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白夜に愛をうたう星  作者: おジョー
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once upon a time 10

キリのいいところってしたらめちゃくちゃ短くなってしまった、続きは早めにあげたいと思います!

悠理は二週間余りを王都で過ごして、それなりに情報を得た。


敵国となるヘラクラーダは気候に恵まれ、肥沃な大地が広がる、アルテイアの南に位置する大国と呼べる面積をもつ。

国民の半数近くが魔力を持たず、魔法を使うことはもちろん、アルテイアで発展している微量な魔力で動く道具を使うことも出来ない一方で化学の進歩がめざましく、産業革命を彷彿とさせた。


対する自国軍は、後衛に援護に特化した魔法使いを配置し、その前に攻撃特価の魔法使い、最前線に騎馬、歩兵隊。

前線は何班かに分け、班に一人は回復魔法の使える人間を置いている。


そして、戦地となる国境付近の自然。

地理は苦手だが、そうも言っていられないと本を開いた。

どうやって頭に残そうか悩んでいた悠理だが、祝福によってそれは杞憂に終わった。


情報を整理してみて、改めて思う。

レオナードも言っていたが、戦争を仕掛けられる理由が全くわからない。

ヘラクラーダにとってのメリットが無さすぎるのだ。


(なんだろう…、資料で読み取れないのって、不安だな…)


機械化が進んでいるとはいえ、個々の能力ではアルテイアが圧倒的に優位だ。

しかし、勝算のない喧嘩など、悠理であれば吹っかけない。


(うーん…、気持ち悪い…、けど、わかんないものは仕方ないよね)


予測がつかない以上、出来うる限りの準備を整えて迎え撃つ他ない。


悠理は大きく伸びをして、訓練場へと足を運んだ。


ちなみに、悠理は今回援護に走るが、参謀のようなポジションにつくことが決まっている。

本人としては「どうしてこうなった」という感想なのだが、彼女が培ってきた戦略ゲームの知識をちらっと話してみたところ、国王を始めとする軍のエライ方に頭の出来を大層気に入られたからだ。


それに加えて全属性の魔法が使え、魔力量も多いので、兵士たちにも大人気の存在となった。





そうして迎えた、出発前夜。


早く寝なくてはと思うのに眠れずにいると、ノックの音が響く。

ガウンを羽織り扉を開けると、晩酌の準備をした侍女と、レオナードがいた。


「少しだけ、付き合ってもらえないかな?あ、もちろん飲むのは僕だけだよ、ユーリに飲ませたりはしないから安心して」


向かい合って座ると思っていたのに、ソファへ案内するとレオナードはなんと悠理の隣に座った。


「!?」


硬直する悠理をよそに、レオナードが恨みがましく呟く。


「なんだか久しぶりにユーリと話をする気がするよ…、テオが、確かにユーリは兄上を幸せにするかもしれませんね!なんて言ってくるけど、今ユーリのおかげで幸せなのは僕じゃなくてテオじゃないか」


そろそろ殴りそう、などとため息と共に吐きながらグラスをあおった。


「緊張してる?」


(どっちかというと今の状況にしてますね!?)


「そう、ですね…、喧嘩らしい喧嘩もしたことないのに、いきなり責任ある役ですし、やっぱり緊張はします」


正直に吐露する。

こんなこと、明日からは言えない。

きっとレオナードもそれをわかっていて、敢えて前日に訪ねてきたのだろう。


「ユーリ」


茶化すような明るさの消えた声に振り向くと、真剣な表情のレオナードと目が合った。

アルコールのせいだろうか、ガーネットの瞳が苦しげに揺れている。


「…かならず、無事で帰って来て。そうしたら、本当にユーリをフォルティナの人間にしよう」


「…はい、ありがとうございます、必ず、帰ってまいります」


傍から見れば完全にプロポーズで死亡フラグだが、悠理は気づいていないし死なない。


(またこの人は勘違いさせるようなことを…)


勘違いではないのだが、好きだ!!とハッキリ言われないとわからないのだから仕方がない。

レオナードだって、悠理が気づかないような言い回しを敢えて選んだ。

悠理の気持ちがどこにあるとしても、今ここで想いを告げて楽になれるのは自分だけだとわかっているから。


「大丈夫ですよ、私は後方支援の隊ですし、皆さんが授けてくれた教えがありますから」


「………そうだね、それでも、毎日祈るよ。ユーリに女神の加護があるとしてもね」


無事で帰る約束を出来るのが加護でなく呪いのせいだと教えたら、どんな顔をするのだろう。


「さて、あまり遅くまで寝かせないわけにもいかないし、そろそろお暇しようかな」


いつもの調子に戻ってソファから立ち上がったレオナードに、少しだけ寂しさを覚えて無意識に服の裾を掴んでしまう。


「…ユーリ…」


「…あっ、ごめんなさい、なんか、いや、なんでもないんですけど、あの、お見送り、お見送りしますね!」


慌てて手を離しソファから立ち上がる。


「!!!?…レオナード様…?」


抱きしめられている現状が理解出来ずに名前を呼ぶと、レオナードはすぐに悠理から離れた。


「ユーリがあんまり可愛いことしてくれるから、ついね」


まるで犬猫をあやすように苦笑してぽんぽんと頭を撫でられる。


「…はぁ、すみません、なんか…」


悟らせまいと必死で隠されている感情に悠理が気づくはずもなく、普段と変わらない子供のような扱いについ唇を尖らせてしまう。


(なぁんだ、ちょっといい雰囲気だと思ったのに)


勘違いをしてしまった自分が恥ずかしくて顔を逸らしていると、もう一度レオナードが近づいてきて、


「…!」


額に唇をあてられた。


「……おまじない。ユーリ、何度も言うけど、必ず無事に帰るんだよ。明日の朝は門まで見送りに行くから…おやすみ」


もう一度同じ場所に口づけられる。


「…おやすみ、なさい…」


やっとそれだけ返事をすると、レオナードはクスリと笑って悠理の部屋をあとにした。






当然その晩は眠れず、鳥の鳴き声が聞こえた所で悠理は眠ることを諦めたのだった。

メインヒーロー霞みすぎどころか忘れられる勢いですね。

レオナードの心境を吐露するだけの閑話を書きたいと思います。思うのはただですからね。

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