with Lionheart 15
遅く…なり…ました…_(:3>∠)_
悠理と向かい合うレオンハルトは底上げしたマリアより身長が低いので顔の位置がずっと近い。
「ユーリ様、さっきは生意気な口をきいてごめんなさい」
他の人間に聞こえないようほんの小さな声で謝られる。
二人の距離と赤くなる悠理を見る限り、愛の言葉を囁かれているように思われていそうだ。
「だっ…いじょうぶ…、気にしないで…あれはあれで、新鮮だったし…」
呼び捨てにされたのもタメ口をきかれたのも悪くなかった。
と、思っている自分に驚いている。
外で見せている顔と自分に見せるものが180度違うというのも、優越感を抱いた。
と、いう事実にも驚いた。
(…だって、そんなの…)
まるで、恋をする人間の感情だ。
悠理の首までが赤く染まり、顔を上げられない理由は、声の近さだけではなかった。
そしてレオンハルトは、それを感じ取れない男ではない。
「……ユーリ」
「!」
「俺の愛しい魔女、こっちを向いて」
耳元で囁かれる。
唇が触れてしまいそうなほど近い。
なんとか顔を上げた悠理の瞳は羞恥と混乱で潤んでいて、自身の言葉と態度がそうさせたのだという実感はレオンハルトの心を満たしながらも更に飢えさせた。
「可愛い…、どうしようユーリ様、俺、今の貴女を誰にも見せたくない…」
「私だって、見られたくない…」
悠理はなんならレオンハルトにも見せたくないと思っている。
「今日はダンスでいい雰囲気にして、夜は一緒に星が見たいってワガママ言おうと思ってたのになぁ」
「?」
困ったような笑い声に首を傾げると、今度は耳に唇が触れた。
「そんな顔された後で二人きりなんて、我慢できずに襲っちゃうでしょ…」
「!?!?」
甘くて優しいのに、確かに欲を秘めた声。
「今だって、その口紅を移してもらいたくてたまらないのに」
レオンハルトの吐息が熱い。
悠理は流れる音楽に全く集中出来ず、そのうち足がもつれてしまいそうだ。
ほんの五分程度が余りにも長い。
なんとか転ばずに一曲を終えることができてほっとしていると、腰を引き寄せられた。
「ひゃ…」
「疲れた?少し休憩しようか」
レオンハルトとしても今日の目的は概ね達成できたので、これ以上悠理を見せ物にしたくない。
ぴたりと寄り添って元いた場所へ戻る途中、ルドルフとすれ違った。
「…兄上…?」
ダンスフロアへ向かうルドルフの隣には、見たことの無い令嬢。
彼女を見つめる瞳は、まるでレオンハルトが悠理に向けるような甘さを含んでいる。
他に婚約者を持つ人間のする顔では到底ない。
「あぁ、レオンハルト、彼女はジュエル。ジュエル・プレイディア子爵令嬢」
紹介する名前を呼ぶ声さえも、恋人を求めるそれのようだ。
「初めましてレオンハルト様、プレイディア子爵が娘、ジュエルと申します」
「あ、あぁ…」
次期国王としての責務を理解し、それを果たすことになんの疑問も抱かなかった聡明な第一王子。
もし彼が恋をしたなら、誰にも悟らせたりしないだろう。
弟であるレオンハルトにさえ、話すことはないかもしれない。
そう思っていたが、目の前の光景はどうだ。
今日何度目かもしれないざわめきが会場を満たしている。
「いこうか」
「はい、ルドルフ様」
ピッタリと身体を寄せ合い歩き出した二人を、レオンハルトは困惑の目で見送るしか出来なかった。
「……レオ、ルドルフの様子、おかしい」
悠理も異変に気づいたが、口を出せる場ではない。
(なんだ彼女?…嫌だな、嫌な予感がする)
果たしてその予感は、ズバリ的中する。
件の夜会から数日、王城にジュエル・プレイディアの部屋が設けられることになった。
それも、ルドルフの部屋から、ほんの一つ部屋を挟んだ場所に。
「兄上が、おかしい」
「私もそう思う」
そんな話をしているうちに、
今度は国王陛下の体調不良の報せが城を駆け巡った。
(ルドルフがっていうか、アルテイアが変だ)
悠理は数十年平和を甘受してきたが、久しぶりにチリチリと皮膚がザワつくのを感じた。
もっとイチャイチャさせたかったんだけどなぁ…。




