↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白夜に愛をうたう星  作者: おジョー
36/63

with Lionheart 17

ジュエル・プレイディア。


プレイディア子爵家令嬢。

半年ほど前に養子として迎え入れられるまで、孤児院にいたとも子爵がお手つきにした平民の母親と暮らしていたとも言われており詳細は不明。

ゆるく波打つストロベリーブロンドのロングヘア。

空を切り取ったようなスカイブルーの瞳は常に潤んでいて乾燥とは無縁。

肌は白いが、頬と唇は紅を引いたような桃と赤色。

身長は悠理より少し低めだがたわわな二つの果実は悠理と比べて大きい。

回復特化型、というより、治癒魔法が使えるらしい。




ルドルフの恋人(仮)について、人と動物の力を借りて調べがついたのはこんなところだ。


(えっ?乳の話いる?いらなくない?)


悠理だって別に小さい方ではない、むしろ同世代の平均より大きいくらいだ。


(しかし…なんというか…これなんて乙女ゲー?)


もしかして自分が転移したのは、知らないだけで乙女ゲー厶の世界だったのだろうか?と疑う。

王道の見た目と生い立ちであるジュエルと、黒髪黒目をもつ呪われた魔女である自分。


(考えるまでもなく私が悪役令嬢ポジ…!!)


たとえそうだとしても悠理は100年以上この世界で聖魔女として生きてきたし、今更なにが変わるわけでもないのだが。

それよりも腑に落ちないことがある。

王子の想い人が治癒魔法に長けているのに、国王が病に伏しているというのはどういうことなのか。

情報通りジュエルの魔法が回復でなく治癒ならば、殆どの不調は消せるはずだ。


(…まさか呪術の類…?仮にも国王陛下に…?)


もしそうであれば、むしろ悠理の得意分野だ。

暇つぶしに貯めてきた知識と最低限繋いでいた他の魔女との人脈を活用すれば、返すか解くことができるだろう。

レオンハルトにしてきた仕打ちを考えるといっそ呪われておけとも思うが、ここいらで恩を売っておくのも悪くない。






(…マジで呪われてんのか…、いっそ笑えるな…そして城の魔法使いは役立たずなのか…?)


国王は呪われていた。

といっても、魔女が抱えるようなものではなく、人間でも扱えるような術によって。

確かにそこそこ高度な術式を組まれているようだが、城に使える者なら解けないこともなさそうなものなのに。


「…あの…ルシフェル様」


「…ん?あぁ、問題ないよ、坊主に今かけられている呪いくらい、私なら簡単に返せるさ。そうさねぇ、この見返りはまた考えておこうかねぇ」


声をかけてきた城の従僕に振り向き、ニヤリと片方だけ口角を上げる。

意地の悪そうな老獪な魔女の口調も忘れない。

魔法で色を変えた銀の髪がフワリと揺れて、ピアスと同じ瑪瑙色の瞳がギラリと光った。


「フン、お前さんは私に助けられたと知ったらさぞ悔しいだろうねぇ、あぁ楽しみだ」


クツクツと笑いながら目に魔力を込めて再び横たわる男を見やる。

だいぶ苦しいだろうに荒い呼吸を繰り返す元気さえないようだ。

もう少し遅かったら間に合わなかったかもしれない。

目を凝らせば、国王の左手薬指に物理ではない指輪が見えた。


(はぁー…また面倒なもんを…)


そこから細く伸びる管が全身にまとわりついている。

悠理はまず、指輪と管を切り離した。

いつから侵されているか知らないが、術の速度を考えれば先に身体中を這う管だけ消してしまえばとりあえず命の心配はなくなる。

身代わり石であるターコイズに呪いを吸わせて、石ごと小瓶へ閉じ込めた。


「……ふぅ。とりあえずこれで呪いによって死ぬ心配は一旦ないだろうよ。大元はコイツが話せるようになったら取り除いてやろう。目を覚ましたら粥でも食わしてやりな。それから、ローズマリーの茶を毎食後飲ましてやるんだね、ラベンダーの香も焚きしめてやりな」


人間の手による呪いなら魔除の石やハーブは有効だ。

言う通りにすれば侵食速度が身体的回復を上回ることはないだろう。




数日後、悠理は再び国王の寝室を訪れた。

言いつけ通り、香を焚いているようだ。


「調子はどうだい、ガキンチョ」


「…フン…、お前の世話になるとはな…」


今更気にすることでもないのだが、悠理はなぜこんなにもこの男に嫌われているのだろう?とふと思った。


「目を覚ましたと思ったらそれかい、いいんだよこのままもう一度お前に呪いを返してやっても」


「………ちっ」


命の恩人に対して舌打ちである。

一瞬ターコイズを入れている小瓶の蓋を開けそうになった。


「相変わらず可愛くないガキだねぇ…まぁいい、左手を出しな」


しぶしぶ出された左手に目を凝らせば、以前と変わらず薬指に呪いの証が見える。


「一応聞いておくけど、お前この呪いどうしたい?これくらいならただ消すことも、相手に返すこともできるよ」


「返した呪いを追うことはできるのか」


「…まぁ、できないこともないねぇ」


疲れるからやりたくないが。


「では返してやろう、どんな命知らずなのか、その面を拝んでやらなくてはな」


「割増で請求させてもらうよ」


苦々しい顔は見ないことにして、前回より一回り大きなターコイズを握らせた。

パズルのように術式を解いていく。

少々複雑だが、悠理にとっては難解というほどでもない。

呪いを吸わせきったターコイズとオニキスを前と同じ瓶に入れた。

呪文を囁けば、振ってもいないのに瓶の中で三つの石がカラカラと動き音を立てる。


「………おいき、宿り主の元へ」


窓を開けて瓶の蓋を外した。

紫の煙に似た何かがユルユルと立ち上り、王都へ向かって伸び始める。


「ここから2時の方角、距離は凡そ2キロってとこかね…、この石を持って近くまで行けば反応があるはずだよ」


石だけが残った瓶をベッドに向かって放り投げた。


「私は帰るとするかねぇ、あぁ、謝礼はまた計算して要求するからね、きちんと用意しとくれよ」


これでレオンハルトは近いうちに激務から解放されるはずだ。

悠理は足取り軽く家へ戻った。




しかし翌日、国王から与えられるのは、礼ではなく罰だと聞かされるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。