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白夜に愛をうたう星  作者: おジョー
28/63

with Lionheart 9

キリのいいところと思ったら短かった(´∩ω∩`)




(…どうしてこうなった?)


悠理はこめかみに指をあてて瞑目した。

ほんの一年くらい前まで、この空間に自分以外の人間はいなかったのに、こんなにも賑やかな時間を過ごすことになるとは。




12月。

大陸の北に位置するアルテイアの、長い夜と厳しい寒さの季節。

北国の冬ならと期待したオーロラは、この世界では見られないものらしい。




レオンハルトが11歳になった。


広いとは言えない悠理の家で誕生会をした。

悠理とマリアと、夏以降暇を見つけては護衛を撒いて遊びに来るルドルフで。


レオンハルトは悠理にプレゼントとしてピアスをねだったが、白く柔らかい耳たぶに穴を開けてやる勇気がなかったため却下された。

結局悠理は成人までに中の魔法を網羅したら開けてやると約束して、魔道書を贈った。

マリアは好物ばかりの食事と、テーブルに乗り切らないほどのスイーツを、

ルドルフは、レオンハルトの目を光にかざしたような深い橙のカフスを、それぞれ贈った。

記憶の限りでは誰かに誕生日を祝われたことなどないレオンハルトは、ささやかながらも心のこもったひと時に「ありがとうございます」と少しだけ泣いた。

悠理の誕生日を聞かれたので「先月終わった」と答えたらレオンハルトとマリアにめちゃくちゃ拗ねられた。


ルドルフが最初に訪れた時は流石に慌てた。

庭の植物達が洗礼を与える前になんとか間に合ったからよかったものの、怪我なんてさせていたらそれはそれは面倒くさいことになっていたはずだ。

魔女の家に一人できた彼を見てレオンハルトとマリアが嬉しそうにしていたし、ルドルフにとっても人目を気にせずいられる唯一の場所なのだろうと思ったので別段来るのを止めるよう言ったりはしなかった。

しかし結構な頻度で来るので、護衛の意味は少し考えた。


成人までにと贈った本に載っていた魔法は、翌年の夏には半分くらい習得されていた。

レオンハルトの属性上、ただ載っているものを真似ればよいわけでなく応用を効かせなくてはならないのでもっと苦労すると思っていたが、王族の質なのか、それともレオンハルトのセンスの良さか。

どちらにせよ著しい成長を目の当たりにして悠理は喜んだ。


レオンハルトの予想外の伸びとルドルフの来訪。

魔女の家を賑やかにしただけでなくもうひとつ、変わったことがあった。

マリアだ。

以前悠理はマリアの火傷痕について、レオンハルトの回復魔法で対処しようと考えていた。

そこに、水と光の回復を得意とするルドルフが現れた。


(これは…、かなりいい線いくのでは??)


果たしてそれは悠理の予測通り、完治とまでは言わないが、首や指先の痕は目を凝らさないとわからないほど薄くなり、時折顔を顰めていた皮膚が引き攣れる不快感も殆どなくなったようだ。

マリアは深く感謝し、一生をかけて返す恩だと涙を浮かべたが、悠理は弟子と王子にとっていい成長の機会だと思ってやらせたに過ぎないので気にするなと軽く手を振って終わらせた。

本人以上に痕を消せないか気にしていたことを知っているマリアはそれ以上追及するのをやめて、これまで以上に誠心誠意仕えることを心に誓ってもう一度頭を下げた。

それからマリアは、火傷の痕を隠すために伸ばしていた髪を切った。

どうやら暇つぶしに習わせている剣が相当楽しいらしく、ずっと邪魔だったらしい。


(どうしようマリアがかっこいい…どうしてこうなった…)


顎のあたりで赤い髪を切りそろえたマリアは悠理より少し背が高く、家事と稽古で一般的な女性に比べるとしなやかな筋肉がついていて、心なしか精悍な顔つきをしている。


(…大国の第一王子、第二王子、有能な侍女、チート魔女…これはマジで世界獲れるな?)


狙う気はさらさらないが。








他人の子が育つのは早いとよく言ったもので、レオンハルトはあっという間に最初の頃買った服が着れなくなった。

愛らしさはまだまだ残っているものの、顔立ちは青年のそれへと近づいている。

背も伸びてきて、以前と同じような距離でも以前にはなかった色気を感じてしまう悠理はここ最近、親鳥の気分でいられなくなってきた。


(相手は…子供…!)


何度言い聞かせたかわからない。


けれどレオンハルトの好意が憧憬や刷り込み的なものとは違うような、幼い頃お世話になったお隣さんに抱く淡さみたいなものなんて全くないような気がして、目線の高さと同じだけ心も近づかれているように思えて。


(レオナード様に、似ているから、余計、なのかな…)


これでは隙間を埋められて絆されているのはどちらなのかわからない。




(…どうしてこうなった…?)


悠理はこめかみに指をあてて、瞑目した。

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