?なんの心配もいらないんじゃん!?」


「いやでもね、ホント、いい男なんだけどね!?だからこそ、こう、ババショタにも程があるじゃない!?」


「見た目は子供、頭脳は大人ってか!?いやいや大丈夫っしょ、なんなら今でも外見だけならレオンハルトくんのが上に見えないこともないっしょ!?」


二人ともいい感じに酒が回ってきたようだ。


「…それにっ、レオの気持ちが…、刷り込み的なもの、なのかもしれない、し…」


テンションに任せて騒いでいた悠理が呟く言葉に、京子は目を剥いた。


(いやあんだけ執着されてて愛されててプロポーズまでされて刷り込みはねぇわ)


親友と初めてする恋愛話に抱く感想ではないとはわかっているが、敢えて言おう、京子はだんだん馬鹿らしくなってきたと。

しかし目の前の100年を生きる魔女は、真剣に悩んでいる。


「……悠理はさ、レオンハルトくんのこと、どう思ってるの?問題とかしがらみとか呪いとか全部抜きで考えてさ」


「ぜんぶ、ぬきで…、………それは…、好き、だと、思う…」


「レオナードさんより?」


「………………レオナード様、は…、好きだった、すごく…、でも、自分の呪いについては、話せなかった…レオナード様の気持ちがわからなかったからっていうのも、あるけど…」


「うん、でも、彼となら呪いが解けたかも知れないって思っているんだよね?」


「ずっと、愛してくれてたって、…最期に…教えてくれて…、だからきっと、もし私が、素直に話していたなら、と、思わずにいられなかった」


京子が思うに、今の悠理に必要なのは話し相手だ。

どれだけ頭を捻っても辿り着けない答えは、言葉にしてみると意外に近い場所で手を招いているのが見えてきたりする。


「呪いっていうのは、解けたとき、そうだとわかるようにできてるのかな…」


「わかるよ。花火が降り注いで城のガーゴイルが天使に戻って…、みたいな派手な演出はないけどね」


それについて京子は既に確認済だ。

確かめる方法も聞いている。


「もし、もしもね、私がレオの気持ちに応えたとして、キスした時に、呪いが解けなかったら…」


どちらかの愛が、真実のものではないということになるのだろう。


「それって、めちゃくちゃに、怖い、ことじゃない…?」


「なるほどね、それが一番不安なわけか。……真実の愛なんて、死ぬ時にやっとわかるもんだと思うんだよね、私は」


あくまで自論ね、と付け足して京子は言葉を続ける。


「結婚式で交わすキスは、一応あれ、神様に立てる誓いなわけじゃん。でもその誓いを破ることは往々にしてある。けど理由はそれぞれで、もしかしたら心だけは愛し合っているけど離れなくてはならないのかもしれないし。逆に、物理的にはそばに居るけど心が別の人の元にあることもある」


挙げた二択なら、どちらが真実の愛といえるのか。


「結局人間なんて生きてる限り心も取り巻く環境も移ろうものだから、最後の愛だと思いたいものが真実になるのは死ぬ時だけだと思うんだ。けどまぁ少なくとも、私が判断をくだすなら、これで呪いが解けなかったらどうしよう、なんて考えてるうちは真実の愛とは認めないかなぁ。いや私も判断される側なんですけどね!」


刺さった。

ぐうの音も出ない。

悠理はどんな気持ちがあれば真実の愛と言えるのかを考えていたが、悠理の抱いている不安はそれには必要のない感情だ。


「…なるほどなぁ…!?」


ものすごく納得した。


「お役にたちました?」


「いやー、やっぱ持つべきものは親友だわ…、私の中で心の友よー!ってガキ大将が両手広げて叫んでるわ…」


空き地でのリサイタル待ったナシだ。


「それはようござんした」


「いやー…ほんと…ありがとね…、なんかこう、ストンと納得したわ…今度は京子の話を聞かせてほしいわ…」


祝福については聞いたが、こちらに来てから今までどうしていたのか、黒猫ナイトとの出会いも気になるところだ。


「んー、私はこっちにきて、魔法使いの弟子になった…、正確には魔法使いとして生きてた魔女の弟子」


だから悠理が魔女の間で呼ばれる名前も知っているということだ。


「師匠が亡くなったので住んでたとこを出て、ご飯が美味しいこの町に部屋を借りて住んでる。だから私が魔女と呼ばれる存在なのを知ってるのは悠理達以外誰もいない、これから先どれだけ生きるかわかんないのに、引越しとか旅行とか自由に出来ないのは嫌だからね」


魔女の行動には制限若しくは監視がつく。

実は今回の悠理達にも監視役がついてくる予定だったが、聖魔女の名前と第二王子であるレオンハルトが一緒なのだぞと言って捩じ伏せてきている。


「じゃぁ京子は結婚が出来るんだね…!!」


「相手がいればね」


探す気はなさそうだ。


「ナイトくんとは?ここで出会ったの?」


「ううん、ナイトと会ったのはこっちの世界にきてすぐ。子猫の時に虐められてるところを助けた。成猫になって使い魔として契約したから、この子は私と同じ時を生きる」


「なにそれ知らないやつ」


「…ご存知、ないのですか!?」


こくりと頷く。

知っていれば、何十年と孤独に過ごすこともなかったのに。

城の図書室の本は全て読んだが、そんな記述を見た記憶はない。


「あー、まぁこれは、誰もができるわけじゃないから…けど魔女は割と契約してること多いんだけどな…使い魔が欲しくなったら教えてあげるよ」


悠理は再び頷いた。


「あと聞きたいことは?」


「んん…、すぐには浮かばないな…、あっ、そうだ、これからもここで生活するの?」


折角再会出来たのだから、この縁は大事にしたい。


「んー、悩んでる、そろそろ見た目の変化がないと怪しまれる時期ではある…」


子供に比べたら著しい変化は少ないだろうが、それでもやはり多少は見た目に変化があるのが加齢する生き物だ。

京子は物理的にかなり人の近くで生活をしている。

住み心地の良いこの町から出るのは惜しいが、善人たる魔法使いであることを疑われるわけにはいかない。


「……魔女と魔法使いが近くにいるのは、疑われますかね…?」


魔法使いが実は魔女である可能性。

要約すると悠理は、自らの近くに来ないかと京子に言っている。

そして京子は昔から、出会って間もない頃から、悠理に甘い。


「………いや、いいよ、君たちがここから出る時に、一緒に行くよ」


一人で生きていくなら、魔女というレッテルは邪魔だったから隠していただけだ。

誰かといるなら、ましてそれが悠理であるなら、別に疑われようがバレようが構わないと思える程度のことだ。


「!嬉しい!どうする?一緒に住む?それとも王都に家を借りる?」


「悠理はどっちがいいの?」


「……一緒に、いたい、です」


この顔だ。

甘えベタな悠理が一生懸命に甘えてくる瞬間。

これに京子は勝てたためしがない。


「ふふっ、いいよ、当然空いてる部屋はあるんだろうね?」


「あるよぅ!食卓も広くしたし、庭もあるし、ピアノもあるよ!」


空き部屋は長らく放置していたので言うまでもなく掃除が必要だが、そこは有能な侍女マリアがすぐキレイにしてくれるだろう。


「じゃ、決まりだ、こちらでもよろしくね、悠理。改めて乾杯しようじゃないか?」


「えー、めっちゃ嬉しい!京子大好き!!乾杯する!」


京子は悠理が消えた後のあちらの世界のことなども話そうかと思っていたが、聞かれないならわざわざ言う必要もないだろう。

考えていたよりも早くレオンハルトを呼ぶことになりそうだが、親友を独り占め出来る時間はこの先そうそうないだろうから、麗しの第二王子にはもう少し焦れていてもらうことにして、二人は鳴らしたグラスを満たす美酒を煽った。


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