with Lionheart 16
更新が遅くなり申し訳ないです。
しばらく低浮上かもです…。
ルドルフと国王が城を騒がせてからというもの、レオンハルトはこれまで以上に忙しいらしい。
しばらく帰らない日が続き、久しぶりに顔を合わせた途端、悠理は息苦しくなるほどきつく抱きしめられた。
「ユーリ様、ユーリ様、ただいま」
「んん…、くるし…、…おかえり…、いや、レオ…くるし…」
肩を数度叩いて解放されるが、そのまま抱えられて、横向きで膝の上に座らされる。
「あぁー……、ユーリ様だぁ…」
相当疲れているようだ。
悠理の肩にグリグリと頭を押し付け、そのまま深呼吸された。
「ユーリ様ぁ…、……ユーリ…」
「!?」
情けない声を出していたと思ったら突然甘い声で呼ばれて悠理の顔が沸騰したように熱くなる。
「俺ね、今めちゃくちゃ頑張ってるんですよ…」
何がなんでもここから通うと言っていたレオンハルトが帰ってこなかったのだから、その言葉は真実だろう。
悠理は腕を回して頭を撫でてやった。
「正直ね、国王陛下の体調とか、どうでもいいんですよ…」
それもそうだろう。
一国の王子としては如何なものかと思われる発言だが、親子としての関係は希薄どころか皆無の上、王が病に伏して数日、アルテイアは滞りなく国として機能できているのだ。
悠理としても悪感情こそあれど、心配してやるような義理や優しさはない。
「…ルドルフは?」
悠理とレオンハルトにとってはどうでもいい存在でも、ルドルフにとっては違うだろう。
「…兄上も、割とどうでもよさそうですね…、というか、今の兄上はジュエル嬢以外に興味がないようです…」
レオンハルトは何を思い出したのか、眉間に皺を寄せて、はあぁ、と深いため息をつく。
「へぇ…、恋は盲目とは言うけど、あのルドルフがそんなことになるもんなんだね…」
想像もつかない。
「だから俺が帰ってこられなかったんですよ…、本当はまだ色々山積みですけど、これ以上ユーリ様と離れるのは無理、俺が死ぬ。なので無理矢理帰ってきました」
「え?ルドルフは?」
「ジュエル嬢以外に、興味が、ない、みたいです」
大事なことなのか 繰り返された。
しかもやたらと区切って。
つまり、本来であれば国王、若しくは第一王子がすべき仕事を、つい最近第二王子と認められたレオンハルトが全て請け負っていると。
「……マジか」
ルドルフはそんなにも愚かだっただろうか。
それとも、初めての恋で周りが見えなくなっている?
何れにせよ、このまま放っておくわけにはいかないだろう。
「……ユーリ様、兄上より、俺の事を気にして」
顎に指をかけられレオンハルトの方を向かされる。
久しぶりに至近距離で見る顔は変わらず美しいが、やはり疲労の色が伺えた。
「ね…今夜、星が見たいな…」
レオンハルトは悠理の顎から頬を撫で、横髪を耳にかけると露わになったそこに唇を寄せて囁く。
「ユーリ様…だめ…?」
(なにこの答えにくい雰囲気!!!)
レオンハルトの要求は端的に言えば「プラネタリウムへ行きたい」なのでそれを叶えてやることに否やはないが、声音と行動のせいで別のことをねだられているように思えてしまう。
答えに窮していると、焦れたのか耳たぶを食まれた。
「ひゃっ…!?」
「いいって言って…?」
悠理は首がもげるかと思うくらい勢いよく何度も頷く。
肯定もできるし、耳から唇を遠ざけることもできた。
と、思っていた瞬間が悠理にもありました。
「ありがと、大好き」
首振りを止めた瞬間再び耳元で囁かれ、音を立てて口付けられた。
「~~っ!!!!!?」
悠理の反応に満足したのかレオンハルトは軽く頭を撫でると座ったまま振り向く。
「と、いうわけだからマリア、今日の夕食は少なめにしてくれるか?それから、夜食に軽くつまめるものも用意してほしい」
「かしこまりました」
一連の流れをマリア様が見てた。
止めたらレオンハルトが面倒くさそうだったので口を出さなかっただけで、ずっと同じ空間にいた。
「はぁー、久しぶりにゆっくりできる…、明日からの元気をくださいね、ユーリ様!」
既に元気じゃねーか。というツッコミは悠理もマリアも飲み込んだ。
レオンハルトは、甘いものが好きだ。
悠理の家にはいつも何かしらおやつと呼べるものがあったことも理由の一つだが、なにより彼にとって、悠理から与えられる甘いものはイコールでご褒美として認識されている。
「ユーリ様、俺チョコレート食べたいです」
巣の中でタマゴにもたれかかり、足の間に横向きに座らせた悠理にねだる。
レオンハルトは悠理を自分に対して直角に座らせるのが好きだ。
顔が見える方がいいのと、この方が撫でやすいのだとか。
実はそれ以外にも理由はあるが、悠理には言っていない、知られたら逃げられそうだ。
悠理はねだられるまま皿からひと粒手に取ってレオンハルトの口まで運ぶ。
手を伸ばせばレオンハルトにも届くところに置いてあるのだが、こうして甘えられるのは悠理も悪い気分ではないらしい。
「…ん、ピスタチオ。おいしい」
「最近マリアが気に入ってよく買ってくるんだよねこのお店のチョコレート。私のは何味かなぁー」
悠理もひと粒とって口に運んだ。
色々な味があるようで、店で選ぶマリアは当然それがなにかわかって買っているだろうが、悠理達には食べるまでそれがなんのチョコレートかわからない。
「あ、これお酒入ってる、……そういえば、レオってお酒飲めるの?」
レオンハルトが成人してから半年ほど経つ。
悠理の家で酒を飲ませたことはまだないが、城で夕食を取る時などはワインくらい出るだろう。
「飲めますけど、そんなめちゃくちゃ美味しいとは思いませんね…ユーリ様、もういっこ」
開いた口にチョコレートを投げ込んでやる。
「ん…、あ、これもお酒入ってるな…んー、でもこれは美味しいかも」
「そうなんだね、じゃあ、弱くはないんだ?」
訊ねながら悠理が思い出しているのは酔ったレオナードの姿だ。
彼は外で飲酒しないようにと言いつけられていたはずだ、大の大人になんだそれはと思われるかもしれないが、目の当たりにすればわかる、あれは外に出してはならない。
レオナードが甘えて距離を詰めたのは悠理に対してのみだが、それを除いても纏う雰囲気だとかしどけなさが半端じゃなく色っぽい。
本人がいくら女に興味がなかろうと女の側が放っておかない。
「どうなんでしょう、どれくらい飲めるかはわかりませんが今のところ酔っているっていう感覚は経験したことがありません」
「ふぅん」
レオンハルトも色が白いので、酔うと肌が桃色に染まるのだろうか。
染まった指先で、シャツの首元を気だるげに緩めたりするのだろうか。
悠理は一瞬その姿を想像してしまい、慌てて首を左右に振った。
「…なぁに、ユーリ様、なに考えてたの?」
「なんでもなくってよ」
食い気味に答える。
どうみてもなんでもない人間の行動ではない。
「ふうん…?」
「………そのうち、どれくらい飲めるのか、うちでちゃんと知っておこうか」
それ以上追及されないよう誤魔化すように提案した。
この家には嗜好品としてのアルコールは置いていない。
人が訪れていた頃はもてなす為にいくつか常備していたが、一人で飲む酒は誰かと飲むより苦く、美味しいとも思わなかったから。
しかし元いた世界でも自分がどれだけ飲めるのかを若いうちに知っておくのは大事だと聞いたことがあるし、近いうちにマリアも含め三人で飲み交わすのもいいだろう。
もしレオンハルトがレオナードと同じような酔い方をするのであれば外ではあまり飲まないよう言いつけるつもりだが、その行動に保護者としての義務感だけでなく女の独占欲が含まれていることに悠理は気づいていない。
「いいですね、ユーリ様が酔うとどうなるかも見たいし」
「ご期待に添えず申し訳ないが、私は酔わないよ」
呪いのせいか元々強いのかはわからないが、悠理もこれまで酔っ払った経験がない、いつもより少し人肌が恋しくなるくらいだ。
それも悠理が普段酒を飲まない理由の一つになっている。
酔わないのに飲んでも仕方がない。
「なんだ…、酔わせたかったのに」
レオンハルトがつまらなさそうに呟く。
「なんだなんだ、酔わせてどうするつもりだ?」
「優しく介抱しますよ?ベッドまで抱えて運ぶし、水も上手く飲ませてあげますし、ユーリ様の望むままに、なんでもしてあげます」
(身の危険を感じる)
言葉だけならただ優しいだけなのに、甘い声と艶めいた笑顔のせいで真っ直ぐ受け止められない。
「……なにはともあれ、まずはレオがちゃんと帰ってこられるようにしよう。クソガキの様子も見るし、ルドルフと相手の令嬢についてもちょっと調べてみるよ」
「ありがとうございます、俺も兄上のこと、もう一度よく見ておきます」
「レオ、明日も早いでしょう?もう寝ようか」
ちょうど持ってきた菓子類もなくなるところだ。
「そうですね…、はぁ…、久しぶりに警戒せずゆっくり眠れる…」
当たり前のように悠理を抱えたままゴロリと横になるレオンハルトから、不穏な言葉が出た。
「けいかい?」
「……なんでもありませんよ、おやすみ、ユーリ」
肩まで毛布をかけられ、顔の至る所にキスされてしまう。
誤魔化されまいと声をかけようとしたがすぐに寝息が聞こえてきたのでやめた。
男の腕の中で眠るのに慣れてしまった自分に小さくため息をつきながら、悠理も眠りについた。
めっちゃイチャイチャしてるけどこの二人付き合ってないんだよなぁ…。




